Happy Halloween,
Happy Happy Birthday!! 1
「ねぇ竜崎、31日の夜に時間取れない?」
部屋の掃除をしながらが聞いてきたとき、Lは思わず手を止めてしまった。
気を取り直し、データの分析に戻る。
「いつの31日ですか」
何気なく返すと、モップを持ったも軽く答えた。
「今月の末よ。10月31日」
その日付に、反応する・・・表面に出ないようにするのは苦労した。
もしかして、知ってくれているんだろうか。
こう甲斐甲斐しく世話をしてくれているだが、別に恋人同士でも何でもない。日々多忙を極める名探偵のために、ワタリが探してきてくれたハウスキーパーなのだ。
つまりは、仕事でここに来てくれているのだが。
同じ室内で、言葉を交わしているうち、気持ちも近付いてきたように思う・・・いや、それは独りよがりか。
少なくとも、Lはにはっきりとした好意を抱いていた。
だからこそ、彼女の口から10月31日と聞いて、心臓が跳ね上がった。
・・・なぜと言えば、その日は・・・。
「ハロウィンでしょ」
は、踊るみたいな足取りでモップがけを続けている。
「あのね、ハロウィンパーティをやろうって。月とかニアとかメロとか、みんな集まって盛り上がろうって話になったの」
「・・・そうですか」
がっかりだ。
自分が期待したような話ではなかったこともだが、知らないうちに月たちとそんな話をしていたというのが一番悔しい。
「・・・知っての通り、私の仕事はいつどうなるか予測もつきませんから・・・」
「せめて一時間くらいでも・・・ね、迎えに来るから」
「・・・行けたら、行きます」
必要以上にそっけない口調になってしまったのも、仕方のないことだった。
そして約束の31日。
その日も変わらずLはLとして忙しく、お菓子をつまみつつ、いくつかの捜査を並行して行っていた。
ピンポーン。
呼び鈴に、おもむろに立ち上がる。ドアを開けると、黒の三角帽子に黒ワンピースの魔女がひとり、立っていた。
帽子の広いつばに、目元が隠れている。唇は笑みの形をしていて、そこから子供たちの決まり文句がこぼれた。
「トリック・オア・トリート」
手に持ったステッキを振り上げて答えを迫る。きらきら金の星が輝くそれに、さすがのLも気持ちが解けた。
「お菓子はあげませんよ、私のですから」
「いっぱいあるクセに・・・ケチ」
口を尖らせてから、黒い帽子をちょっと上げる。の可愛らしい顔には、いつもよりも艶やかなメイクが乗せられていて、不覚にも心臓を直打された。
「じゃイタズラしちゃおう。パソコンのデータ、全部消しちゃおーっと」
「別に困りません、バックアップは常に取っていますから」
「もうっノリが悪いなぁ。・・・迎えに来たのよ、行けるでしょパーティ」
Lの細い腕を、魔女は軽く引く。
「・・・いや、しかし・・・」
「いいからいいから」
困惑気味のLを、やや強引に連れ出した。
「今日はハロウィンにちなんで仮装パーティだから、竜崎もこれ着て」
大きなペーパーバッグの中から、毛皮のようなものを取り出されたときには、エレベーターの中に二人きりというドキドキも吹き飛んでしまった。
「仮装するのは子供たちでしょう。さんはいいとしても、私いくつだと思ってるんですか」
「失礼ねぇ私だって立派に成人よ! みんなですることにしてるんだから、ねっ」
はこれまたムリヤリ、Lの体に狼男の仮装をほどこしてゆく。
肩と胸のところにもさもさ毛と、尻尾と耳と。
「かわいー! 猫背だし、ピッタリ」
ほめられても嬉しくない。
そのうちにエレベーターは目的の階に着き、Lとはその格好のまま降りた。ホテルの従業員や他のお客たちも、にこやかに、仮装した二人を見守っている。
寄って来た子供たちにがキャンディをあげると、歓声を上げて走って行った。・・・Lは、物欲しそうに指をくわえる。
「会場に行けば、いっぱいご馳走あるから」
背中を押してパーティルームに入った。
「ハロウィンパーティ」と大きく書かれた幕が下がった会場は、既に仮装した大人たちで賑わっている。思った以上の規模に、Lは少し気後れを感じた。
「ちゃん、うまく連れて来てくれたね」
黒い衣装に大鎌持った月が、最初に気付いて近寄ってきた。
「竜崎、なかなか似合ってるじゃないか狼男」
「ライトくんも、それは死神ですか。なにか妙にハマってますね」
大鎌を構えるポーズが、なんでこんなにサマになっているんだろう。
仲良い二人のやり取りを微笑んで見ていただが、肩をポンと叩かれ振り向いた鼻先に、チェーンソーを突きつけられて飛び上がった。
「キャーッ!」
思わずLにしがみついてしまう。
「、俺だよ」
チェーンソーの男は、白いホッケーマスクを外す。「13日の金曜日」ジェイソンに扮したメロだった。
「脅かさないでよ、メロ。それにしても、その顔のキズも、リアルねぇ」
「これは自前だ!」
今度は後ろから何者かにしがみつかれ、はドッキリ。白いシーツをひらひらまとったゴーストは・・・。
「ニアでしょ」
白い布を取ると、その下から黒猫が現れた。
だぶだぶの着ぐるみを着たニアが、本物の猫みたいにに擦り寄る。
「くっつきすぎー」
「だって黒猫といえば魔女のおつきに決まってますから。今夜はのそばを離れません」
ゴロゴロ、すりすり。
「コラずるいぞニア」
メロが割り込もうとする。
「二人とも、ちゃんが困ってるだろ」
死神の月がなだめようとてしても、ライバル心に火のついた二人はぐいぐい押し合い、譲ろうとしない。
その間を縫うように、マントを翻して吸血鬼のマットがやってきた。
ジェイソンにチェーンソーというのも実は誤った認識だが、ゴーグルつけた吸血鬼というのも珍しい。
「ちゃんの血、吸わせてよ」
「やだぁもう酔ってるの?」
異常接近のマットを軽くいなす。「何やってんだよ!」「のそばにいられるのは黒猫だけです!」叫びながらメロとニアも加わって、早くも混戦模様だ。
「・・・・」
Lはもう帰りたかった。
これでは、がモテるという事実を再認識させられに来たようなものじゃないか。
「ライトー!」
可愛い声がして、女の子が駆け寄ってくる。
「ミ・・・ミサミサ大胆・・・」
ミサはマミーなのだろう、体中に包帯をぐるぐる巻きにしている。下着の上に直に巻いているのか、ボディラインを惜しげもなく晒していた。
セクシー、だけどキュート。男子のみならず、の目も釘付けになってしまう。
「ミサさん、ここゆるいですよ」
Lが包帯の端を引くと、スルスルほどけて、本当に下着姿になってしまった。
「キャー、竜崎さんの、エッチ!」
ドサクサに乗じて月に思い切りしがみつく辺り、さすがはミサ。嬉しそうにさえ見える。
「何やってんのよ竜崎ー!」
そこに当のミサより迫力あるの声と、バチーン! 平手が飛んだ。
「うわ、リアルな手形っすねー、それもメイクですか?」
松田が食べ物を持ってLの隣にやってきた。今回は立食形式で、皆思い思いに飲み食いしたり、喋ったりしている。
「・・・本物です」
「へえ、竜崎も女性に平手を食らうなんてことがあるんですね」
色が白いから目立つらしい。
「・・・羨ましいんですか」
「まさか」
からから笑っている。相変わらずの松田だ。
「あっ、タッキィ」
近くに有名人を見つけて、松田は早速駆け寄った。
ライトの大学時代の友人ということでだろう、NHNの人気キャスター、高田清美も呼ばれて来ていた。そういえばアイドルのミサミサもいるし、なかなか豪華な顔ぶれのハロウィンパーティだ・・・。
などとつらつら思うLは、気付いていない。
世界に名立たる「L」こそが、最高のVIPであることを。
「高田さんは仮装しないんですか」
清楚な白ブラウスに華やかなスカート姿の高田アナは、もちろん美麗だけれど、今日は全員仮装だったはず。
松田の遠慮ない問いに、清美は軽くそっぽを向くようにして答えた。
「仮装だとかうわついた物、私は興味ありません」
「・・・やった、そのセリフを生で聞きたかったんスよ」
ぐッ・・・。なぜか松田、感動。
清美はそんな一般人を、少々煙たそうに見やった。
「あなたこそ、仮装してないじゃないですか」
「あっ僕はコレ」
松田はどこからか、巨大なジャック・オ・ランタンを取り出した。
「カボチャ大王ー! ってことで・・・」
カポッ! 頭に被るが、その予想外の重さにバランスを崩し、後ろに転倒してしまう。ブリッジで持ちこたえている辺りは見事と言うほかない。
「うわー助けて・・・」
前は見えないしカボチャは抜けない。松田は軽いパニックに陥り、両手をバタバタさせる。
「・・・あまり面白くない余興だわ」
高様はあっさり見限ってしまい、一部始終を見ていたLも、
「相変わらず馬鹿ですね」
と呟くだけだった。
(だ、誰か助けて・・・)
パーティといってもつまらない(というのも、が常に他の男と喋っているのを見せられ続けているから)、仕事のことも気になるので早々に帰ろうとしていたLだが、会場の中においしそうなものを見つけたので「これを食べてからでもいいか」と思い直した。
ハロウィンの小物で飾られたテーブルはスィーツコーナー、カボチャやゴーストの型抜きクッキーと、生クリームが乗っかったかぼちゃプリン。
(ケーキなら尚良かったけど・・・)
などと思いつつ、浮かれて自分の取り皿にたくさん取る。
「あっ竜崎さんそれね、私が作ったの」
跳ねるように隣にやってきたのは、月の妹だ。
粧裕は、セーラームーンの格好をしている。Lの頭の中に「月に代わっておしおきよ!」というあの名ゼリフが浮かんだ。
粧裕さんそれは仮装というよりコスプレですと言おうとして、やめる。似合っているし可愛いから、この際コスプレでもいい。
「粧裕さんが作ったんですか」
「うん。・・・っていっても、さんを手伝っただけだけど」
「さんと・・・」
言われて素早く会場内に目を走らせる。
・・・の姿が見えない。さっきまでいたのに・・・さっきまで?
ずっと見ていたのだ、彼女のことを。ほとんど無意識のうち、目で追っていた・・・。
そのことに気付き、Lは自分のことながらドキリとした。
いつの間に、こんなにも深く思うようになっていただろう。ごちゃついたパーティ会場の中で、目を離さなかったなんて。
それにしても、見失ってしまったのは、お菓子に気を取られたせいだという辺りが、何とも言えない。
「・・・コホン」
ハッと見ると、全身モビルスーツで固めた中年男性が立っているではないか。
「ぎゃっ、お父さん」
「・・・夜神さん」
警察のお偉方、夜神総一郎は、月と粧裕の父でもある。特に娘のことは溺愛しているのだ、男と二人きりで話しているだけで心配で、わざわざ割り込んできたのだろう。
「夜神さん・・・ガンダムですか・・・」
だからそれは仮装じゃなくてコスプレだって。
もはや面倒で、Lは口をつぐんだ。
もいないし、話しかけてくる人の相手をするのも面倒な心持ちになってきたので、Lは本当にそろそろ帰ろうと決心した。
クッキーとプリンは部屋に持ち帰ろう。
一人で味わって、せめてもを想って過ごそう。
だって今日は。
だって今日は・・・。
「竜崎、まだ帰るなよ」
毛でふさふさの肩に手をぽんと置かれ、少しびっくりして振り向くと、大鎌がギラリ光っていたので二度びっくりした。
「ライトくん・・・何か憑いてますけど」
死神ライトの背後にゾンビがくっついている。よく見ると検事の魅上照だった。
ボロボロの服装に腐乱のメイクがあんまりリアルで怖い。
「・・・どうも竜崎さん。楽しんでますか」
「ええまあ。もう帰りますが」
もごもご答えると、ゾンビは死神の前に出て狼男の手をがっしと掴んだ。
Lは息を呑む。
「神・・・いやライトくんの言うとおり、これからがメインですから。まだ帰っちゃいけませんよ」
「そんなに顔を近付けないでください」
できれば、思い切り手を振り切って逃げたい。
「ハハハ竜崎でもゾンビは怖いのか?」
「いや、コレは怖いでしょう」
「ふふふ離しませんよ・・・」
「ぎゃー」
などと片隅でゴチャゴチャやっていると、
「皆様、ご注目ください」
マイクを通した高田アナの綺麗な声が響いた。
Lも顔を上げて見る。メロがいきなりチェーンソーをキィィィィン!と動かし(! 本物!?)斜めに張られたロープを切った。途端「ハロウィンパーティ」の幕は床にぱさりと落ち、その下から、別の幕が現れる。
そこに大きく書かれた文字を読んで、Lの大きな眼が、更に見開かれた。
−Happy Birthday to Luxaky−
つづく
あとがき
13巻で明かされた、我らがLのバースディ。10月31日です、ハロウィンですよ!
13日にそれを発表したということは・・・31日までの間に、ドリームを書きなさいという配慮ですか、そうなんですね!?
とドリーマー魂爆発で考えてみました、ハロウィン&バースディパーティ。
ハロウィンのドリームは書きたいな・・・と考えていたところだったので、こんな形で組み立てることができるなんて最高です。
パプワオリキャラで書いてたころはよくパーティの話も書いていたものですが、デスノでは珍しいですね。パラレル設定ならではです。
ハロウィンなら仮装でしょう、ということで、誰にどんな仮装をさせようかブログで募集してみました。レスくださった方々、ありがとう! 参考にさせていただきました。
なんかこういう、群像というか、他愛もない小さなエピソードを盛り込んだ話が大好きなんです。
Lへのハッピーバースディ、まだ続きます。
Happy Halloween,Happy Happy Birthday!! 2
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