の彼氏は、全盲だ。
でも、目が見える人と同じように動けるし、以上に何でも出来る。
夜叉一族は特殊な訓練を積んでいるから、と言うが、にはよく分からない。
ただ、彼−闇鬼と一緒にいられれば、それで幸せだった。
光なくとも
「残念だなぁ。私がどんな美人か、闇鬼に見せられなくて」
隣に寄り添って過ごす、二人きりの時間に。
いたずらっぽい調子で、そう言ってみる。
「・・・ああ、残念だ」
闇鬼の声は、いつも静かで優しくて、はそれが大好きだった。
「でも・・・」
瞼を閉じたまま、そっと、の肩に手を回す。
抱き寄せられるまま、身を預けると、頭の上に闇鬼の声が降ってくる。
「のことはよく分かる・・・匂いとか・・・声、感触で・・・」
シャンプーの清潔な匂い。
甘さを含んだ細めの声。
女の子らしい、柔らかな感触・・・。
視力を補うために高め研ぎ澄ました他の四感で、彼女の好ましいところ、素敵なところをいつもたくさん感じている。
きっと、目で見る以上のものを。
「・・・分かる?」
例えば、今、の心音が高くなり、熱が上がったこと、じかに触れるまでもなく感じ取れる。
闇鬼はすっと手を出すと、の顎を持ち上げ、顔を傾けて口づけをあげた。
「・・・・」
ドキン。跳ね上がった胸の音、確実に聞かれている。
彼はいつも、欲しいものを欲しいときにくれる。の望みを、言葉以前に読み取ってしまうのだ。
それはつまり、闇鬼の前では何一つ隠し立てが出来ないということでもあった。
例え欺こうとしても・・・見える人ならだませても、闇鬼に対しては不可能だから。
「・・・好き」
素直になるしかない。
そしてまた、誠実に愛すれば、彼も同じように応えてくれる。
「・・・」
腕の中で、彼女が今、求めているのがよく分かる。淫らはかえって嬉しかった。だから、強く抱きしめてもう一度、今度は長く濃いキスをした。
ますます高まる胸の音、吐息、うっすら滲む汗。の全てが愛しく、闇鬼は宝物にするように、髪から頬、首筋にかけて丁寧に撫でさすった。
−人を愛することなど、一生ないと思っていた−
裏切りに遭って光を失った、あの日から、に出会うまでは。
「闇鬼、私・・・」
「・・・言わなくていい・・・」
分かる。伝わっている。
が今、微笑んだのも、ますます高まっているのも。全部分かる。
「お前の望むように、してやるから」
嬉しくて少し恥ずかしくて、は闇鬼の首に両腕を回し、顔を伏せるように抱きついた。
照明を落とした部屋で目をつぶれば、ちょっと彼に近付くような気がする。
視覚を閉ざして、ただ感じていた。
囁かれる愛の言葉や、密着して感じる彼の鼓動の速さ。
自分の中に入ってくる、熱と圧迫と痺れるような刺激。
乱されて、嬌声はあられもなく迸り、湿った音が響きを添える。
いずれ自分を失ってしまう、その瞬間まで。
(・・・)
満たされて寝息を立てている。髪に触れて存在を確かめる。
愛しいもの、手放したくないものなら、を置いて他にはない。
光なくとも、幸せだと言えた。
END
・あとがき・
闇鬼も結構いいキャラだな・・・と思っているうちにするするとネタが出てきてしまって、本当は劉鵬を書きたかったんだけど追い抜いて書いちゃった。
ドラマでの、静かな声にひきつけられましたね。「チェックメイトですね」が耳から離れません。
そういう調子で穏やかに愛を語られたらなぁ・・・と妄想してしまいました。
何だか書くたびにアダルト度増してます。ラブラブです。甘いっす。
でも、恋人同士の甘く短い話って、大好きなんですよ・・・。
書き始めてから、公式サイトで「かつて仲間の裏切りによって重傷を負い、視力を失ったため、誰一人信じなくなった非情な男」とあったのに気付き、それもちょっと追加してみたけど、ドラマ本編ではそんなエピソード、紹介されてなかったよねぇ?
人を信じられないなんて哀しいので、是非愛して欲しいです。
原作でも結構美形ですよね。最後の最後で初めて瞼を開けた。ドラマではちょくちょく目を開けていたけど、白い目はちょっと怖い(お母さんをビックリさせてしまったそうで)。
何度もDVDやサイトを見ているうち、夜叉の面々も好きになってきたので、これから夜叉のドリームも増やせたらいいなと思います。
この小説が気に入ってもらえたなら、是非拍手や投票をお願いします! 何より励みになります。
↓
web拍手を送る ひとこと感想いただけたら嬉しいです。(感想などメッセージくださる場合は、「光なくとも」と作品名も入れてくださいね)
お好きなドリーム小説ランキング コメントなどいただけたら励みになります!
「ドラマ版」へ戻る
H20.3.8
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||