鏡越しチャイナ・ガール
「童虎〜v」
いつものように元気に名前を呼んで、天秤宮へ駆け込んでいく。・・・おっとと、今日はちょっと違う雰囲気で攻めるんだった。おしとやかに、ヨーエンに、っと。
「おお、」
童虎の大き目の瞳が、あたしの今日の格好を見たら、もっと大きくなった。えっへへ、狙いどおりかな?
「どうしたんじゃ、それ?」
そう、今日のあたしはチャイナガール!
赤のミニ丈チャイナドレス、髪だって両側におだんごにしてキメてみました♪ そしてそして、最大のポイントは、じゃーん、裾脇のスリット! これでさすがの童虎も、ドッキドキ・・・の、ハズ。
「可愛いのぉ、」
・・・ズルッ。
童虎は、いつもあたしのいいところを誉めてくれるのと同じ調子だった。笑顔が爽やかすぎ。
もしかして、春麗を見るのと同じ気持ち?
それはそれで、いいんだけど・・・ちょっとチェッ。
261才だもんな〜。あたしなんか、まだまだガキなんだろーなァ。
「街に行ったら、安く売ってたから、思わず買っちゃったの」
頭の中にいつもアナタがいるから、チャイナドレスが売っているのを見たときには、飛び上がって喜んじゃったのよ。
壁に、中国風の装飾がなされた大きな鏡がかけてあるから、あたしは改めて自分の姿をチェックしてみる。赤のチャイナドレスにおだんご・・・こうして見ると、ちょっと子供っぽいかな。上半身しか映らないんだもの。
「似合ってる」
童虎も、あたしの後ろに立って、両肩に手を置いてくれた。
その手が温かくて、にっこにこ。
童虎も、にこにこ。
鏡越しに、二人で、にこにこにこ。
童虎の私服も、いつものようにチャイナ風だから、あたしたちこうしているとホントお似合いカップルみたいよ。
・・・でも、いつも童虎はあたしのこと、子供扱いなんだよね。
春麗とかジュネとかと、女同士のヒミツの話をしたとき、あたし、二人にさんざんつつかれちゃったんだから。・・・つまりその、オトナの恋愛についてね。
もっとも、春麗はおじいちゃんの童虎に育てられたわけだから、かなり複雑な気分だったみたいだけれど。
でもでも、二人には思わせぶりで曖昧な返事をしちゃったけど。
本当は、まだな〜んにも、ないんだよー!!
そろそろ進展が欲しいな、と思って。今日こんなカッコで来たのは、そんな狙いもあってのことなんだ。
見て見て、このスリット、結構きわどいよ!
と、言いたいけど、鏡には映っていない。
まっ、でも、後ろに童虎がいるのって、いいな。チャイナな二人を眺めているのも、楽しいかな。
「・・・」
耳元で優しい声が。おっ、と思っていたら、あたしの両肩に置いていた手を、童虎は少しずらした。
うわぁ〜。
肩越しに軽く抱き寄せるみたいにされて、鏡の中のあたし、みるみる赤くなる。
「・・・童虎・・・」
こんな位置でこんなに接近するのは、初めて。
お互いの顔がはっきり見えているから、何だか恥ずかしい。
「すまん・・・あまりが可愛くて。じーさんのクセにって、笑うかの」
「じっじーさんじゃないよ・・・」
鏡の中の童虎は、ぴっちぴちの18才だ。ううん、18才より若く見えるくらいよ。
確かに言葉遣いはこうだけどね・・・。
「そうか・・・? わしは本当はな、どうしたらいいか分からないんじゃ。実質261才じゃから」
冗談を言っている顔じゃない。こんなのは珍しい。
「と、ちゃんと付き合えるかどうか・・・」
「・・・」
もしかして、そのことで悩んでいたの?
そっか・・・だから、お互いの気持ちが分かっていたハズなのに、友達以上恋人未満のままだったの・・・?
「童虎、いいじゃない、そんなの」
はっきりいって、童虎がおじいちゃんの姿だったら、好きにはならなかったと思う。
いくら中身が同じだっていったって。
あたしは、鏡の像をぼんやり眺めていた。
チャイナガールのあたしも、18才の童虎も・・・、何となく、同じなのかな? って気がしてきた。
鏡の中の、虚像にも似た−。
ああ、よく分からなくなってきた。
だけど確かなことがある。
「あたしは、童虎が、好きなんだもの」
それだけは、真実だ。
「それで、いいじゃない?」
無邪気さを装って、笑ってみた。
別に、いいじゃない。
「・・・」
童虎は、ぎゅっ、ってしてきた。またまたドキッ。
気持ち、いっぱい、あふれてる。
温かい両腕とか、あたしの名前を呼ぶ声とかに。
そして、童虎は、ゆっくりと、こう言ったの。
「ウォアイニー」
えっ・・・これって。
ニイハオとかシェイシェイとかと並ぶ、あたしが知っている数少ない中国語の。
つまりは I love youよね、愛している、ってことよね!?
自分の言葉に置き換えると、照れちゃうよ。
少し強い力で、体の向きを変えられる。鏡越しではなく、じかに向き合い、見つめ合った。
やさしいやさしい、童虎の瞳・・・あたしの、大好きな。
「ウォアイニー、」
もう一度、愛していると囁いて、そうして思い切り抱きしめて。
「こんなわしでも、いいか?」
やだな、そんなの聞くの、おかしいよ。
「童虎が、いいの」
仮死の状態で長く生きてきたことも、黄金聖闘士であることも。
正直いって、そんなのどうでもいいことなの。
あたしは、童虎が、好きなだけ。
そうはっきりと思ったら、何だかじんわり、泣きたくなってくる。
「大好き」
言った後、息つく暇もなかった。口に、何か温かくて柔らかいものを押し当てられて。
これ・・・キス!?
想像していたのと違う唐突さだけど、優しいキスに、うっとり・・・。
童虎の首に、腕を回して。
鏡に映ったあたしの後ろ姿、どんなふうに童虎には見えているかな、なんて、思ったりしていた。
「ずっと大事にするからの・・・」
深く優しい童虎の言葉に、あたしは胸がいっぱいになって、黙って頷くしかできない。
とても幸せ。
あなたのことを、愛してる。
・あとがき・
他のドリームサイトさんで、シュラがスペイン語で、もしくはデスマスクがイタリア語で、「愛している」って言うドリームが、あったりするんですよ。
イイっ、これはイイっ!! 私もやろう、そうだ中国語でやろう! と思ったのがきっかけでした。
本当は漢字で「ウォアイニー」を書きたかったんだけど、「ニー」の字が出なかったの・・・。泣く泣くカタカナにしました。
童虎に言われたら、いいよねー。
「大事にする」とか「大切にする」という言葉も好きなんです。好きな人に言われたい言葉です。童虎のドリームは二本目ですね。でも、前回の「あなたの、一番に。」とは、ちょっと違う感じの童虎にしました。年齢差を気にしていたらしい。200才以上なんて、もはや年の差とかそういう問題じゃないような気もする。
ちゃんはまたまた幼いヒロインにしてしまいました。私、ロリコンなもので(激白)。おじいちゃんの童虎だったら好きにならなかったんだろう、と、正直なちゃんです。
外見なんて関係ないって言うけど、限度があるもんねぇ。
「今、そこにいるあなたが好き」ということなのよ、つまりは。鏡越しというのは、チャイナな服装のカップルが鏡に向かって立ったら、絵のようでステキかな、と思ったので。
初めての一人称ドリームです。別に一人称の必然性はなかったんだけど、たまにはいいかなと思って。
実はコスプレシリーズ第一弾。第一弾ってことは第二弾も・・・? うーむ謎のシリーズ(笑)。
H15.6.19
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||