ゆく年くる年


 ゴ〜ン、ゴ〜ン・・・。
 除夜の鐘が、テレビの中で鳴り響いている。
「いよいよ、新しい年になるね」
 テーブル上には、年越し蕎麦ならぬ、年越しパフェに年越しケーキ。
 Lは、甘物をつつきながらコーヒーを啜っている。が「年が明ける瞬間くらい、一緒に迎えようよ」とねだったら、ちゃんとこうして応えてくれた。
「それにしても、この時期は慌しいですね。25日と26日の街の変わりようには驚きました」
 NHNの「紅白歌合戦」と「ゆく年くる年」の温度差もしかり。さっきまでのお祭り騒ぎは、荘厳な鐘の音と落ち着いたナレーションによってすっかり払拭されてしまった。
「先生も走るくらい、12月って忙しいの」
「そんなものですか」
 全国各地の寺社が映し出されるさまは、まだ日本にすっかり馴染んでいないLにも何か心穏やかな、崇高な気持ちを誘うのだった。
「神社と仏閣が同じ番組で取り上げられることに疑問を抱かないのも、この国ならではですね」
「クリスマスはキリスト教だしねー。いいとこ取りよ」
 大きなパフェを一心にすくっては口に運ぶ、Lの仕草や表情を見ていると、自然に笑みがのぼってくる。もケーキのお皿を取った。普段なら深夜に甘いものは遠慮しているところだが、大晦日であることだし、特別だ。
「私も、今年の10大ニュースなんか考えてみようと思ったんだけど」
 柔らかいショートケーキをぱくっ、と一口食べる。おいしさに目を細めた。
「今年は一つ、強烈な出来事があったから、それ以外は何も思いつかなかったわ」
「−当ててみましょうか推理は得意ですから」
 器の奥からアイスを掘り起こして口に入れると、長いスプーンをくわえたままで、きょろりとした目をに向けた。
 目が合う。どちらも、逸らさない。
「と、いうより、私と同じでしょうから」
 そう言ってLは少しだけ笑う。彼がたまに見せる茶目っ気は、いつもを喜ばせた。
「・・・そうね」
 あなたに出会えたこと。
 それが、今年最大にして最高の出来事・・・。
「来年もよろしく」
「もう来年になります」
 画面に0:00の表示が出る。
 大声でカウントダウンする他局の番組とは対極にある控え目な年越しだが、はこっちの方が好きだった。
「・・・今年もよろしく」
「はい、よろしくお願いします」
 今年も良いことが、たくさんありますように。
 ご利益があるのか謎だけれど、テレビの中の神社を眺めながら、も心の中でお祈りをした。
 それからふと目を転じると、Lと視線が合って、にっこり微笑む。
 一緒に、良いことがたくさんありますように。

 新しい年に、静かな希望が萌えいずる。






                                                                END




       あとがき


今年は大変お世話になりました。
来年もまたどうぞよろしくお願いします。
私の気持ちを短いドリームにしました。

今年はほとんどデスノドリームばっかりでしたね。
来年の風向きは分かりませんが、いつものように好きなものを好きなように書いていきたいと思います。
デスノももっともっと書ければいいですね。

皆様、よいお年を。





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