No Toy
「ホラ、トットリ、しっかり歩くべ」
「う〜、気持ち悪いっちゃ・・・」
「飲み過ぎよォ、トットリくん。・・・あー、眠い」
居酒屋でしこたまヤケ酒(?)をあおった三人は、千鳥足でネオンの中をさまよっていた。
すっかりつぶれてしまっているトットリをミヤギが抱え、はあくびばっかりしている。
「お、ちょうどいい。ここでちょっと休んでくべ」
も立ち止まって見上げる。どう見てもいかがわしい名称とたたずまいの建物に、げっ、と変な声を出した。
「休んでくって、ここラブホじゃないの!」
「いいべ別に、ヘンなことするわけでもなし」
ミヤギはずんずん中に入っていく。は一瞬迷ったが、このメンバーなら大丈夫か、と気楽に後をついていった。
「よいこらしょっと。あー重かったべ」
トットリをベッドの端に転がして、ぐーっと伸びをする。
「ふぁあ・・・」
「ずい分眠そうだべな。おめもそこに寝たらいいべ」
ベッドは部屋の大半を占めるほど大きい。トットリが寝ている反対側に、十分なほどスペースがあった。
「ミヤギくんは?」
「オラ別に眠くねえ」
ソファに座り込む。
お酒と眠気でボーッとしているには、大きなベッドは魅力的だった。
「ホントに、ヘンなことしないでしょうね」
「するわけねぇべ」
とテレビのチャンネルなどいじり始める。
はとにかく少し休みたかったので、フラフラとベッドへ歩くと、トットリのいる逆側にもぐりこんだ。
深夜のテレビは大して興味を引くようなものもない。別のボタンを押すと、アダルトな映像が流れていたので、ミヤギは思わず見入ってしまった。
(・・・すげぇ)
画面の女の子のよがり顔に、が重なる。
こんな二次元じゃなくて本物がそこにいて、しかも寝ている・・・。
そう思い始めたらもうたまらない。テレビは切ってしまい、立ち上がった。
そっとベッドに近付き覗き込むと、すうすうと眠っているあどけない顔・・・。
それでもミヤギに躊躇はなかった。
ブレーキになる何物も存在しない。
傍らに屈みこみ、額と、まぶたに、軽くキスをした。
ぴくりとも反応しない。
続けて頬に、そして・・・唇に。
柔らかい唇を吸ったとき、もう戻れない自分自身を認めた。
「ん・・・」
誰かが、すぐそばにいる。
「シンタローさん・・・」
口をついて出たのは、想い人の名−。
リアルな熱と感触と息づかいが、の覚醒を促している。
何をしていたっけ・・・ここはどこ?
ミヤギやトットリと大騒ぎして酒を飲んでいたシーンがフラッシュバックされる。
それから・・・それから?
「−!?」
ハッと目を開けたとき、暗がりの中、男がすぐそばに・・・そばというより密着して・・・いたので、心臓が止まるくらいにビックリした。
「ミヤギくん!?」
「起きたべか、」
抱きしめる腕を緩めもせず、尚も口づける。
「や・・・っ」
青ざめ混乱している娘を、ひどく冷静な、冷酷といってもいい目で、見ていた。
乱された服に気付けば、何をされているのか、いやでも理解するだろう。
「何よ、ヘンなことしないって言ったじゃない!」
「そんなの信じる方がバカだ。ノコノコついてくるおめが悪ィんだべ」
好きなんて言えない。もういっそ嫌われても構わない。そう腹を据えたミヤギの声は、どこまでも冷たかった。
「イヤあっ!」
ハッと思い出して、ベッドの向こう端に目をやる。
「トットリくん、起きて! 助けてよ!」
叫ぶも、トットリはよほど深く眠っているのか、こちらに背を向けぴくりとも動かない。
は諦め、ミヤギを見た。
「やめてお願い。私、イヤなの!」
必死の懇願に応えるのは冷笑で。
「おめさっき、シンタローの名を呼んだべ。シンタローならよくてオラだとダメか?」
「ねっ寝ぼけていただけよ! 仕方ないでしょずっとシンタローさんのこと好きだったんだから」
「オラだって・・・」
ずっと好きだったというなら、同じだ。
不意に迫る切なさに、ミヤギは声を詰まらせた。
「とにかくよ、シンタローのことは忘れろ。オラが忘れさせてやるべ」
すべらな肌に手で触れる。闇の中にほの白く浮かび上がって見える胸元の、柔らかい膨らみを弄んだ。
「イヤって言ってるでしょ、やめて!」
「−やかましいべ、黙れ」
決して大きな声ではなかった。
だけど強く見据えられ、制されて、は言葉をなくした。
全身が震えるような恐怖に支配され、彼の目から視線を逸らすことすらままならない。
−この人は、刺客−
普段ふざけたり気安く接してくれていたから、そんな当然なことを今さら思い知らされた。
士官学校時代から身につけさせられ、なりわいとするに至った。その気迫を剥き出しにされれば、逆らう気など、残らず摘み取られてしまう。
獣の前の、か弱い獲物のように。
「」
腕の中で怯えている愛しい娘を、出来る限り優しく抱きしめた。
「恐がらねえでくんろ。オラそんなつもりじゃなかった」
とはいえ高まった欲望は止めるすべもない。何度目か知れないキスと愛撫を与える。
の目から溢れた涙が、枕にこぼれた。
下腹部に指を這わせ、秘められた場所へ辿り着く。
熱い液がからみついてきたことに喜んで、そばの一番敏感な場所に塗りつけた。
指を動かすと、吐息に混じって甘い声が漏れる。
「・・・感じてくれてんだべな」
単純に嬉しくて、耳元に唇を寄せる。
「こうされんの、いいんだな」
「・・・ああっ・・・」
どうしても止められない喘ぎ。
なまめかしい表情を間近で眺めて、自分の興奮も高めながら、ミヤギは指だけでを追い詰めてゆく。
「あ・・・あ、いや・・・」
行き着いてしまうまで。
半強制的に与えられた快感に、それでも体は満足しているのが恥ずかしく、恨めしい。
「・・・もう、許して」
上に来たミヤギに、泣きながら訴えるが、その涙もキスでぬぐい取られる。
「まだ言ってんだべか。ここまで来たら、もう最後までやるしかねえべや」
脚を大きく開かせて、中心に溢れる蜜をすくい取り、わざと音を立てて舐めてみせた。
「ホラ、おめのここ、オラのが欲しいってよ・・・」
卑猥な言葉に、真っ赤になって目を逸らす。ミヤギは低く笑って、その淫らなの中へ、もうガマンできない自分自身を埋めた。
(う・・・)
最悪の気分の中、意識が戻った。ふかふかのベッド・・・途切れ途切れの女の子の声・・・しかも何だか色っぽい。
どう考えても、普通の状況ではない。
(・・・何だっちゃ)
そーっと顔を反対側に向ける。そこに展開されている場面を一瞬見ただけで、もう直視できず、トットリは元のように背を向けて横になった。
頭がクラクラするので、強く目をつぶる。
声やいやらしい音が、耳に入ってくるのをどうにもできなかった。
「ああー・・・んっ」
今や遠慮なく声を上げるの、体はミヤギにとってよくて、本当によくて、もう出口を突き破りそうで・・・。
「・・・っ、出・・・」
びくん、と震えるから急いで引き抜く。
達した証が、腹部を汚した。
放心状態のからそっと体を離したとき、視線に気付きミヤギは顔を上げる。ベッドから半身起き出してこちらを見ているベストフレンドとばっちり目が合った。
「うわっトットリ、おめいつから見てた・・・」
「こげな中で寝ていられないっちゃ」
非難の口調ではないことに、ミヤギはちょっと安心した。
「あーあちゃん、こげんされて」
ベッドの上を渡り、のそばに来ると、お腹に出された液体に手を伸ばした。触れて、更に広げるように塗りつける。まだ、生温かい。
「何してるべトットリ、触るな」
自らの淫行の跡を弄ばれるなんて、恥ずかしくてしょうがない。
「別に、ミヤギくんのなら平気だっちゃ」
いつもと同じ子供みたいな笑顔を見せているのが、逆に怖い。
「おめ、おかしいべ。オラが平気じゃねえって言ってんだべ!」
真っ赤になってティッシュを取ると、拭い始める。も気持ちが悪かったのだろう、されるがままだった。
始末を終えると、ミヤギはトットリに譲るかのように、ベッドを下りた。
「・・・トットリくん」
恐怖の色が消えない瞳を覗き込み、うっすら汗ばんだ額に手を添えてやる。そうしてからトットリは、優しい声でこう言った。
「ミヤギくんばっかりズルイっちゃ。ぼくもいいだらぁか、ちゃん」
早速服を脱ぎ始める。
「いっいいわけないでしょ、二人とも狂ってるわ!」
「狂ってる・・・そうかも知れないわいな」
脚を持ち上げるようにして、いきなり突き立てると、は押さえきれない声をあげた。
「ちゃんも、一緒に狂ったらいいだっちゃわいや」
トットリの、いつもとまるで違う様子は、親友のミヤギを一番驚かせていた。
酒のせいか、それともこれが本性か。
(何にせよ、人の見てるのも興奮するべなァ・・・)
またすぐ復活してしまう。
「どうだらぁかちゃん、辛くないっちゃか・・・?」
「あ・・・トットリくんって・・・顔に似合わず・・・」
「何だっちゃ」
「・・・スゴイ」
「ミヤギくん、聞いたかいな、誉められたわいや」
「阿呆、オラの方は見なくていいべ」
なんだか面白くないミヤギはムッとしていたが、トットリは嬉しそうに、の体を抱き起こした。
「ぼかぁこーゆーのが好きだっちゃ」
繋がったまま向かい合った格好で抱きしめ、キスを何度もする。
全身で彼女を感じると、愛しさが突き上げてどうしようもない。
「ちゃん・・・」
好きという言葉が喉まで出かかった。
でもトットリは、すんでで飲み込んだ。
今それを言うのは、卑怯だと思ったから。
「そろそろ、終わりにするっちゃね」
動きやすい体勢に戻ると、激しく自分と相手を導いてゆく。
の可愛い声を聞いて、一緒に果てた。
「怒ってるべか、」
「もう口聞いてくれないっちゃ、きっと」
男の直情は始末におえない。
そのときは、今がよければいいとばかりに突っ走ってしまったが、終わってしまうとちょっぴり後悔の二人だった。
「・・・私も悪かったんだわ、隙があったから」
にとっても、さっきまでの出来事を自分の中でどう始末をつけたらいいものか、まだ分からない。
ただ、一方的に彼らのせいだけにはできない気がしていた。
「元通りよ。明日からも・・・ね」
けだるく言い放ち、弱い笑顔を付け加えて見せた。
「・・・すまねぇ」
「ありがとうだっちゃ」
何も進んでいない。何も良くなっていない。
これからのことは、分からない。
「もうこのまま、ここで寝て行こうよ」
ベッドにもぐりこむと、空いている場所を二人に示す。
「いいんだべか」
「賛成だっちゃ」
広いベッドに三人並んで、あとは何もなく、朝まで、ぐっすりと。
・あとがき・
「諦めないで」の続きです。
ネタ浮かんできて、書かずにはいられませんでした。
ヒロインがイヤがっているので、裏に持ってきました。
でもトットリに「顔に似合わずスゴイ」などと言っている時点ではまんざらでもないのかと・・・(笑)。
H17.10.27
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