ture name



 向かい合ってケーキを食べる、この時間が幸せ。
 リラックスした空気の中だからか、が日ごろ聞きたいと思っていたことが、するりと口から滑り出た。
「ねえ、竜崎って偽名なんだよね。本名、何て言うの?」
「・・・・」
 Lはスプーンを持って、コーヒーをいたずらにかき回す。には、迷っている仕草に見えた。
 恋人としてかなり近しい間柄になった二人だ、本名を知らない方が不自然といえる。しかし何といってもその世界の総番長(?)Lのこと、いくら恋人でも、本名は明かさないのかも知れない。
 の中では半々くらいで、例え答えてくれなくても構わなかった。
「知りたいんですか」
「教えてくれるの?」
「・・・そうですね」
 ようやくかき混ぜるのはやめて、甘いコーヒーを一口含むと、Lはすーっと手を伸ばした。人さし指で、テーブルの上、の前方を指さす。
さんのケーキを、くれるのなら」
「はい」
 間髪置かずにお皿を差し出され、Lは大げさなビックリポーズを取った。
「いいんですかそんな簡単に・・・ザッハトルテですよ!?」
「・・・私とあなたじゃ、ケーキの重みっていうか価値が全然違うと思うよ・・・」
 二口くらいは食べたから、味も分かったし、彼と付き合い出してからほとんど毎日甘いものばかり食べているので、お年頃のとしてはそろそろ控えたいとも思っていたところだ、かえって都合がいい。
「・・・そうですかそんなに知りたいんですか」
 ケーキをくれてまでも・・・などと尚も呟きながら、Lはちゃんとお皿を受け取った。自分のと並べて、何か嬉しそうに眺めている。
「それなら、ここに来てください」
 目線はケーキ向きのまま、自分の膝をぽんぽん、叩く。
「何で?」
 と言ってはみるが、逆らう理由もないから、はLの膝と膝の間にちょこんとおさまった。
 ひとりがけのソファは狭いけれど、この密着感は悪くない。
「万が一、他に漏れては困りますから」
 ごくごく小さな囁きを、もっともらしく耳に吹き込むと、の体が小さく震えた。
「Lawliet」
「・・・え?」
 よく聞き取れなかった。首を傾けるようにして顔を上げると、Lがずっと近いから、息苦しいほどドキドキしてくる。
「ローライト」
 今度は日本語らしく発音してくれたそれを、はとっさに心に受け止め、ドキドキしたままの胸の中で何度も繰り返した。・・・流れていかないように、留めるように。
「ローライト・・・」
 聞きなれない単語に過ぎないそれが、彼の名だと・・・。
「そ、それって苗字? 名前?」
「ファミリーネームです」
 の柔らかな髪をもてあそぶ。体も柔らかい・・・コロンのいい匂い。全てが愛しいと、強く思いながら。
「じゃあ、私が竜崎と結婚したりすれば、・ローライト・・・なんて」
「そういうことになりますね」
 Lはさらっと答えるけれど、結婚なんて、勢いですごいこと言っちゃった・・・と、後から緊張してきた。
 そしてまた、ローライト、ローライトと繰り返す。やっぱりまだ馴染まない。
「じゃあ名前の方は?」
 当然聞きたい。明日のおやつをあげてもいい。
 しかしLは、何も要求せずに、再び口もとをの耳に寄せた。
「−Lです」
 耳に触れる息がくすぐったくて、また背筋にくる。そこが感じてしまうんだから。
「・・・うんLは分かってるから」
 唇の前に人さし指を立てられて、彼と同じくらいにまで声を落とす。
「・・・本名は?」
「ですから、Lです」
「・・・・」
 目を見つめる。何を考えているのか、読み取れない黒目。
「言いたくないなら、そう言えばいいじゃない」
 Lの人を食った返答に、いささか腹が立った。
「それが私の本名だと言っているのに・・・疑うんですね」
「疑うってだって・・・」
 世界最高の探偵の名、他の誰も名乗ることを許されないコード。それが「L」であるはず。
 本名と言われて、信じられるだろうか。
「私が嘘を言ったことがありますか」
「いつもでしょ」
 普段の捜査を見る限り、彼は平気で嘘をつく。
 Lは人さし指を唇につけ、天井を見上げるような目つきをしてから、の体に両腕をからめた。
「では、に嘘を言ったことはありますか」
「それは・・・」
 チョコレートとコーヒーのいい匂い・・・細いけれどすっぽり包んでくれる長躯・・・こうしているだけで、とろかされそう。
「・・・ないかも」
 とはいえ、半信半疑だけど。
「エル・ローライト?」
「−あぁ、いいですね」
 ぎゅっ・・・腕に力がこもる。
「今だけ許します、その名を呼ぶことを。ただもっと近くで、もっと小さな声で・・・」
 二人きりの秘密が、どこにも漏れないように。
 Lが丸い背を更に丸めて、の肩口に頬をつけるようにしてきたから、その耳に吹き込んでみる。
「エル・・・L・・・ローライト」
 ほんとにほんとに小さな声で。
 何度も呼べば、それが彼の名前なんだとしっくりしてきて、親しみと愛しさすらわき起こってくる。

「エル・・・」
 誰もが偽名だと思い込んでいる名前を、だけは本当の名前として、呼んでくれている。
 その事実が、Lには途方もなく嬉しいことなのだった。
「・・・だけは、覚えていてください。私の、本当の名を」
「・・・うん」
 胸に秘めたこの名前を、彼同様に愛そう。

 二人の間に新たな絆ができたようで、ふっくら幸せ。
 そんな中目を閉じかけたは、自分の体に回されたLの手が、何やら不穏な動きをしていることに気付いた。
 モゾモゾ動き回って、胸にまで上がってきたとき、コラッ!と抗議する。
「何してんのLっ」
「しっ・・・」
 キスでせき止められ、大声で本名を呼んでしまった失敗に思い至った。
 しかしLのキスは止まらない。止まらないどころかますます激しく、手の動きもエスカレートして、とうとう服をめくろうとまでし始めた。
「ヤダってばバカぁ!」
 じたばたするも、簡単に押さえつけられてしまう。
「耳元で名を囁かれて、その気にならない男はいません」
「・・・って竜崎がそうしてくれって言ったんでしょー!」
「原因や過程は問題じゃないんです」
 窮屈な体勢で動けないところを、更に拘束するように抱きつかれた。
を欲しくなりました」
「・・・・」
 体中を、甘い電流が駆け抜ける。
(もうっ・・・結局、こうなっちゃうのね・・・。エロすぎ、エル・ローライト)
 まだ新鮮なその響きが、更にを骨抜きにする。ひょいと抱き上げられても、もはや抵抗しなかった。
 あとはもっと広くて柔らかな場所に移って。
 二人はいつものように、愛を確かめ合う。






                                                                END




       あとがき

13巻発売で、Lの本名がとうとう明らかになりました。
色んな意見はあるんでしょうが、私の感じたことをこのドリームに入れてあります。いいんじゃない、エル・ローライト。
せっかく本名が出たなら、書きたくなるのがドリーマー。というわけで、早速書いてみました。
ラストはなんかいつも通りなんですが(笑)。





この小説が気に入ってもらえたなら、是非拍手や投票をお願いします! 何より励みになります。
  ↓

web拍手を送る ひとこと感想いただけたら嬉しいです。(「ネーム」と入れてくださいね)


お好きなドリーム小説ランキング コメントなどいただけたら励みになります!





戻る

「DEATH NOTEドリーム小説」へ


H18.10.19
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送