「真太、来たよー」
 ドアを開けて入ったとたん、ウイーンという音と一緒に足元に涼しい風が吹き付けてきて。
 のひらミニのスカートが、ふわあっと、まくれ上がった。


 
扇風機と催眠術


「いきなり何すんのよー! バカ真太!!」
 差し入れの詰まったコンビニ袋を投げつけてやるも、あっさりかわされた。
 の彼氏たる「バカ真太」は、しゃがみこんだ膝の上にスケッチブックを置いて、熱心に鉛筆を走らせている。そのかたわらには扇風機・・・ご丁寧に首を低く、上向きにセットされている・・・のスカートめくりの犯人たちだ。
 彼の鉛筆が描き出したのは、スカートから見えるパンツの絵。しかも、今まさにが穿いている下着の柄!
「一体何描いてんの、このヘンタイ!!」
 今度はハンドバッグを武器にして振り回す。だが、やにわ立ち上がった真太に手首を掴まれ、今回もダメージを与えることはかなわなかった。
「何って、パンチラだよ。人気獲るにゃパンチラ不可欠なんだよ」
 全然悪びれないどころか、不敵な笑みでを見下ろしている。手首は掴まれたまま、かなり近い距離だ、はついドキッとしてしまう。
「マンガ家になるのを応援するって言ったろ。これくらい協力しろよ」
「そりゃ言ったけど・・・」
 いつも、強引で自分勝手。
 こんな彼だからこそ、マンガ家になるという夢も力ずくでものにするんじゃないかと、つい信じさせられてしまう。
「じゃ、もうちょっと協力してもらおうか」
 手を離すと、真太は再びの足元に座り込んだ。
 スケッチブックと鉛筆を手にし、下から覗き込むようにしてくるので、は両手でスカートを押さえずにいられない。
「何だよ、見えねーだろ、手離せよ」
「だって・・・」
「俺のためだけじゃなくて、お前のためでもあるんだぞ」
「なんで私の・・・」
「マンガ家になれなかったら、田舎に帰らなきゃならねんだからよ」
 脅しのようでいて、存外真面目な、寂しげな表情を見せるから、もふと考えた。
 滅多に会えない遠距離恋愛、心変わり、別れ・・・
「・・・!」
 想像だけでも切ない。耐えられなくて、はぎゅっと目をつぶり、思い切って手を離した。
 彼に見られていると思うと・・・見られているだけではない、絵を描かれていると思うと、恥ずかしくて体が震える。
 いつしかも知らぬ間に、それらは甘い疼きに変わってゆく。
 もっと見て欲しい、もっと恥ずかしくして欲しい・・・。
「ちょっと、スカートめくって見せてくれねぇ?」
 真太としては殴りかかられるのも覚悟の上で、ふざけて言っただけだった。現に、いつでも避けられるように、かかとを浮かせている。
 だが、その言葉は、異様な羞恥に密かに昂ぶっていたの心身に、魔法のように染み入った。
 スカートの裾をつまんで、自分で引き上げてゆく。
 最初は少し驚いていた真太の、生ツバを飲み込む音に、気が遠くなりそう。
 まるで催眠術−。
、もういい」
 その声に、半分ホッとして半分ガッカリした。
 それも束の間、
「今度は、服脱げよ。脱衣シーンも描きたいからな」
 さすがにこれは悪ノリしすぎだ。
 夢から醒めた心地のが憮然としていると、真太は再び立ち上がり、さっきのように接近してきた。
「俺が手伝ってやるよ」
 囁きほどの低い声を耳もとに吹き込まれ、ゾクリとする。服や身体に触れてくる彼の手を、拒む気すら起こらない。
「最近は過激なくらいのが受けるんだよな」
 ニヤニヤして、まだそんなことを言っている。
 いきなりのキスがびっくりするくらい熱くて、思わず倒れそうになった身体は、真太の両腕にしっかり支えられた。
−もういいよ・・・好きにして−
 自分からもしがみつくと、インクやら鉛筆やらの混じった、真太の匂いがした。

 それから、数か月後。
 赤マルジャンプに初掲載された福田真太の力作を読み終えたの手は、怒りに震えていた。
「・・・何よ・・・最近は過激なくらいが受けるとか何とか言って・・・」
 とうとう名誉の赤マルジャンプは、凶器と化した。が真太に思い切り投げつけたのだ。
「あんなコトやそんなコトまでしておいて、全然そんなシーンないじゃないの!!」
 真太が軽くよけたので、ジャンプは壁に当たって落ちた。
(もしかして、マンガのためだって最後まで信じてたのかよ・・・)
 単純なのか天然なのか。そんながやっぱりカワイイ、と思うと、また本能が暴走し始める。
「じゃ、次のマンガに使うからさー」
「もうダメ! だまされないっ!」
 でもすでに彼の腕の中につかまっていて、逃げられない。
 形だけの抵抗を続けながらも、口づけや触れ合う感触でとろかされてゆく過程を、も本当は楽しんでいる。
は俺だけのモンだ。他のヤツにいい思いなんて、させるかよ」
 例え読者であっても。
 少しくすぐったくて笑って、は、自分からとっておきのキスをあげた。



                                                             END



       ・あとがき・

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8巻を読んだとき、石沢と蒼樹さんのカットがやたらやらしかったので、何かこんな感じでドリームをと考えました。
ちゃんをモデルにパンチラ研究の福田くん。
実は彼がパンチラうまくなったのは、このおかげだったりして





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