トリプルプロポーズ
ため息を落とした。・・・本日、何度目か知れない、ため息を。
(はあ・・・っ)
がつっぷしたテーブルには、指輪のケースが二つ、並んでいる。
サガとカノン、二人から同時に、プロポーズをされた。
愛する人からのプロポーズ・・・本来なら、これ以上嬉しいことはない。
だけれど、喜び以上に、は困惑していた。
二人のことを、本当に大好きだから。
どちらも選べないほど、大好きだから。
そっと、小さな箱を開けてみる。
サガは最高のきらめきを放つダイヤモンドを、カノンは海に似たブルートパーズを、それぞれエンゲージリングとして贈ってくれた。
外見がそっくりな二人だから、迷っているわけでは決してない。
ダイヤモンドもブルートパーズも、それぞれ違った美しさがあるように、サガとカノンのことも個々の男性として見ていて、そしてそのどちらの魅力にも、同じくらいに惹かれていた。
(どちらかを返さなきゃいけないけど・・・困ったなあ・・・)
また、深いため息を、ひとつ。
数日後、はサガとカノンを呼び出し、二人の前にそれぞれの指輪を置いた。
「・・・」
「どういうことだ?」
サガは憂いをこめた瞳で見つめ、カノンは腕を組みムッとしている。
「ごめんなさい。私には出来ないの。どちらかを選ぶなんて、とても・・・」
いずれにしろ辛い選択だった。だが、の出した答えは、二人ともを振ることだった。
どちらかを選んだら、兄弟の仲が険悪になってしまうのは避けられない。自分が原因でこの二人にケンカなんて、絶対にして欲しくはなかった。
だから、両方のリングを返すことにしたのだ。
好きな人を、一度に失うことになるけれど・・・。
「ごめんなさい・・・本当に・・・」
喉が熱くなって、息が詰まる。
一粒、涙がこぼれると、もう止まらない。
「、泣くな」
「俺たちがいじめたみたいじゃねぇか」
両側から肩を抱かれ髪を撫でられて、ますます悲しくなってくる。
「そうだ、何も選ぶ必要はない」
カノンの明るい声に、はたと顔を上げる。サガがハンカチで涙をふいてくれた。
「どういうこと? カノン」
「俺たち二人と結婚すればいいんだよ」
「えっ・・・」
あまりに突飛な提案に、涙も止まった。
「どーせ今、俺とサガと二人暮ししてるんだから、がそこに入るだけじゃないか。三人で仲良く暮らそう、双児宮で。な、そうしよう!」
がどうやら泣き止んでくれたことで勢いづいたか、カノンはいっきにそう言うと、兄のサガにも同意を求める。
「いい考えだろう、兄貴」
そんな常識を外れたこと、サガに一発殴られて却下されるのがオチだ。とは思ったが、サガは少し考えるふうにあごに手を添えて、大きくうなずいたのだった。
「なるほど、それは思いつかなかった。お前でもたまには役に立つことを考えつくんだな」
さりげなく弟をけなしている。カノンは気付かず、兄にほめられたと、大いに気を良くしていたが。
「でっでも、一夫多妻・・・じゃなくて、その逆・・・? いいの? そーゆーの、倫理的に・・・」
「が泣くようなことが、一番よくない!」
二人、力強く声を合わせる。今日はやけに気の合う双子だった。
「いいだろ、」
「え・・・」
それは確かに最高の生活だろう。心から愛する人たちと、ずっと一緒に暮らせるのだから。
サガとカノンにはさまれて、毎日を楽しく暮らす・・・。
そんな日常を思い浮かべると、はたちまち、ぽや〜ん、夢心地になった。
「改めて、受け取ってくれ」
「ダブルプロポーズってとこだな」
両側からうやうやしく差し出された指輪を、右手と左手で同時に受け取る。今度はためらうことなく、ばら色の頬に、幸せな笑みを浮かべて。
「ありがとう!」
サガもカノンも、満足げな表情で頷き合った。
「ただ、抜け駆けはナシだぜ。も俺たちに平等に接すること。いいな?」
念を押すカノンに、二人も同意を示した。
「分かったわ」
「もちろんだ。・・・うっ・・・!」
突然、頭を抱え込み、サガはうめきながらうずくまってしまう。
「サガ!?」
「どうした!?」
驚くとカノンの目の前で、サガの髪が黒に染まってゆく。
「フフフフフ・・・・」
そしてゆらりと顔を上げた、その目は邪悪そのものだった。
「誰がそんな約束など守るものかあ!」
「ゲッ・・・まだおまえ、いたのかよ」
説明するまでもないが、もう一人のサガである。
「はこのわたしのものだ!」
カノンから無理矢理を引き剥がし、自分のもとへ抱き寄せようとする。
「キャ〜!」
「何するんだ!」
「・・・うっ・・・」
と、またひとつうめき、髪も元の色に戻ったサガは、はらはらと涙を流していた。
「う・・・すまん・・・また、わたしはとんでもないことを・・・」
「大丈夫? サガ」
優しく手を取るを、サガはまるで神のように清らかな顔で見上げた。
「信じてくれ・・・私は本当は、君と弟と、仲睦まじい家庭を築いていきたいんだ・・・」
「信じるわ、サガ。本当のあなたは、善だということを」
すっかりその気になっている二人を、弟は呆れて眺めている。
「ナニ兄貴の奴、ちゃっかりに膝枕してもらってんだ」
そしてニヤリと笑って、
「後で俺もしてもらおう。なんたって不公平はいけないからな」
ダブルどころか、実はトリプルプロポーズ。
は、サガの中のもう一人のサガまでも、自然に受け入れた。
前代未聞の賑やかさと楽しさで、三人プラス一人の新婚生活が始まろうとしている。
・あとがき・
重婚ネタって好きなんですよ。素敵な人を二人も夫に出来るなんて、最高じゃないですか!!
何やら問題も起きそうだけど、まぁその辺は気にせずに。サガとカノンは二人で双児宮で暮らしているそうですが、きっとケンカばかりなんだろうな。ケンカするほど何とやら。
そこにちゃんがはさまって・・・どんな生活なんでしょう。
機会があったら、是非続編を書いてみたいです。
H15.6.13
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