モアモアハッピィ


 小さな部屋はストーブのおかげですっかり暖められて、結露のできた窓が、クリスマスツリーのカラフルな光をふんわりと映している。
 ソファの脇に飾られたツリーは決して大きくはないけれど、賑やかに飾りつけが施されていた。
 さまざまなオーナメントと点滅するライトを眺めていると、いつの間にか微笑んでいる白虎だった。
「じゃあ食べよう!」
 グラスと飲み物を持ってきてセッティングすると、は白虎の向かいに膝を折った。
 小さなテーブルには温かな料理が所狭しと並べられている。がレシピと首っ引きで格闘した成果品もあれば、白いひげのおじいさんがいる例のファーストフード店で買ってきたチキンも山盛りといった具合で、どう見ても二人でやっつけられる量ではないのだが、に言わせると、
「普段ならともかく、クリスマスパーティなんだから。お腹一杯食べて、それでも余るくらいがいいのよ」
 ということらしい。
 クリスマスパーティというものが初体験の白虎は、彼女に一任することにしていた。
「カンパーイ」
 ノンアルコールの朱いドリンクで満たしたグラスを合わせる。
 グラスの向こうで、は本当に楽しそうに笑っている。
 白虎も、微笑んだ。

 誠士館が風魔によってつぶされたことで、白虎は初めて夜叉一族の呪縛から解放された。
 と運命の出会いを果たしたのは、「生まれ変わったつもりでこれからを生きて行こう
と親友の紫炎と話し合っていた、その後のことだった。
 実はは、白虎が制圧していた地区の高校に通っていた。白虎が夜叉八将軍のひとりとして皆に恐れられていたことも知っていたのだ。
 その上で、好きだと言ってくれたに、白虎は生まれて初めて感じるような親しみと感動を覚えた。
 それを恋と呼ぶんだと気付いたとき、白虎はまず、自分の生い立ちを包み隠さず話した。
 幼いころ夜叉にさらわれ、忍びの修行に明け暮れたことも、裏の世界で手を汚しながら生き抜いてきたことも。
 重すぎる事実を、しかしは受け止めてくれた。
 自分のために涙してくれるを抱きしめ、白虎は幸せというものを知った。
 そして−。
 今や彼女は、何ものにも代えられぬ大切な存在となっている。
 今日は、二人で迎える初めてのクリスマスイブだ。
 もう満腹なのにクリスマスケーキを出してきたは、「別腹があるから」と笑っている。
「俺にはそんなもの、ないけどな」
 そう言いながらも、スポンジの柔らかさとクリームの甘さに、やっぱりじんとしてしまう。
 なんだか夢のようで、楽しかった。
 今までのことを、不幸だったとは言わない。
 壮絶な日々をくぐり抜けてきながらもそう思えるのは、ひとえに紫炎がいてくれたからだった。
 もちろん、紫炎との付き合いは、今も変わらず続いている。
 そこに、という大切な存在が増えた。
 幸せが増した。
 クリスマスを、こんなふうに過ごせるように−。
「これからも、一緒にいよう」
 クリスマスプレゼントにと用意してきたネックレスを、の首もとに飾ってあげる。
「わ・・・すごい! ありがとう白虎!」
 はしゃぐのデコルテで、星型のプチネックレスがきらり光った。
 よく似合うと白虎は思い、そう口にすると、は少し、はにかんだ。
「私もプレゼント、あるの」
 差し出された包みの中から、銀色の小さなロボット型ストラップが出てくる。ロボットの胸には、青いラインストーンが施されきらきらしていた。
「ほら、おそろい」
 がつまみ上げた携帯にも、なるほど赤いラインストーン付きのロボットがぶら下がっている。
「・・・おそろいってちょっと恥ずかしくないか」
 そう言いながらも、白虎は早速その場で自分のストラップを付け替えた。
 ふと気がつくと、の顔がすぐ近くにある。
 つやつやとした唇に誘われて、キスをした。
「・・・今日はずっと、いてくれる?」
「・・・いいよ」
 ねだるように見上げてくるから、もう一度抱きしめて。
 点滅する明かりに照らされながら、甘いキスをゆっくりと交わした。

「白虎は、もっと幸せになっていいと思う・・・」
 初めて過去を語ったときに、は泣きながらこう呟いた。
 恐れず貪欲に求めてもいいんだ、と、教えてくれた。
「・・・幸せだよ・・・」
 これからもっと幸せになる・・・二人で。
 綺麗な髪を軽く乱して眠りに入ったに、口づけを落とした。
 窓の外には夜空の海が広がっている。
 トナカイの引くソリやら赤い服のおじいさんやらを空想し、子供みたいだと笑いながら。
 それすら心を温かくする不思議に、白虎は少し、泣きたいような気分になるのだった。




      END




 ・あとがき・

投票ありました白虎です。白虎単独ドリームは初ですね。こちらもクリスマス話にしてみました。時期なので。
パラレルで、生きていることにしています。あまり細かいことは考えずにどうぞ(笑)。
白虎はあんなにひどい生い立ちなのに、絶望しているふうもなく、紫炎に「感謝しているさ」などと言えるのが偉いと思う。それほどに紫炎との絆は強いんだろうね。

最初は自分の過去をちゃんには一切言っていない、というふうに書いていたんだけど、途中で全部知らせた上で付き合っているというふうにしてみました。
過去を秘密にしているネタは、またのちほど別のキャラで書いてみたいと思います。

やすかさんはブログ覗くと、時々女装してますね・・・可愛い・・・。




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