「琳彪、相手してちょうだい!」
「おう、着替えて来いや」
 琳彪の言葉を無視して、はセーラー服のまま構えを取る。
 稽古のときには、ハーフパンツなど動きやすい格好をするのが常だ、琳彪は木刀を肩に担いだまま、けげんそうにの全身を見回した。
「そのまんまでやんのか?」
「だって私、この格好でいる方が多いもん。イザってとき、着替えるヒマなんてないでしょ。スカートでも戦えるように練習しておきたいの」
「・・・ふーん・・・」
 もっともらしい論理に、うっかり琳彪は納得してしまった。


 恋の罠は見せパンで


 木々の間に、木刀がぶつかり合う乾いた音が響き渡る。
「えいっ!」
 はいつものように蹴りを繰り出した。
 琳彪は、木刀と足技を合わせた戦いを得意としている。もそれを習うようになったのは当然の成り行きだった。何しろ、女であるに戦闘術を教えてくれるのは琳彪以外にいなかったのだから。
 空気を切り連続で攻めるが、琳彪の動きは避ける一方で、いつもの調子が出てこない。
「どうもやりにくいな。パンツ見えるぞ」
 目の前でスカートはいた女の子が脚を上げる姿なんて、直視できたものではない。
 当のは、スカートの上から腰の辺りをポン、と叩き、
「見せパンだから平気よ」
 あっけらかんとしたものだった。
「・・・何だそりゃ」
 世間の俗事に疎い琳彪は、眉根を寄せる。見せパン。初めて聞いた。
「見えてもいいパンツなの」
 それはどんなパンツなんだ。見せてもいいなんて、すでに下着ではないんじゃないか?
「さ、続き続き! そりゃー!」
「ち、ちょっと待てって」
 見せパンなんて聞いたら余計に気になってしまう。
 自然と意識がスカートに向いてしまって、に押されるという珍しい事態に陥ってしまった。
「どーしたのよ、琳彪!」
「く・・・」
 楽しそうなのが腹立たしい。
 琳彪は、とうとう木刀を下ろした。
「ダメだダメだ! やってられっか!」
「何で、見えても大丈夫って言ってるのに」
 いかにも不満そうなの前で、琳彪も口を尖らす。
「最初から見せてんのと、スカートから見えるってんじゃ違うんだよ。色仕掛けとして使えるかも知れんが、正攻法じゃねぇ。俺の性に合わねーんだよ!」
「そんなこと言ってたら、スカートチラリの敵が現れたとき、琳彪真っ先にやられちゃうよ」
 琳彪は頭の中にそんな敵を描き出し、はあ、と斜め下にうなだれた。
「・・・やられねーよ」
 お前だから、ダメなんだ。
「えっ何?」
 口の中の呟きを聞き逃すまいと、は接近してきて、「もう一回言って、もう一回!」などと耳に手を当てせがんでくる。
 琳彪は少し赤くなって妹を見下ろしたが、にわかにハッとした。普段と変わらぬ無邪気なフリをして、その目には小悪魔的な輝きが宿っている。
 ・・・罠だ。
「ワザとか、お前」
 歯噛みするように低く押し出した声に、はふっと笑った。
 子供がいたずらを仕掛ける顔では、もはやなかった。
「・・・だったら?」
「・・・フン」
 琳彪はもっと不敵に笑い返すと、木刀を投げ捨てる。カラン、と土の上に転がった音に、一瞬気を取られたの手からも、木刀を取り上げた。
 丸腰になったの手首を掴み上げ、有無を言わさず木の幹に押し付ける。上体を屈めるようにして、耳元に囁きこんだ。
「・・・今日は、違うことを教えてやるよ」
「・・・・・」
 たやすく動きを封じられ、初めて怯えた目をして見上げる。
 琳彪の眼の中に、男特有のギラついた光を見て、しまったと思う。
「私、そんなつもりじゃ・・・」
 火をつけようなんて考えていなかった。
 単なるいたずらに紛れさせて、ちょっとアピールできたらと狙っていただけなのに。
「じゃあどんなつもりだってんだ」
「それは・・・」
 言い訳を紡ごうとするの口は、琳彪の唇に塞がれた。
 手を離してやるが、代わりに両腕でしっかりと抱きしめる。逃れようとするのを許さず、口腔内に舌を割り入れ、激しく貪るように味わった。
「・・・あ、やだ・・・」
 ようやく解放してやると、涙目になっているに笑いかける。
「そんなツラすんな。・・・俺が嫌いか?」
「・・・・・」
 いつもと同じ、兄としての笑顔に、哀しくはないが泣きたい気分になる。
 は、今度は自分から抱きついた。
「・・・大好き」
 ずっと前から、特別な存在だった・・・。
「・・・素直だな」
 無造作に草の上に座ると、琳彪は手を差し伸べる。従順に膝をついたに、もう一度唇を重ねた。
「誰か・・・来たら・・・」
「誰も来やしねえよ」
 いとしい身体をきゅっと抱きしめ、首筋に舌を這わす。
「・・・ダメ・・・」
 いやいやしても逃げられず、敏感な肌に琳彪の熱い息がかかる。はゾクッと身を震わした。
「・・・こんな所で、悪ィな。止められねぇ」
「・・・えっ」
「仕掛けたのはお前だ。責任取れよ」
 どさっ。
 押し倒されては、もう観念するしかないようで。
 思ってもない展開になってしまったけれど、結果オーライかな・・・。
 のしかかってきながら、琳彪が微笑んでくれたから。
 も、笑い返すのだった。





                                                           END




 ・あとがき・

ドラマ見ていっぺんで琳彪を好きになりました。ヤンキーかチンピラみたいでカッコいい!(←ほめてます)
ボタン外したガクランの胸元がセクシーだし、動作もキビキビしているし、蹴り+木刀の戦闘も最高!
あんなにすぐ退場となったのが、残念で残念で・・・(でもほぼ原作通り)。
「風連」シリーズのヒロイン設定を考えたとき、琳彪に足技を教えてもらって、ちゃんもあんな戦いが得意だったらカッコいいんじゃないかと思った。

本編では、竜魔しか眼中にないちゃんだけど、番外編ではこんなふうに色んなキャラとのからみを書いてみたいと思っています。
こーゆーの、いいのか分かんないけど・・・。
半ナマ扱うのは、私、生まれて初めてなので、緊張します・・・。




web拍手を送る ひとこと感想いただけたら嬉しいです。(感想などメッセージくださる場合は、「恋の罠」と入れてくださいね)


お好きなドリーム小説ランキング コメントなどいただけたら励みになります!





「風連」トップへ戻る


H20.3.7
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送