甘い闇の
が冥界で働き始めたその日の夜、三巨頭のひとりアイアコスに呼び出された。
早速お叱りだろうか、と緊張の面持ちで入っていったを、アイアコスは陽気に迎えて、ざっくばらんにこう言った。
「、俺お前のこと気に入ったんだ。俺と付き合えよ」
「え、でも」
面食らっての躊躇をどう解釈したのか、アイアコスは変わらぬ調子で続ける。
「彼氏でもいるのか? まあいたって別に関係ないけど」
「関係ないって・・・」
「アバラの2、3本も痛めつけてやれば手を引くだろ」
剣呑なことを楽しそうに言って指をポキポキ鳴らしている。は青くなった。
「い、いくら冥界の三巨頭といえどそれはあんまりでは」
「冗談だよ」
わざわざ痛めつける間でもない。は俺の方を選ぶに決まっている。
倣岸なまでの自信を隠そうともせず、小さく笑いながら腕に抱く。シャンプーのいい匂いに、満足げに目を閉じた。
は硬直して動けない。彼氏も好きな人も今はいないけれど、いきなりのこんな申し出・・・いや申し出というよりもほとんど命令だ・・・、聞けるわけはない。
きっと偉い人特有の戯れなのだろうけれど、偉い人だけに無下につっぱねることもできやしない。
対処に困り、ようやく蚊の鳴くような声を出した。
「私、まだ今日来たばかりで、アイアコス様のことも何も知りませんし・・・」
「これから知ればいい」
なんだそんなこと、といったふうで、拘束は緩まるどころかますます力が加わった。
「でっでも、付き合うといっても、好きか嫌いかもまだ・・・」
「だいじょうぶだ」
くい、と顔を上向かされ、目が合う。深い黒の・・・まるでこの冥界にとけ入りそうな髪と、そして瞳の色に魅入られる。
「今、お前は俺のことを好きになる」
空いた片手を伸ばし、アイアコスは照明のスイッチを切った。部屋は暗がりに沈み、慣れない目の前に漆黒の粒子が飛び交う。
それでもに怯えはなかった。ただ夢の中のような不安定な気分で、腕の中にいた。
「ほら・・・」
囁きが聞こえる。見えない場所から誘うように。
「お前はもう、俺のもの」
甘い闇のキスを−。
虜になる、そのまま横たえられても抗う気すら起こらない。
「アイアコス様・・・」
「様はいらない。呼び捨てでも略してでも好きなように呼べ」
熱を帯びた大きな手で触れられ、巧みに導かれて、声を上げる。
「言ったとおり、俺のこと好きになったろ?」
「・・・そうかも」
白旗を上げる気持ちで、は頷いた。
するとアイアコスは、嬉しそうに・・・それは嬉しそうに、キスをくれた。子供じみて、何度も何度もキスをくれた。
「遊びじゃないぞ。俺こう見えて一途なんだ」
多分本当の気持ちで告げて、また何度も軽いキスをする。体の色んな場所にもキスを散らして、反応を掴もうとする。
「アイアコス・・・」
闇そのものの彼の髪に触れ、彼の瞳を見つめた。
もう、恋に落ちてしまったことを、感じていた。
甘い闇のキスから始まるような。
そんな恋が、あってもいい。
・あとがき・
キスアンケートでアイアコスに二票入っているのですが、そのどちらのコメントも良かったのです。
・かわいく何度もチュッチュッて感じで(照)
・「お前はもう俺のもの」という囁きとともに、甘い闇のキスを・・・。
愛ですねー、ヒシヒシ愛を感じます。
特に「甘い闇のキス」というフレーズがいっぱつで気に入ってしまったので、即使わせてもらうこととしました!
何度もチュッチュッってのも、途中に入れさせてもらって。
短いですがこんなのもドキドキします。アイアコスは自信家で、ミロにも通じるものがありますが、ミロよりメチャクチャですね(笑)。ちょっと子供っぽいというか、自己中心的すぎるというか。そんなところも可愛いんですが。
最初はアイアコスがちゃんをいきなりさらってくる(「色の無い世界」のハーデスと同パターン)にしようと思ったんだけど、それだとちゃんパニックだろうし、説明や説得のシーンなんて書きたくなかったので、冥界で働く初日、ということにしました。ちゃん何して働くんでしょうね。雑用か秘書かな。
アイアコスドリームでこんなにエロじゃないのは初めてです! すごい、ある意味快挙!?
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