悪いときには悪いことが重なるものらしい。
 ようやく週末を迎えたは、自分の部屋でぐったりとしていた。
「しめっぽいね。窓開けよう」
 彼氏の周助が立ち上がり、慣れた手つきでの部屋の窓を開ける。
 いつ見てもきれいな動きをするな・・・。
 ぼんやりと、目で追った。
 ちょっと、見とれていた。

 桜のトンネル


 姉同士が親友という縁で出会った二人は、青学、と、通う学校は違っても、仲良く付き合いを続けている。
「・・・で、どうしたの?」
 目の前、正面に座り込まれて、思わず目をパチクリさせる。周助の穏やかな笑顔が、かなり近かった。
 心配されているのは嬉しくて、でも気持ちは晴れなくて。
 はとうとう、ため息を吐く。
「・・・勉強も部活も、うまくいかなくて・・。友達にも悪口言われている気がするし・・・もう最悪。どん底」
「そっか。前から部活のこと、悩んでたよね」
 は、部長を務めているのだが、このところ部員をうまくまとめられず、たびたび周助にも愚痴をこぼしていたのだった。
 窓から吹き込む春風が、重苦しい空気をかき混ぜる。
 周助はいたわるように、の顔を覗き込んだ。
「もっと気楽にやればいいよ」
「・・・そんなこと・・・。周助は天才だから、私の気持ちなんて分からないでしょ・・・」
 あの青学テニス部で、名実共にNo.2。レギュラーとして活躍している彼にはこの苦労が分からない。
 気楽にやればなんて簡単に言うけれど、神様から与えられた能力をフルに発揮できる周助と、凡才・・・いやむしろ要領の悪い自分とでは、差がありすぎるのだ。
「そうだね。確かに、人のことは分からないね」
 ふてくされたの態度にも、いささかも気分を害したふうもなく、周助は相変わらずすぐ目の前で、やわらかく笑んでいる。
「・・・でも、が頑張りすぎちゃうところがある、ってことは知ってるよ」
 ふわり、再び一すじの風が吹き込むのを、今度はも感じていた。
「ほら、肩の力を抜いて」
 両の手を方に置かれて、びくり、ドキリとしてしまう。
 こんなに近い距離で、触れられたりしたら・・・。
「あれ、余計硬くなっちゃってるよ?」
「・・・誰のせいよー」
 もう、真っ赤。
 心臓の音は、こめかみにまで響く。窓からの風くらいじゃ、とても冷ましきれない。
「外に出ようか」
 ふわっと手を繋がれ、導かれるまま立ち上がる。
 夢心地のまま、部屋を出た。

 桜満開、春爛漫。
 風が吹くたび散ってゆく花びらは、儚いというより壮麗で、桜吹雪のただ中をそぞろ歩くの目を奪う。
「・・・すごい」
 思わずこぼれた感嘆に、周助は笑みを向けた。
 笑い返しながら、ずっとこのままだったらいいのに・・・とは思う。
 散る桜ごとこの時間を凍結して、周助と二人きりいられたら、どんなにか・・・。
 狂おしいほどの想いが、切ない。
 迫ってくるような桜の残像に、背筋が震えた。
 ここでいくら望んだとしても、周助は、前へ前へと進んでいってしまうのだろう。
 弱虫で何の力もない自分は、きっと、置いていかれる。
 立ち止まっているうちに、花霞の中、消えていってしまう・・・。
「ま・・・」
 待って、と言おうとして、声にならず。
 差し出した手はむなしく宙をかく。
 少し泣きたくなったそのとき、ぱたり落ちそうな手がすくい上げられた。
 触れる指先、見上げた先に、いつもの笑顔。
 優しい、笑顔・・・。
「置いていかないよ」
 心を読まれたかと、思った。
 そのまま軽く手を引かれ、二人ゆっくり歩き出す。
「一緒に行こう」
「・・・うん」
 さらり風に揺れる、周助の明るい色した髪を見上げる。の頬には笑みが戻り、朱みがさしていた。
 ピンクのトンネルをくぐって−。
 続く道は、二人の未来。
 時々休みながら、回り道しながら、たまに戻りながら。
(一緒に、歩いて行こうね・・・)
 いい匂いを胸いっぱいに吸い込むと、新しい気持ちで、前に進める勇気をもらえる気がした。




                                                             END



       ・あとがき・

とうとう読み始めましたよ、テニプリ!(遅すぎ・・・)
まだ14巻までだけどね。
今のところお気に入りは、不二くんと乾さんですねー。

テニプリはドリームでもかなりの人気ジャンルのようです。
あれだけ魅力的なキャラが揃っているんだものね。
私も初チャレンジしてみました。

どうしても桜の話を書きたかったのと、ずっと残業続きでぐったりの私は癒しを欲しかったので、不二くんでこんな話にしてみました。
中学生だし、ほのかな感じで・・・。
季節はズレてしまいました。

また、他のキャラで書ければいいですね。






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