いつの日も
「おまえたちって、『美女と野獣』を地でいってるよなー。いやむしろ『美女と野牛』?」
彼と歩いていたら、ばったり会ったミロにそんなふうにからかわれた。はあからさまな不快感を顔に出してしまう。
「何よミロ、その言い方!」
「そう、怒ることもないだろう、」
当の野牛・・・もといアルデバランに制されて、はほっぺをふくらましたまま見上げた。
「だってアルデバラン」
体の大きな彼は、少し前かがみになって、ミロの顔を覗き込むようにする。
「お前、羨ましいんだろ」
「・・・あーそうだよ。ちぇっ、面白くないな」
言葉とは裏腹に、いたずらっ子みたいな笑顔のままで、ミロは二人の前から退散していった。
その後ろ姿を、はまだムクれてにらみつけている。
「悔しくない? あんなこと言われて」
「仲を認められてるってことじゃないか。は美女って言われたんだから、喜んでもいいと思うがな」
全然気にしていない。
でも、アルデバランが知らないことだってある。今のような、面と向かった揶揄だけではないのだ。がひとりのときに『どうしてよりにもよってアイツなんだ? 俺じゃダメなのか?』とか、『アルデバランなんかやめて俺のところに来い』とか真顔で迫ってくる黄金聖闘士も、いる。・・・誰とは言わないが。
そのたびに、は腹立たしくなる。
「美女と野牛か〜、うまいこと言うな、ミロは。はっはっはっ」
でも、いつも大らかな彼の笑い声を聞くと、もいつの間にか笑顔に戻っているのだった。
いつも、穏やかにさせてくれる。そばにいれば、安心する。
だから彼のことを大好きだった。この良さを分からず、好き勝手なことを言ってくる人になんか、目が向くはずもない。
「きれいな夕陽だね」
気持ちが落ち着くと、景色が見えてくる。
十二宮の手前で振り仰ぐと、今まさに沈まんとする大きな夕陽に見とれた。
と、体がふわりと浮く感覚に、は目を丸くする。
「こうすれば、もっとよく見える」
快活な声と、自分を見上げているアルデバランの顔で、ようやく、抱き上げられて彼の肩に座っているんだと理解した。
格段に視点が高くなって、確かに夕陽もよく見える。は手をかざしてきょろきょろ辺りを見回した。
見慣れた風景も、まるで違って見えることに、感嘆の声を上げる。
「わあースゴイ!」
はしゃいで少しくらい動いても、アルデバランが片手でしっかりと支えてくれているから、怖くなんかない。
「他のヤツじゃ、こんなことは出来ないだろ?」
「うん!」
やっぱり、少しは気にしているのかも。
でもはわざと明るく返事をした。
左肩の上のかけがえのない存在を、アルデバランは今、強く感じていた。
が分かってくれているから、それでいい。誰に何を言われたって、全然構わない。
それは揺るぎない自信にも繋がっている。
小さな体いっぱいにみなぎる元気が好きだ。一緒にいると、パワーも二倍になる気がするから。
二人、同じ目の高さで、同じ夕陽を見ていた。
「おなかが空いたね」
「じゃあ、晩飯にするか!」
アルデバランはそのまま歩き出した。高い位置での揺れと、景色が動くのが面白くて、は声を出して笑う。
アルデバランも、笑う。
「楽しそうですね、二人とも」
白羊宮を通り抜けるとき、ムウが声をかけてきた。
アルデバランの肩に腰掛けているを見て、くすくす、と笑う。
「まるで親子のようですよ」
「肩乗りだ、やーい」
貴鬼にまで指さされて笑われたけれど、こんなからかいなら、腹も立たない。
「いいでしょ〜貴鬼。バイバ〜イ」
ちらっと舌を出して、手を振ってみせた。
今夜はアルデバランが腕をふるってくれて、大皿いっぱいの料理を二人で豪快に平らげた。
その後は、広い広い胸の中で、夜を越える。
何もかも満たされて、心地よい。
「大好き、アルデバラン」
「・・・俺もだ、」
こんなとき、少し照れて、言葉が足りなくなる。そんなところも好きだった。
いつの日も、穏やかに楽しく暮らしていきたい。
一緒に笑って、一緒の景色を見て、一緒にご飯を食べて、一緒に寝て。
いつの日も、こうして過ごしたい。
いつの日も、二人で。
・あとがき・
突発アルデバランドリーム。
いや、当初からアルデバランのドリームは書きたいとずっと思っていたんだけど、なかなかネタが浮かばなかったのよ。
今日いきなり思いついたので、急いでノートにネタをメモって、書いちゃいました。アルデバランって結構好きなの。リアルタイム時から好きだった。
原作やアニメでの彼の扱いはあまりにもかわいそうだと思います・・・。本当は強いハズなのに!
彼、結構鋭いと思うのよね。星矢たちと対戦したときも、星矢の頑張りを通して、その向こうにある真実に気付きかけたし、ハーデス編のときも、サガたちの真意を汲み取ったから道を譲ったんだよね?
ただの大味な人じゃないところも、また好きです。豪快で大らかな感じ。
牡牛座のかづな的キーワード「穏やかさ」「安定」を使って。
私もアルデバランの肩にのっけてもらいたいです(笑)。
でも、風小次のビデオで霧風が劉鵬の肩に座っていたのをついつい思い出してしまう。
ちゃんは、ちょっと子供っぽい感じになったかな。
日曜日の親子みたいです(笑)。他の黄金聖闘士が出てくるドリームとは私としては珍しい。でもこんなのも楽しいですね。
からかう人は、デスマスクと迷ったんだけど、ミロにしました。
そしてちゃんに迫っている人は誰でしょう(笑)。
ムウや貴鬼は全く予定になかったんだけど、流れで登場させてみました。タイトルはまたまた遊佐未森から。
H15.5.15
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