第3話・KISS
     

「うるせえな。相変わらず亜佑美は・・・」
 ハーレム隊長の独白に、葵も思わず顔を上げる。あゆお姉様の色っぽい声が確かに聞こえきていた。
「オラ休んでんじゃねーよ」
 ぐっ、と頭を押さえられて、もとのように口に含む。
「全然上手くならねーな。他のヤツにちゃんと教えてもらってんだろ?」
 やっぱりけなされる。哀しくなる。自分の手や口で、悦んでもらえたらどんなにいいだろう、と思うから。だって大好きだから・・・。
「ったくいつになったら満足させてくれんだよ。あーもういい」
 肩を押される。離した口もとを手でぬぐって、少し葵は寂しそうだった。
「ハーレム隊長・・・どういうふうにすれば気持ちいいんですか? 教えてください」
「自分で覚えろ。いちいち教えてられるかバカ」
「ヒドイです隊長・・・」
 ベッドの上で、葵はいつもの葵じゃなくなる。あんなに走りまわっている元気印のひまわり娘が、どこかしおらしくなってしまうのだ。
 本当は可愛らしいと思うところもある。だがハーレムは決して優しく扱いはしなかった。『ハーレム隊長大好き!』と憚りもしないこの娘に、ベッドで優しくしてやったら、どんな勘違いをされるものか。
 あくまで主従の関係、というのを常に分からせてやる必要があるのだ。
「脱げ、葵」
 だからあくまでぞんざいに命令する。荒っぽいくらいに抱いてやる。ヴァージンを奪ってから、痛がっても嫌がっても厳しく仕込んできた。
「・・・はい」
 ベッドを降り、パジャマがわりにもしているルームウェアをゆっくり脱ぎ捨てる。シャワーを浴びたばかりのスレンダーなボディが部屋の明かりの下で露わになってゆく。
 ハーレム隊長は、滅多に部屋を暗くしない。恥ずかしくてたまらないが、意見すると怒鳴られる。
 最後にリボンを取ると、茶色がかった髪がふさりと肩に降りた。
 胸元をかばいながらベッドに戻る。
「隠すほどのモンじゃねーだろ」
 手を掴み上げられる。自分だけ裸になって、じろじろ見られるなんて・・・。
(恥ずかしい・・・)
 赤くなってうつむく。いつまでたっても慣れない。
「ホントにガキだな。男を知れば少しは育つかと思えば全然だし・・・」
「いた・・・っ」
 ぐいと乳房を握られて、顔をしかめる。
 ハーレムは一度ベッドから離れた。
「ガキにはオモチャがお似合いだ」
 と戻ってきた隊長の手に、スケルトンピンクの筒状の物体・・・。スイッチを入れると、ウィィィィン、とモーター音がして振動を始めた。
 オモチャはオモチャでも、上に「大人の」が付くモノだ。葵は泣きそうになってベッドの上で後ずさる。
「ソレはいやです隊長! 許してください!」
「何? てめぇ俺に口ごたえするのか!?」
 後ろの壁に押さえつけるようにして、座らせたままバイブを葵の頬に当てる。嫌がる様子を楽しみながら、ゆっくりずらしていった。振動している機械を胸の小さな突起に当てると、体全体がビクッと震える。
「・・・あ!」
「感度良くなってきたじゃねーか」
 最近は痛がりもしなくなったし、開発はこれからが本番といったところだろう。
 更に下げてゆく。
「脚を開けよ」
「・・・」
 本当に泣きそうになって、ぶるぶる首を振っている。
「立場ってモン分かってんのか!? 俺が言ったことに逆らうんじゃねえ!」
 頭を押さえつけ、怒鳴ってやる。手を伸ばすとベッドサイドから手枷を取り、それで葵の両手首を後ろに拘束してしまった。
「イヤっ・・!」
 とうとう葵の頬に涙が伝う。それを乱暴に舐め取ってやり、ハーレムはやはり笑っていた。
「言うこと聞かないからだ。お似合いだぜお前に」
「ハーレム隊長・・・」
「脚を開け」
「・・・・・」
 顔をそらし、立てた膝を離す。そう、逆らえない。強い隊長に絶対逆らえやしない。
「最初からそうやって素直にしてりゃいいんだよ」
 オモチャを内腿にあてがう。細かい振動が、イヤでも葵の官能を呼び覚ます。
 壁に背中をつけて、感覚に酔った。
 もっと近付けて欲しい・・・体の真ん中に。
 絶対知られたくはない、いやらしい想い・・・。
「こんなんで感じてんだからな」
 でも、知られている・・・?
「ああーーっ!」
 当然走った快感が、背骨をビリビリ痺れさせる。葵の体の中で一番敏感な器官に、小刻みに震える無機物が冷たく押し当てられて。
「イイのか? ん・・・?」
「いい・・・っ、ん、イヤあ・・・っ」
「どっちなんだよ」
「ああ・・・」
 モーターの音に気が変になりそう。自由にならない両手が、余計にエッチな気分を高めるなんて・・・。
(あたし・・・おかしいの・・・?)
 こんなことされて、感じているなんて!
「はあ・・・ああーー!」
 襲い来る一際大きな波に、思わず絶叫する。はずみで壁に頭をぶつけてしまった。腕が脚がわなないて、ふっと力が抜ける。
「ふん・・・」
 葵の体がぐったりしたのにも構わず、器具を下方にずらす。たっぷり満たされている蜜壷のふちにあてがった。
 振動が甘く響く。体の髄を通って、頭まで届いているみたい・・・。
「ここに欲しいんだろ? ホラ」
「・・・イヤ!」
 少しだけ入りこんできた異物に、我を取り戻す。葵は激しく首を振った。
「そんなの入れちゃイヤです!」
「まだ逆らうのかこのガキ」
 逃げようとしても後ろは壁、手には枷で動けない。
「イヤ、恐い!」
「おまえみたいなナマイキなガキにはこれで充分なんだよ!」
 ぐっ、と、一気に突っ込んでやると、葵は一番激しい反応を見せた。
「・・・やあああっ!」
 亜佑美にも負けない声を上げ、つや髪を振り乱して横向きにベッドへ倒れこむ。
「あっあっ、あーー!!」
「誰が寝ていいって言ったんだコラ」
 聞こえてない。嫌がっていた道具から休みなく与えられる初めての刺激にうち震え、拘束された両手でもがいている。
「呆れるなまったく」
 手を伸ばし、スイッチに触れる。音が一段高くなった。
「あああああーーー!!」
 葵の声も更に大きくなる。あっという間に追い詰められて、あっという間に行きついてしまう。
「はあーーーっつっ、ん!!」
 ひときわ大きな声をあげ、ぐーっと背を反らすと、再びぐったりとしてしまった。びくん、と痙攣する身体から、スケルトンピンクの棒を抜き取り、電源を切ってしまう。
 葵の体液でてらてらと光る淫らな物体を、いたずらに舐めてみる。においも味も、一人前だ。こんな子供のクセに・・・。笑わせる。
「満足か?」
 未知の快楽の名残に浸り、荒い息が鎮まらない葵に、声は届くのか・・・。
「こんなモンで速攻イっちまいやがって」
 オモチャを床に投げ捨て、ベッドで動かない娘の頬を乱暴に掴む。全身にまとった汗が、いやになまめかしい。どこかうつろな目を上げて、葵は一つ大きな息をついた。
「よかったんだろ?」
「・・・でも・・・」
 泣きそうな声になっている。
「こんなのいやです・・・」
 機械の強烈な動きは確かにすごかったけれど、心地よさは刺激の強さに比例するものではないと知った。
 そう、体温が欲しい。ぬくもりに包まれたい。例え隊長は体だけを求めているのだとしても。そこに愛情がないのだとしても。
「・・・ふうん・・・」
 さすがに、かわいそうだったろうか。うるんだ双眸を覗きこむ。べっこう飴色の瞳は、それでも一途に大好きな青を映していた。
「どうしたい?」
「・・・隊長に・・・」
 さっきまでとは微妙に違う優しい声に、安心感を覚えた。葵はためらいながらも本心を表してみせる。
「・・・ハーレム隊長に、して欲しいんです・・・」
「・・・・・そうか」
 別に愛しいとか哀れだとか思わない。どこまでいっても部下は部下だ。
 しかし真っ直ぐな心に触れれば、ある種の慰めを持って抱いてやってもいいかと思える。
「もう俺の言うことに逆らわねえな?」
「ハイ」
「じゃ外してやる」
 手枷を取って、もとの場所に戻す。
「痛いか?」
 葵がだるそうに体の前に持ってきた腕を取る。うっすら赤くなった手首を軽くさすってやった。
「痛くないです。ハーレム隊長、ありがとうございます!」
 いきなり元気になった声に、ハッとして手を離す。
「調子に乗るな!」
 背を向けて服を脱ぎ始める。広い背中を眺めると、葵はちょっと幸せになって、笑っていた。
 想いは伝わらない。伝わったとしても、応えてはくれない。
 分かっているけれど、抱かれれば嬉しかった。
 どんなことを考えて、どんな風に抱くのだとしても、構わなかった。
 他の先輩たちよりも、やっぱり一番感じる。
 心と体が別なんて、嘘だと思う。
「・・・ハーレム隊長・・・」
 激しさの中で、ぐいぐい導かれるように昇りつめる。この感覚がやっぱり好き。
 両腕を伸ばして、肩にしがみつく。動きと感覚の波に合わせて、声が自然と出る。
 熱くて、とても、気持ちがいい。
「・・・あ・・・」
「テメエで勝手にいくんじゃねーぞ」
「・・はあ・・・でも、ダメですぅ・・・もう・・・」
「もうちょっとガマンできねえのか、半人前のクセにこんなことばっかり覚えやがって」
 だから、教えたのは誰ですか?
 なんて言ったらまたヒドイことされてしまう・・・。葵は口をつぐむほかなかった。
「しょーがねえな・・・」
 ぐい、ともっと深く引き寄せて、一段速度を上げていく。自分自身の気をも高めるように。
 葵の幼い顔立ちにアンバランスなほどセクシーな表情・・・跳ねる汗と甘えのかかった声と・・・。
 鼓動が強くなる。息が弾む。霞みがかるように錯乱していく意識の中で、上の空。
 ハーレムが知らず口にした名は、葵の耳にも届いた。
「・・・アクア・・・」
 息遣いよりも小さな、普通なら逃してしまうほどの声だったのに。
 

(アクアって・・・誰なんだろ)
 最後にキスを求めたらやっぱり怒られた。多分、愛情がないキスはしないんだろう。
 そのアクアという人になら、キスするんだろうか・・・。
(恋人というか・・・愛人かなやっぱり)
 世界中に愛人がいるハーレム隊長なんだから。でも、ベッドの上で女性の名前を呼んだのは初めてだ。なんだか心中穏やかではない。
 体は満足、心はちょっぴり不満足。
 そんな葵は、自分の部屋に戻ろうと廊下をてくてく歩いていた。
 コトが終わるとすぐに追い出されてしまうのも、いつものことだ。
「よお、葵ちゃん」
「・・・げっ、師匠」
 悪いところでハチ合わせた。
 ロッド師匠はよろよろした足取りで近付いてきて、いきなりぎゅっと抱き締めてくる。酒くさい。
「目が覚めたら誰もいなくてさー。俺、やり足りないんだよね。行こう」
 どこへだ。
「お医者さんゴッコしよー」
 そのまま抱き上げられて、拉致される。葵は足をバタつかせて暴れた。
「ヤです師匠! 葵はハーレム隊長として、もう疲れました!」
「なにぃ、そんなことで疲れていて一人前の風使いになれると思ってんのかー!?」
 酔っ払いの理論にはついていけない。ロッドの部屋に連れ込まれて、ベッドに下ろされる。
「いいから。葵ちゃんはもぉマグロ状態でもいいから。俺がやりたいだけだから」
 バタバタ服を脱いでいる。次には葵の服に手をかけた。
「もおっ!」
 どうして大人って、みんなこんなワガママなんだろう。人の気持ちはどうでもいいのか!?
「いいじゃん・・・葵ちゃんの気持ちいいこと、ちゃんとしてあげるしー」
 なんてキスされれば、つい期待してしまう胸でとろけちゃう。
 師匠はこうして、惜しみなくキスしてくれる。
 仕方ないな、と、体を開けば、またさらわれる、渦の中へと。
「可愛いよ、葵ちゃん。ここも・・・ここも。みんな可愛い♪」
「・・・ああんもう・・・ロッド師匠ったら・・・ぁ」
 体中に、たくさんたくさん、キスを受けた。
 
 
 
 

 
  

−つづく−

 



 

第4話・Gang☆



 

Gang☆ トップへ    裏小説トップへ  
 
 



H13.7.22

再アップH17.6.9


 
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送