欲しいんだ。
休日、部屋の中で。
小さなテーブルには二つのカップ、湯気も立ち消えたホットミルク。
発売日を待ちわびていた雑誌をつい熱心に読みふけっていたから、すぐそばまで近づいてくる気配に気付くのが遅れた。
「」
ごろごろとすり寄ってきて・・・仔犬みたいに。
相手をしてあげてなかったから。
でも、子供じゃないんだからと呆れる気持ち半分、ちょうど読みたい箇所だったのが半分で、わざと恋人を無視した。
「〜」
ごろごろ、ごろりん。
あっという間に膝を占領される。
「どーしたの、イオ」
もはや雑誌は諦めた。膝の上の顔や髪をいたずらに撫でてやる。ほんとうに、ペットにするように。
自分を見てくれたのが嬉しいのか、イオはにっこりと笑って、手を伸ばした。求めが分かったは、素直に身を屈め、ちゅっと軽いキスを交わす。
こんなときの彼の、とろけるような笑顔が好き。
心がほんわかしてくるから。
「」
起き上がって、その笑顔のまま両手を大きく広げる。
イオの胸にちょっと頭をつけると、優しく、包み込まれた。
大好きな彼の大好きな匂いを吸い込んで、うっとりとしていたら、自分を抱く腕ににわかに力が加わってゆく。
伝わる熱と自らの熱さにあえぐ寸前、耳元で声がした。
「欲しいんだ」
それは悪魔的に甘く。
もうつかまっている。逃げられない。
いつの間にか、主導権を握られて。
(でもま、いっか)
さっきよりもずっと長くて、ずっと激しいキスに酔う。
服の上からの愛撫ではじき飽き足りなくなり、イオはを抱き上げ、二人のねやへ、そっと横たえた。
その刹那、は見た。イオの眼を。
平素穏やかなブラウンが、らんらんと鋭く、まるで動物的に光っているのを。
だがそれすら好もしい。飾らない、ありのままの彼だと、知っているから。
「、きれいだよ」
白いきめの肌がまだ明るい部屋の中でさらされても、恥ずかしいと思ういとまも与えられず、愛される。
本能を隠さない荒々しさで、体を重ねる。
しがみつき頭を振って、憚らない声をあげて。
この人の前でだけ裸になれる自分自身が、この瞬間が、は大好きだった。
「イオは本当に、スキュラみたい」
あれだけ激しくしたくせに、何事もなかったかのようにミルク(すでにホットではない)をすする恋人に対し、はばら色の肌をして、まだボルテージが下がり切れない。
イオはこちらを見て、少し笑った。
「みたいじゃなくて、スキュラの海闘士だけど?」
「うん。スキュラそのものよ。優しげに近付いておいて、野獣みたいに襲いかかるんだわ」
「・・・人聞き悪いな」
と頭をかくイオの目には、の白い肌が映っていた。
ついさっきの愛の証が、赤い小さな印となって、なまなましく留まっている。
イオはその鎖骨の下のマークに触れた。ミルクのカップをベッドサイドに置いて、再び抱きしめる。
「嫌だった?」
「まさか」
分かっているくせに。
愛しい跡を唇で辿って、同じ場所にキスを散らしてゆく。
「・・・欲しいんだ。を、全部・・・いつでも」
「それならもう、とっくに・・・」
言葉は続かない。
「欲しいんだ」
優しい声とは裏腹の強引さで、ベッドの上に寝かされて。
「・・・もう・・・」
お望みのままに。
大好きな人に対する最上の優しさと、他の誰にも見せない野性を織り交ぜて、蜜のように濃い時間がゆるり流れてゆく。
二人っきりその中に浸り溺れて・・・そのまま、夜まで。
−欲しいんだ−
・あとがき・
「brand-new tomorrow」のあとがきで書いた「イオの甘い話」を書いてみました。
「欲しいんだ。」なんてお題を与えられたら、もうコレしかないでしょう。胸張ってこれしかないでしょう!! ということで、甘く甘く仕上げてみました。
子供のように甘えるのとちょっと強引に誘うのと、その二面性みたいなのがイオにぴったりだなと思います。
「スキュラみたい」というのは、大枠を考えた後で付け加えたセリフです。うーんなるほど、スキュラみたいだ。うまくまとまったかも。
「スキュラ」って名前の響きが好きだな。
どうしてもイオって動物と結び付けたくなっちゃうんだよね。フェンリルとはまた違った感じで動物的なの。これもハーデス編後の話のつもりです。未だにスキュラの海闘士をやっているのね、イオ。
ちゃんが読んでいるのは、私としてはマンガ雑誌のつもりです。REDだったりして。イオって声が奇面組の潔くん。なんか、技の叫び方がミョーだったような。記憶に残っているのは「サーパントストラングラー」の言い方。さてこの記憶が正しいのか、DVDが出てからのお楽しみ。
まぁ、アフロディーテの「ロイヤル・デモン・ロォォォズ」には敵わないけどな(笑)。
奇面組といえば、零くんの声はスパルタンで(といってもアニメオリジナルのマイナーキャラだ)、豪くんはアルデバランで、大くんはムウ様よね。あれ、仁くんって? 仁くんの声優さんが分からないや。
ちなみに原作でのイオの登場シーンは、フトモモむっちむちで何と言うか色気あると思います。そんな彼が大好きです。
H15.7.24
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||