ヒロイン設定()
○ナルトたちの一つ上、リーたちと同期のくノ一。
○木ノ葉崩しの年に中忍試験を受けるが、第一の試験で脱落。
「中忍試験のとき、いいなって思った。付き合って欲しいんだけどよ」
傀儡師の恋 1
サスケ奪還の任務に失敗した上傷つき戻ってきた後輩たちを、見舞っていたら呼び出され、何かと思えば突然の告白。
は目をまん丸にして、目の前の男を凝視する。
黒子衣装を身にまとい、顔には歌舞伎のような隈取り、背中にぐるぐる巻きの人形を背負った、砂隠れの下忍――名前はカンクロウ、傀儡使いだ。
中忍試験に参加したは、当然彼のことを知っている。
もっともは第一の試験で仲間と一緒に落ちてしまったから、以降はギャラリーとして第三の試験の予選及び本選を観戦していただけだ。
それだけに、面食らってしまった。この人に自分の存在を知られているなど、思ってもみなかった。
「……そんないきなり言われても」
「もう帰るからよ、オレたち。時間がないじゃん」
火影様の依頼で、シカマルたちを助けに彼ら姉弟が駆けつけてくれたのだ。
報告等、必要な手続きを終え、今から砂の国に帰るところだという。
「彼氏いないなら、いいじゃん」
「か、彼氏はいないけど……」
確かに今はフリーだ。
「でも今それどころじゃないから……ネジたち重体だし……」
方便などではなく、本当にそのことで気持ちの余裕がない。付き合うどころではないのだ。
「あいつらなら全員、生命の危機からは脱したって言ってたじゃん。オレ様のおかげでよ」
謙虚という言葉を知らないのか、それとも恩を売りたいのか。
「……でも心配で……ごめんなさい、本当に考えられないの。ネジは同期だし、ナルトくんたちとも……親しいから」
わずか躊躇して言いよどんだ、その違和感に、カンクロウは気付かぬようだった。もしくは、気付かぬふりをした。
「あ、そ……じゃあよ、気持ちが落ち着いたら、電話くれよ。ホレこれ番号。……もう時間だ、行くぜ。じゃあな」
一枚の紙切れを強引に押し付けると、黒い体は影となり一瞬にして消えてしまった。
何て慌しい。
「……」
仕方なく、メモをポケットにしまう。
変な人だ。第一、中忍試験のときにいいなと思ったというのが怪しい。は、神経の糸が張りつめていて、異性どころではなかったというのに。ましてや木ノ葉崩しに関わる任務を負っていた砂の忍が、そんなことを考えられるだろうか。
(からかわれたのかな)
少し疲れた気分で、は家に帰った。
そしてそのことを、しばらくの間すっかり忘れていた。
「もおっ、待ってよキバ! まだムチャできないでしょ!?」
「平気平気! オレも赤丸も、もうすっかりいいんだ!」
はしゃいで転げて走り回るキバと赤丸をたしなめながらも、笑みがこぼれる。
元気になって良かった。またこうやって散歩が出来るようになって。
「が見舞いに来てくれたおかげだな!」
「みんな入院してたからねー。お見舞いも大変だったわ」
「ちぇっ。オレだけ特別なわけじゃないって言いたいんだろ」
口を尖らすキバの素直さに、胸が少し痛んだ。
「……キバ」
背後からの静かな声に振り向くと、サングラスをかけた背の高い男の子が、ポケットに両手を入れてこちらに歩いてくるところだった。
「あら、シノくん」
キバと同じ班で、蟲使いの彼に、年の割に落ち着いていて何を考えているのか分からないといった印象を持っていたが、中忍試験でその強さには驚いた。
「オレも散歩に付き合いたいんだが」
「お前が?」
キバはけげんそうな顔をする。今まで一度もそんなこと言い出さなかったのに、と。
「別におかしくはないだろう、散歩くらい。……なぜならチームメイトなのだから」
回りくどくチームを強調する、シノの言い方に、はこっそり笑った。
今回の任務に入れなかったことで、疎外感を感じているのかも知れない。こう見えて寂しがりやなんだ。
「じゃあ、私はここで」
「えーっ、行っちゃうのかよ!」
「ワンワン!」
赤丸までもが引き止めるように吠える。微笑ましく感じ、は赤丸に、それからキバに笑いかけた。
「私も、班の皆と待ち合わせているから。お互いチームワークは大事にしなきゃね!」
小さく頷くシノの隣で、キバは渋面を作っている。
「じゃあね」
「!」
去り際に大声で呼ばれ、振り返れば、今度はまるで捨てられた子犬みたいな顔が見えた。
「また、散歩に付き合ってくれるよな!?」
は吹っ切るように明るく笑って、そんなキバに大きく手を振る。
「もちろんよ!」
キバがほっと胸を撫で下ろすのを見て取ってから、姿を消した。
「よお。ずい分つれないじゃん」
待ち合わせ場所に向かう途中で、黒い男に呼び止められ、はびっくり仰天、同時に思い出した。
「カンクロウ……」
そういえば告白されていた。電話番号も渡されていたっけ。
お見舞いと任務で日々多忙を極め、後回しにしているうちに忘れていた。
「もう皆元気なんだろ。電話くらいくれたっていいじゃんよ」
いつもの装束、いつもの化粧……いや、化粧は見るたびちょっとずつ違っているが、とにかく、いつものカンクロウは、じりじりとに近付いてくる。
「……今日は、なんでここに?」
「任務に決まってんじゃん。お使いみたいなもんだけどよ。……んで悪ィけど、今日も時間ねえんだ」
カンクロウはとうとう、の背にした木の幹に片手をついた。
顔が近い(怖い)。
「少しは考えてくれたのかよ。オレと付き合うことをよ」
またそんなことを、しゃあしゃあと。
「で、でも私、あなたのことよく知らない……」
「だからよく知るために、付き合おうって言ってんじゃん」
もっと顔が近付く。やっぱり怖い。
「……可愛いよな、……」
指なしの手袋も黒。その指先で、頬に、触れてこようとしている……。
「……やめて!」
押しのけ、逃れた。
「ふざけるのもいい加減にしてよ!」
いきなり付き合ってくれとか、可愛いとか。
これが冗談じゃなくて何だ。
は走って逃げた。
相手の方が確実に強い。ちょっとドキドキしたけれど、後ろから追ってはこなかったし、呼び止める声もしなかった。
ところが少し走ったところで、誰かに追いつかれた。
立ち止まって体ごと振り返ると、明るい色の髪を四つに分けて縛ったくノ一が立っている。
「……テマリさん」
テマリは小さく会釈をし、少しに歩み寄る。まるで気後れのないきびきびとした所作は、同性であるがゆえ、憧れを抱かせる。は見とれていたのだった。
「バカな弟のことで出しゃばるのもどうかと思ったけど……、あいつが本気だってこと、知らせておきたくてね」
砂のカンクロウとテマリ、それに我愛羅は三姉弟で、中忍試験でもチームとして参加していた。今日もテマリはカンクロウと一緒だったのだろう。
「カンクロウの奴、毎日あんたの電話を待ってたし、今日の任務だってずっとソワソワしてたんだ。もう滑稽でしょうがないくらいでさ」
以前までの弟にまるで似つかわしくない行動の数々を思い出しているのか、テマリは苦笑を浮かべている。
「……あいつ、こういうのに慣れてないから、あんたにも失礼があったかも知れないけど、でも、気持ちだけは分かってくれないかな。あんなのだから、振られても仕方ないけどね」
やや乱暴な口調に、弟への愛情が滲んでいる。は心が柔らかくなると同時に、罪悪感を覚えた。
恋する気持ちというもの、とて知らぬわけではない。それなのに、本気の思いをあんなふうに突っぱねてしまった。
「カンクロウ……さんに、悪いことをしてしまったわ」
ぽつりと呟く。ふと顔を上げると、テマリの顔がごく近くにあったもので、びくりとした。姉弟揃って……それともこうやって近くで遠慮なく覗き込んでくるのが、砂隠れ流なのだろうか。
「ふっ、カンクロウの奴も、女の子の趣味だけは悪くなかったみたいね。あんた可愛い!」
腰に手を当て、にぱっと笑うテマリの方こそ可愛くて、は思わず赤面したものだ。
「……なんだよ、全部空回りじゃん……」
木の切り株に腰掛けた黒子が、がっくりうなだれている。言うまでもなくカンクロウである。
思い切って告白したら、焦らされて。
電話は待てど暮らせどかかってこない。
ようやく再会したのに、ふざけるなと一蹴され……。
いいとこナシだ。天才傀儡師の名も泣こう。
「テマリも遅いしよぉ。またダンゴでも食ってんじゃねえだろうな」
「……あんたのために走り回ってたってのに、その言い草かい」
風が起こり、姉が姿を現す。その隣にもう一人、少女がいるのを見て取ると、カンクロウは思わず立ち上がった。
「!」
テマリは気を利かせたのか、席を外してしまった。
カンクロウと向かい合って、は素直を頭を下げる。
「さっきは、ごめんなさい。からかわれているのかと思っちゃって」
「いや別に、分かってくれればいいんだけどよ」
ちらちらとを見ながら、何故かカンクロウはニヤけている。
「じゃ、OKってことでいいんだよな?」
何でそうなるのか。ずい分結論を急ぐ男だ。
今にもまた異常接近してきそうなのを、両てのひらを向けて押しとどめた。
「あのっ、友達……友達からで!」
「友達……」
口がへの字、目が上向く。
少し考えるようにしてから、カンクロウは頷いた。
「よし。じゃあの電話番号を教えろよ。今度はオレの方からかけるからよ。待ってんのは性に合わないじゃん」
「う、うん……」
いいのだろうか? と思いつつも、は結局、番号を渡してしまった。
(友達。ただの友達だもんね)
自分に言い聞かせる。
そのときテマリが戻ってきた。もう時間いっぱいなのだと、心なしかニヤニヤしながら二人に告げる。
カンクロウがやけに上機嫌なのを気にしながら、は二人を見送った。
「へっへっ。番号もらったぜ。帰ったら早速かけるじゃん」
「しつこい男は嫌われるよ。友達なんだろ」
「何だ聞いてたのかよ。盗み聞きとは趣味悪いじゃん」
「ふーん、やっぱり友達って言われたんだ」
カマをかけられたのだ。いつもなら一言くらいは言い返すところだが、今のカンクロウは寛大だった。
その機嫌の良さがテマリにとっては気味悪い。気味悪いといえば、あの娘に懸想してから、ずっと気味悪い。
「友達で、って言うのは断り文句だろ」
意地悪のひとつも言いたくなるというものだ。
「違うね。『友達から』って言われたんだよ。友達から始めて、そのうち彼女になるんじゃん」
「……」
こいつのこの自信は、一体どこから来るのだろう。
テマリはもう何も言えず、ただカンクロウの後を追った。
いつも以上に飛ばしているカンクロウに、気を抜けば置いていかれそうだったのだ。
友達で……友達のままで。
それが一番いい。
家に帰り、ご飯を食べてお風呂に入って、明日も任務のためは早目に布団に入っていた。
『私たち、友達に戻った方がいいと思う。その方がきっと、うまくいくわ』
耳に蘇るのは、一年前の自分の言葉。
そしてまぶたの裏に浮かぶ、そのときの彼の顔。
悲しそうな切なそうな、諦めきれないような……。
(そうよ……友達の方が仲良くできてるじゃない……ねぇ、キバ……)
付き合うととたんに、煩わしいことが増えるのだから。
つづく
・あとがき・
カンクロウ好きです。
シノが好きでシノを見ているうち、自然とカンクロウの姿が目に入り、好きになったという感じかな。
今ちょうど28巻から借りて読んでいるところです。カンクロウの素顔が出てる! 彼もあの格好じゃなければ普通のあんちゃんなんだな!
最初ナルトにデブデブ言われていたのが気になりますが、まぁ、体格がいいんでしょうね。好みです。
それでドリームを考えたのですが、考えてから木ノ葉から砂まで三日はかかるとか、他国の忍は勝手に出入りできないとかいう公式設定を知り、こんなんで愛を育めるのか、と不安になってしまいました。
シカマルとテマリさんはどうなんだろうな……。
そして電話があるのか激しく疑問。電柱が立っているくらいだから、あってもいいと思うんだけど。……あることにしてください。
携帯はなさそう。家電オンリーですね。
カンクロウは強引に迫ってきそうです。ちゃんちょっと引き気味。
遠距離恋愛、実るのでしょうか?
続きます。
傀儡師の恋 2
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