上手な恋の飲みかた




 わざと椅子をずらし、脚を組んで見せる。ちょっぴり深めのスリットから覗く分量も、計算済み。
 真向かいにいる彼の、眼鏡の奥をうかがってみても、何の色も見えなくて。は呆れたためいきをこぼした。
 ピシッと伸びた背筋がこのカフェにいまいち馴染まない検事さんの前で、His Missも泣いている。
 下心0%じゃ、ママとお茶飲んでいるのと変わりゃしない。
「ねェ・・・照」
 ストローで氷をつつくと、炭酸がしゅわしゅわ弾けた。
「今日この後、どうするの?」
「どうって」
 泡越しの上目遣いも通用しないか、照はコーヒーのカップに丁寧に手を添えた。
「映画は見たし、まだ行きたいところがあるのか?」
 隠しているとか探っているとか、そんな裏が一切ないのがいっそ笑えてしまう。
「中学生の、デートみたいだね」
 3度目で、キスもなし。
「照って、童貞?」
「な・・・っ」
 さすがのポーカーフェイスも、崩れた。
 端正な眉宇に軽くしわを寄せて、照はをにらみつける。
 日も落ち切らぬ時間に、公衆の場所で。品のない女だ・・・とありありと語るその目をすら、は涼しくかわしてしまう。
「・・・その辺の男と同じだと思われたくはない」
 憤慨したように、照は言うけれど。
 気持ちだけじゃ、許せない。
「照・・・、飲み頃ってものがあるのよ、何だって」
 大事にされるより、刺激が欲しい。
 ざくざく、氷の間にストローを突き立てるようにしてから、さっきよりぬるくなってさっきより気が抜けた炭酸を、一口含んだ。
「・・・おいしくない。もう行こう」
「あっおい」
 ややがさつに立ち上がるに、つられるように椅子を引いたとき、いきなり襟元を掴まれた。
 ニヤリたくらみいっぱいの顔が近付いて、思わず目をつぶる。
 ぶつかるようなキス、柔らかさを感じるいとまもない。
 その素早さ、唇のスパークにはじかれたように、目をしばたいた。
 なんて刺激。そしていい匂い。
 一瞬後には周りの目に、いたたまれなくなる。
 下を向き、急いでカフェを出た。

「まったくきみは、人前であんなことを・・・」
 ぶつぶつ文句を紡ぐ口を、またふさいでやろうか・・・などと不埒に思いつつ、先に立って歩く。
 賑やかな街中に似合う短いスカート、明るい色彩の服と髪を、照は見ていた。

 呼ぶと即振り返る反応の良さ、髪をぴょこんと跳ねさせて。
 結局、この奔放さに惹かれ、離れられない事実、認めざるを得ない。
「・・・並んで、歩かないか」
「うん!」
 嬉しそうに隣についてくれるを、微笑んで見下ろしていた。






                                                             END



       ・あとがき・

「上手な恋の飲みかた」は、ずーっと昔の「うしろゆびさされ組」(←大好きだったの!)の歌で、是非これは照ドリームのタイトルにと思っていました。イメージ膨らますために、カラオケで歌ってみたり。
歌詞もそのまんま織り込んだりしています。

なんか照って、奥手そう。女性経験少ない感じがしません?
「そんなに簡単に手を出すべきじゃない!」と信念を持っていそうです。
 





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