ぽっかぽかの日曜日に、大好きな彼氏の部屋へお邪魔して。
一緒にガンプラ作ったり、マンガを読んだりゴロゴロしたり。
(・・・幸せ・・・)
あったかい気持ちで、は微笑んだ。
sweet liar
「・・・モアちゃんもタマちゃんも、来ない、よね・・・?」
もっとくっつきたくなると、いつも気になる、軍曹loveの二人のこと。
きょろきょろ辺りを見回し(そんな行為には何の意味もないけれど)、そーっと、寄り添ってみる。
と、ケロロも手を伸ばし、のほっぺにぺた、と触れた。
「・・・モア殿たちを邪険にするわけにはいかないから、こっそりつき合う感じになってしまって、スマナンダであります」
大きくてまん丸の、黒い瞳が、鏡みたいにの姿を映し出している。
このまま瞳の中に吸い込まれてしまいたい・・・とうっとりしているの顔が。
「でも、我輩の一番は、殿でありますから!」
「・・・うん、嬉しいわ」
笑うと、鏡の中の自分も素直に笑う。
ここには、心の奥底までは映らない−。
は、ケロロを疑っていた。
モアにもタママにも同じような甘言を囁いているのではないかと。
何となれば、この人は隊長。地球侵略に来ている宇宙人なのだ。目的のためになら、嘘くらい簡単につくのだろう。
アンゴル=モアは同盟関係にあるから。タママ二等兵は、言うまでもなく部下だから。
では自分は−。
ペコポン人だから。
いずれ侵略の際に利用しようと、心にもない言葉で懐柔しようとしているのかも知れない。
そう思ってみると、ケロロの真ん丸い眼は、真っ黒く底が知れず、体の芯にぞくり寒気が走るのだった。
(でも、それでもいいよ・・・)
だまされるよ。
優しくて甘い、心地の良い嘘に。
(だって好きだから・・・)
自分がケロロを好き、という、唯一絶対の気持ちの前では、嘘も瞞着も、ほんの小さなことに過ぎない。
「・・・殿・・・」
あんまり見つめられて、たまらなくなったケロロは目を閉じ、に口づける。
「もっと・・・して、軍曹」
ねだられてもう一度、軽いキスだけど、何度も。
「・・・ケロロ」
キスをしている間だけは、ケロロの心は真にこちらを向いている。
いくつあるのか分からない嘘の中で、少なくともそれだけは本当だと、は実感していた。
だから、キスが好き。
何度でも欲しがって、何度でもしてもらうと、幸せが何倍にも膨らんでゆく。
ガチャッ。
「おじさまー」
バッ! と離れる二人の不自然さには全く気付くふうもなく、お盆を手にしたモアは笑顔でとことこ部屋に進み入ってきた。
「さんも一緒に、お茶しましょう。てゆーか、和気藹々?」
「あ、ありがとう、モアちゃん」
「軍曹さんに近寄るなァァーー!!」
どこからともなく現れたタママに、思わずはちぢこまるが、なぜかタママはモアのことしか眼中にないらしく、血走った眼で威嚇している。
「タママさんも、どーぞ」
全然気にしていないモアにケーキを手渡され、甘そうな生クリームとスポンジに、タママの嫉妬心はすっかりそがれた。
「おいしーですぅ」
いつもの可愛いタママに戻ったその様子に、思わずも笑みこぼす。ふと視線に気付くと、ケロロがこちらを見つめていて、だけに分かるように笑ってみせてくれたのだった。
(・・・ケロロ)
胸を射抜かれたようで、その甘い痛みに、思わず下を向く。
−どんな嘘をついても、いいよ−
また、キスをくれるのなら。
END
・あとがき・
主役の登場。
ちょっと黒いケロロというのを書きたかったのですが、どーもこれはちゃんの思い過ごしのような・・・。
ケロロはただちゃんを好きなだけなのに、ちゃん深読みして、しかも自分で酔って浸っている感じです。
ま、それでも幸せだから、いいとしましょう・・・。
ケロロはモテるから、付き合うのは大変そうだね。
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