火照り



「ん……」
 なんだか息苦しい。うっすら目を開けると、すぐ目の前に厚い胸板があって、ああそういえば昨夜も父親の部屋で寝たんだったと思い出す。
 逞しい右腕がしっかりと身体に巻きついていて、身動きが取れない。父の抱き枕にされているらしい。
 起こして引き剥がそうかとも思ったが、不思議な胸の高鳴りと疼きを自覚してしまい、はもうしばらく、じっとしていようと決めた。
 父親に対して、今まで感じたことのなかった「男」を意識してしまったこと、認めないわけにはいかない。
 その理由についても、自分で分かっている。
 この間、18歳の誕生日に、エースと本当の恋人同士になったから。
 この体が、男を――今まで知らなかった快楽を、知ってしまったから。
 愛によって花開いた「女」が、疼いてしまう。もっともっと、溺れたいと。貪欲に。
 だがそれを与えてくれるはずの彼氏は、遠くの海の上。
 おさまらない体が、父の腕の中で火照って、いけないと思いつつも求めてしまうのだ。
 自分からすり寄り、密着すると、硬いものがの下腹に当たって、心臓が跳ね上がる。そのままかなり速い速度で鼓動が続いた。
(これ……、の……)
 あえぐように息をしたら、我ながら切なく色っぽいため息のように聞こえた。
 シャツのはだけた胸元に手を添え、は男にくっつけた自分の体を少し動かしてみる。互いの衣服越しに擦れる感覚に、ますます昂ぶる。
「……んん……」
 苦しげにも聞こえる呻きが、頭の上に漂う。驚いて目を上げると、シャンクスは目を閉じたまま眉間に皺を寄せ、それでもますます腕に力を込めの体を抱きしめた。
「うう……――……」
 呻き声の中に、は母の名を聞き取る。妻の夢でも見て、妻だと思って、娘の体を抱いているのだろうか。
「あぁ……シャンクス……」
 父と呼べず、名を口にした。にとって初めてのことだった。
 じりじりと上に抜け出すようにして、あごひげに頬ずりをする。
 物足りなくて、唇に唇で触れようとした、そのときに。
「――?」
 父は突然目を開けた。
 密着し過ぎている娘に、それでもさして驚くでもなく、いつもの開けっぴろげな笑顔でおはようを言う。
……」
「どうした、苦しいのか?」
 慌ててゆるめようとする腕を、は身振りで止めた。
「……いいの。もっとぎゅっとして。私……エッチな気分になっちゃった」
 正直すぎたかと、口に出してからひやっとする。
 だが動ずることもなく、シャンクスはまだ笑っていた。
「そりゃ困ったな。おれじゃどうにもしてやれねェもんな」
「んん……だって、おっきくなっちゃってるよ」
「あーこれは朝勃ちだ。生理現象だ。別にお前に欲情してるわけじゃねェよ」
「……ママの夢見てたんじゃないの?」
 くすくす笑いで言ってやると、父はさすがにぎくりとしたようだった。
「何でそれを」
「ママの名前呼んでたもの。……、私をママの代わりにしても、いいよ……」
 さっきのように擦り寄って、硬い胸に指を這わす。
 シャンクスは慌ててとどめることはせず、ただそっと腕を緩め、娘の赤い頭をぽんぽんと軽く叩いてやるのだった。
「それで、おれはエースの代わりか? ――イヤだね、おれはそんなの真っ平御免だ。誰かの代わりなんて冗談じゃねぇ」
 ちゅっと音を立て、ほっぺにキスをしてくれる。
「おれはの、世界でたった一人の父親だ」
「……ん」
 すぐにも、頬にキスを返して笑んだ。
「……ごめん、。もう困らせないから」
「別に困ってないけどな」
 再び、もぐりこむようにして、父の胸元に顔を埋める。
「……もう少し、このままでいてもいい?」
「もちろん、いいさ」
 可愛いお前の望みなら。そう言って、優しく髪を撫でてくれる。
 は微笑んで目を閉じた。
 本当はまだ火照りが納まってはいないけど、決してそぶりには出さず、父娘に戻ったフリをする。その実ひそかに男を感じ、ドキドキを続けている。
 多分もうどうしようもないくらいに溢れて濡れている、自分の体を持て余しながら。









                                                             END



       ・あとがき・


「赤髪の娘」裏バージョン。
時期としては、18歳の誕生日の直後。エースの説得に行く前です。

本当はもっと進んじゃう話にしようかと思ったんだけど、さすがに父娘はマズいだろうなーと躊躇してしまいました。
それでこんな中途半端な感じに。
年頃の娘と同じベッドで寝るなんて、何考えてんの!? って怒られそうですが、シャンクスにはやましい気持ちはないらしい。あくまでくっつきたがりの親父なんですね。
ちゃんの方がうずうずして物足りなくなっちゃった。







この小説が気に入ってもらえたなら、是非拍手や投票をお願いします! 何より励みになります。
  ↓

web拍手を送る ひとこと感想いただけたら嬉しいです。(感想などメッセージくださる場合は、「」と作品名も入れてくださいね)


お好きなドリーム小説ランキング コメントなどいただけたら励みになります!





裏ページへ戻る


H24.6.12
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送