良い季節の風を全身に浴びながら、くノ一の花使い・は約束の場所に立っていた。
 足元の小石を蹴る。手にした一輪の花を弄る。
 それでも待ち合わせの時間までにはまだ遠く、昂ぶって叫び出したいような気持ちの持って行き場がない。
 こんなに落ち着かないのも、には心に決めたことがあるからだった。

 今日、告白をする。



 蟲使いと花使い



 小さな蟲が、ほとんど音もなく飛んできて、の手にした白い花に止まった。
 顔を上げると、もうそこに人影が見える。
 ゆったりとした上着のポケットに手を入れて、高い襟とサングラスに顔を隠す、いつものスタイル。
「シノ」
 待ち人、油女シノは、の同級生だ。
 二人が二人とも、優秀な成績でアカデミーを卒業したのはつい先日のこと。チームも決まり、本格的な任務に就く日も近付いていた。
「……早く来たつもりだったが」
 シノの呟くような声に、『意外だな』というニュアンスを読み取って、は微笑んだ。
「いつも待たせるのは私の方だったもんね。でも、今日は特別……どうしてもシノに伝えたいことがあるから」
 背をもたせていた楢の木から離れ、一歩前に出た。
 背筋を伸ばして呼吸をひとつ。
 目の前の人を、真っ直ぐ見上げる。
 ドキドキは最高潮だ。
「シノ、私」
 声は思ったよりも落ち着いて、すんなりと出てくれた。
「シノのことが、好き」
 風が、花と花に止まった蟲とを揺らした。

 クラスの中でシノとは仲が良く、一緒に行動することも多かった。口にこそ出さなかったが、互いに意識していたのは明白だった。
 二人は付き合っているのだと思い込んでいた同級生も、多かったと思う。いちいち否定はしなかった。
 実際のところは何一つ……気持ちの確認すら、二人の間にはなかったのに。
 お互い卒業出来たら、なおかつ班が離れてしまったら、自分から告白しようとは決めていた。
 シノの性格からして、まず向こうからは言ってこないだろう。そうすると、このまま離れてゆくことになりかねない。
 それだけは、避けたかった。

、お前の気持ちは嬉しい。むろんオレもお前を憎からず思っている」
 普段と何も変わらない声音。顔を凝視してみたところで、当然何も読み取れない。動揺も、興奮も。
 の一世一代の告白を、シノはただ静かに受け止めたようだった。
「それじゃあ、私と正式にお付き合い、してくれる?」
 少し声が上ずった。上目づかいに期待の念がこもる。
「……それは、出来ない。なぜなら、まだその時期ではないからだ」
 いつもの口癖が出た。諭すような調子で告げながら、シノは右手を伸ばした。
 落胆を隠そうともしないの手から、一輪の白い花を取り上げる。花びらの間に、まだ蟲はいた。
「物事には適した時期というものがある。花が咲くのも、さなぎが蝶になるのも……。オレたちはようやくアカデミーを卒業したばかりだ、ハッキリ言えば、色恋どころじゃない」
 厳格なシノらしいといえばらしいのだが、ホントにハッキリ言ってくれるのね、とはふくれる。
 女はいつだって、一番でいたいのに。
「そんな時期なんて待っている間に、他の人のとこ行っちゃうかもよ。私だってモテないわけじゃないんだからね」
 これはハッタリ。実際は全然モテない。
 もっとも、シノの彼女と知りながら近付いてくるような、無謀な男子などいないというだけの話なのだが。
「……それで気持ちが離れるなら、それまでの縁……少なくともオレはずっとお前を想っている。なぜなら蟲は花に惹かれる。時間や物理的な距離など、問題ではない」
 手元の花に目を落として、淡々と話すシノ。
 蟲は花に惹かれる。
 蟲使いは花使いに惹かれる……。
 あまりに平然と言うので最初は呆然としてしまったが、その内容が相当に情熱的なものだということに気付いたとたん、遅ればせながらの方が照れてしまった。
 すごい殺し文句。――意識しているのか、いないのか。
「時期が来たら、きっと、貰いに行く」
 花を返すためにと伸ばされた腕を、はとっさに強く引いた。シノが前屈みになったところで、高い襟を引っ張り下ろし、ようやくあらわになった口に自分の唇を押し付ける。
 押されっぱなしじゃつまらない。ちょっとした仕返しのつもりでもあり、せめてもの約束に代えたかったからでもある。
 はいたずらみたいな軽いキスですぐに離れるつもりだった。ところが、背中にシノの両腕を回され、たちまち拘束されてしまう。
 心臓がぎゅん、と縮み、直後熱い血が強い勢いで全身を巡る。
 彼が少し屈んでくれたおかげで、ぐっと背伸びをしていたのが楽になっていた。はもう少し、体の力を抜いてみる。
 シノにすっぽり抱きしめられて、シノを全身で感じながら、やっぱりかなわないみたい……と、ぼんやり悟ったのだった。

 の背中、シノの手にした白い花の中で、寄壊蟲は眠くでもなったのか、じっと動かない。
 唇で触れ合うだけの幼く拙いキスを、二人はずい分長い間、交わしていた。







                                                             END



       ・あとがき・


23年初ドリームは、なんとNARUTOです。

職場で隣の席にいる方(私より年上の女性)がNARUTO好きだそうで、私はジャンプ読んでいてもNARUTOはちょっと飛ばし読み気味だったんですが、コミックス貸してもらって現在読んでます。今20巻くらいまで。
いや面白いねこれ。
コミックスを読んでから、ジャンプでも読むようになりました。話はよく分からないけど、知っているキャラ出てるから。

好きなキャラは今のところ油女シノくんダントツです。あとシカマルとかロック・リーとか、シノのお父さんとかシカマルのお父さんとか。
最初は月光ハヤテがデスノのLみたいでいいなと思って、ハヤテのドリームまで考えたんだけど、その後奥さんか彼女のような人が出てきたため、ハヤテドリームの熱はしょぼんとしぼんでしまいました。公式に彼女がいると、ドリームって書きにくくなっちゃうんだよね、私の場合。それにしても「月光ハヤテ」って、名前が抜群にカッコいい。もう主役級のカッコ良さ。だがあんなにゴホゴホ咳をしていると忍べないと思います。

話は変わりまして、シノ。シノかっこいいね。最初は蟲が気持ち悪かったけど、カンクロウとの戦いでいっきに好きになりました。
今度はいつ登場するのかな。そしてサングラスを取る日はやってくるのだろうか。

私ずっと風小次でドリーム書いていたから、忍者ドリームは手馴れたものです。……いや、ウソです。同じ忍者とはいえ、かなり毛色違うからね。
NARUTO初ドリームなので慣らしということで、風小次のヒロインをそのまま持ってきちゃいました。花使い。

話の内容としては、今まで何度も書いたことのある感じの……なぜか私こういうの好きなんですね、大人になるまで待とうね、みたいなのが。
デスノでも風小次でもこれと同じような話を書いたことがある。
シノもあんなに落ち着いてはいるけれど、何しろまだ子供だから、ね。

まだまだNARUTO借りて読む予定なので、これからも好きなキャラができればまた書きたいと思います。
……次もシノかも知れないけど。

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