現代においても尚、絶対なる神がおわす聖地。人はその北欧の国を、アスガルドと呼ぶ。
雪と氷に閉ざされたひそやかな地に、ぽっと小宇宙が点った。温かな火のようなそれは、気高い祈りとなって、ゆららかに満ち広がる。
アスガルドの信心深い民たちも、深く頭を垂れる形で従った。皆、思いはひとつだった。
−とわの平和と、愛のために−
ひとりの娘が、オーディーン像の足もとにひざまずき、ヒルダの祈りに同調し続けている。
目を閉じ、両手を組んで。
淡い色の髪とドレープをたっぷり取った薄桃色の衣が、凍りつきそうな風になぶられる。それでも彼女は微動だにしない。透き通るように白い顔に浮かぶ表情は、微笑のようにすら見えた。
(オーディーンよ、いつも感謝しております)
一年中気候が厳しく、実り少ない土地ではあるけれど、このアスガルドに生まれて幸せだと思う。
いつもオーディーンが守っていてくれることを知っているから。
ヒルダの小宇宙に包まれて、こんなにも心地よいから。
そして、大好きな兄や、信頼できる友達がいるから。
たゆとうように流れる祈りのときを、は、いつも幸福な気持ちで過ごしているのだった。
ヒルダが優雅な仕草でこちらに歩いてくる。これで、午前中の祈りは終わりとなった。
言葉ではなく微笑でねぎらってくれるヒルダに深い礼で返し、は後につき従った。
H16.10.31
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