は、白ひげ海賊団に入ってから、一番隊隊長のマルコを好きになった。
 好きで好きで我慢できなくなったときに告白して、何とOKもらって、キスだってして、順調に付き合ってる……つもりだった。
 最近、マルコに避けられている。
 二人きりになりたくて誘っても、忙しいだの親父に呼ばれてるだのと理由をつけて、応じてくれない。
 思えば告白してからすでに数年経ち、も大人と呼ばれる年になった。それなのに、未だキスしかしていない。そのキスも、最後にしたのはいつだろう……もう、数か月も前?
「……嫌われたのかな」
 呟いてみると、ショックが改めて胸を重く押しつぶす。
 は立ち上がった。こんなとき、頼りになるのは、他の隊長たちしかいない。




 不死鳥の羽に閉じ込められたいの



「だからさ、そもそも年が離れすぎなんだって。マルコから見りゃガキだろ、女に見えないんだろ。だからおれ、やめとけって言ってたじゃねェか。もっとお似合いの奴いるだろー、意外と近くにさ、ホラ!」
「いないー! マルコが好き!」
 エースでは相談にならない。早々に見切りをつけ、はふいと立ち去った。
 背後でエースがガッカリしている。

「ふんふん、なるほど。よくぞおれに相談してくれた。いいコト教えてやるから、耳貸して」
 さすがサッチは人生経験が豊富らしい。は素直にサッチに近付き、耳を傾けた。
 ……ふっ。
 耳に息を吹きかけられて、飛び上がる。
「何すんのー!」
「はははははは!」
「サッチのバカー!」
「待て待て、悪かった」
 プンスカして行ってしまおうとしたら、二の腕を掴まれた。見上げるとサッチはどこか別の方を向いて、ニヤニヤしている。何かあるのかと、も背伸びして見てみようとしたが、サッチに異常接近されて阻まれた。
「今度は本当にちゃんと教えてあげるから」
 ひそひそ話に、は頷きながら聞き入っていた。

 その夜、自分の部屋に戻ったマルコは、ナース服姿のに迎えられて仰天した。
「な、何でお前がおれの部屋にいるんだよい」
「だって、こうでもしなきゃ、二人きりになれないでしょ」
「その格好は……」
「借りたの。どう?」
 ウエストのくびれが強調され、スカート丈も異常に短い白いワンピースと、ヒョウ柄のサイハイブーツでキメて、ポーズまで取ってみせる。
 マルコはため息をつきながらに背を向け、船室の隅の洗面所で手を洗い始めた。
「……似合わねェよい。もう出て行け」
「……マルコ……」
 鏡越しにちらとも見てくれない。もう、泣きそう。
「私のことが嫌いになったらそう言って。それとも、最初から相手にしてなかった? 私、もう大人になったのに……」
 声が震える。なのにマルコは振り向こうとしない。とっくに手なんて洗い終わっているのに。洗面台に手をついて、うつむくようにしているから、表情は分からなかった。
 拒まれているなら、泣き出すこともその場から走り去ることも出来たのに。はただ立ち尽くしていた。マルコの背中は決して突っぱねようとはしていない。それどころか、いつもの彼に似ない「迷い」を見て取れたので、も諦め切れなかったのだ。
「マルコ……」
 その背中を、思い切って抱きしめる。薄いシャツ越しに、彼の肉体を感じていた。マルコは身じろぎもせず、低い声で話し出した。
「お前が大人になったのは分かってる……綺麗になって、女らしくなって……、その上、そんな色っぽい格好されたり、二人きりになったりしたら、……暴走してしまうだろうよい!」
 最初は抑えるようだった声が、徐々にヒートアップして、最後には振り向きざま抱きしめられた。びっくりして固まったの体に、マルコの両腕がしっかりと巻きつく。息が止まりそうだった。
「歯止めが効かなくて、お前をメチャクチャにしてしまうかも知れねェ……そうしたら嫌われちまう……おれはな、それが怖いんだ」
「避けられる方が悲しいよ。いいよ私、マルコになら、何されたって」
 ゆっくりと息を吐く。少しだけ震えている体を、もっと強く抱きしめられた。
「……んなこと、言うんじゃねェよい……。知らねェぞ……」
 止められない衝動は、即座に行動へ結び付く。
 の体は軽々抱き上げられ、ベッドまで運ばれていた。
「我慢はもうやめだ……だがその前に……、もう二度と、他の男と親しげにするのはやめろよい」
 苦しげな切実さの前で、は目を丸くする。マルコの顔に焦点が合って、ずい分近いなとまたドキリとする。
 それから思い出した。今日サッチと話していたときのこと。サッチはあらぬ方角を向いて、何か見つけたように笑っていた……あのとき視線の先にいたのは、マルコだったのに相違ない。
「見てたの?」
 胸の内がくすぐったい。優越感のようなからかいたいような気分で、何だか笑いたくなる。目の前のマルコがあんまり真面目だったから、我慢したけれど。
「見てたよい。エースのとこに行ったのも、サッチと話してたのも。……どうせこんな格好して部屋で待ち伏せてたのも、サッチの野郎の入れ知恵なんだろい?」
 つっと、指先で純白のナース服をなぞる。くすぐったくて、は身を軽くよじった。それが火をつけたのか、マルコはいきなり胸元のファスナーをおろしてしまう。勢い良く、全部。
 全開になってしまい、恥ずかしいとかばい隠す暇も与えられず、襲いかかられる。思わず上げかけた悲鳴も、マルコの唇に飲み込まれた。
「――望んだのは、だ。途中でやめろって言ってもやめてやんねェよい」
 なぜか笑っている。余裕のふりか、嗜虐心に目覚めたものか。
 体の芯がぞくりとして、は少し震えた。軽く目を伏せると、マルコの胸に大きく描かれた白ひげ海賊団のマークが今までになく鮮やかに、網膜に焼きついた。目をつぶっても消えない。体中に熱を浴びせかけられて、とろけそうになってさえも。
 激しいほどの愛情を残さず受け止めて、はそのまま、マルコの腕の中眠りに落ちた。

「済まねェ……乱暴にしちまったよい」
「……いいの。平気」
 そそくさと起き上がろうとする彼を、抱きついて止めた。マルコはびっくりしたようだったが、ふと笑顔になっての腰を抱き寄せてくれる。頬をくっつけ密着して、マルコの匂いの中で、はようやく結実した深い愛情に酔いしれていた。
「もう、マルコ以外の男の人と二人きりで話したりはしないから」
「……ああ」
 の肩をゆっくり撫で回すマルコの指は、そっと首筋を、鎖骨をなぞり始める。
「でも、サッチのアドバイスは悪くなかったよい」
「え?」
 マルコはくくっと笑う。
「ナース服。正直、興奮した。また着て見せてくれよい」
「も、もう、マルコの変態!」
 昨夜の、一気に服を脱がされたことを思い起こして赤くなる。殴る前に腕は掴まれ、枕に押し付けられた。
「じゃあは変態の女だな……。これからゆっくり、少しずつ、もっと色んなことを教えてやるよい」
「〜〜」
 言葉が出ない。脈が速すぎる。
「もう、は、おれだけのものだ……」
「……うん」
 ずっと望んでいた。は束縛と独占を喜んで、覚えたばかりの大人のキスを堪能した。








                                                             END





 ・あとがき・

botで遊んでいたら思いついた、マルコの短編。
前回裏だったので、今回は愛情たっぷりのマルコとちゃんで書いてみました。なんかbotっぽい感じで(?)
白ひげ海賊団も楽しいなぁ。みんな家族として仲良いのがいいですよね。
エースは最近こんな役ばっかりな気がする……。またエースの話も書きたいな。

マルコは白ひげ海賊団に古くからいるそうなので、結構年も上なんだろうなぁ。シャンクスと同じくらいかも。オトナの魅力ですね。
コミックスで見たときは正直そんなにカッコいいと思わなかったんだけど、どんどん好きになってきたキャラです。





この小説が気に入ってもらえたなら、是非拍手や投票をお願いします! 何より励みになります。
  ↓

web拍手を送る ひとこと感想いただけたら嬉しいです。(感想などメッセージくださる場合は、「不死鳥の羽に閉じ込められたいの」と作品名も入れてくださいね)


お好きなドリーム小説ランキング コメントなどいただけたら励みになります!





「ONE PIECEドリーム小説」へ戻る


H24.7.15
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送