世界の全てがLになる
春うらら。
晴れやかな表情のは、卒業証書を胸に、級友たちと学び舎を飛び出した。
「大学行っても仲良くしてよね!」
「当たり前じゃん、友達だよずっと」
国立の大学に進学を決めたは、友達とも離れ離れになる。
それは寂しいことだけれど、明確な将来のビジョンに向かって進むの瞳には、曇りも迷いもなかった。
その瞳が、校門の前にすーっと止まったリムジンをとらえた。心臓が跳ね上がり、自然に顔がほころぶ。
「・・・私、先行くね。メールするから。また会おうねみんな!」
駆け出すを、友人たちは口々に呼び止める。
「ちょっと待ってよ」
「どうしたの急に」
「−彼氏が迎えに来てくれたの!」
は足を止めもせず、最高の笑顔を咲かせ、行ってしまった。
「ちょっとあれ・・・すごい車」
「の彼氏って、あんなの乗ってるの・・・?」
は後部ドアを開けて乗り込み、そのままリムジンは走り去ってしまう。
その後、友人たちの興奮気味な噂が、想像上の「の彼氏」を作り上げていったのは言うまでもない。
「卒業おめでとう、」
いつもの格好で座っている彼に、笑顔で返した。
以前、同じように学校へリムジンで乗りつけられたときには、困り顔を見せていたも、今日は素直に「ありがとう」と言える。
「迎えに来てくれるなんて思ってなかったから・・・嬉しい」
「少し驚かせようと思いまして。もし時間を取れるなら、このままホテルに行きませんか。お祝いをしてあげたいんです」
ホテルと言っても、変な意味ではない。
彼は仕事柄、ホテルを転々としているのだ。それも最高級スイートルームで、もよく学校帰りや休みの日には遊びに行っていた。
この人一体何をしている人なんだろう・・・とはずっと疑問に思っていたが、その答えは、が進路を決める時期にさしかかったとき、竜崎自身が明らかにしてくれた。
自分は「L」ほか多くの名を持つ、いわば世界最高峰の探偵なのだと。
驚くに、彼はこう続けたのだった。
「高校を卒業したら、私のもとで働きませんか。こんな仕事ですから、住み込みになりますが・・・」
それは無論、にとって魅力的な申し出に他ならない。しかし、考える時間をたっぷりもらった後、が出した答えは、大学進学だった。
Lの役に立てるよう、もっと勉強したい。視野も広げたい。住み込みで働くのは、少なくとも大学卒業後にしたいのだと。
Lは「あなたが決めたことなら」と頷き、勉強を手伝ってもくれた。
第一志望の大学に合格できたのは、彼のおかげといってもいい。
今、Lの隣にいて、は胸がいっぱいだった。
「わぁ・・・」
ホテルのリビングルームに一歩入って、は感嘆の声を上げる。
きらきらしい光の差し込む窓辺に、白いテーブルと椅子がしつらえてある。小さめのテーブルには色とりどりの花とフルーツのかご、それにシャンパンが準備されていた。
「乾杯しましょう」
手際よく栓を抜き、二つのグラスに注ぎ分ける。
「わーい。なんだか一気に大人になった気分」
にこにこして椅子にかける。グラスの中で、小さな泡がいくつもはじけていた。
Lは差し向かいに座り(もちろん例のポーズで)、手前のグラスを目の高さまで掲げた。も倣う。
「乾杯」
淡いゴールドの液体を、一口、流し入れた。
「・・・・・−」
くらり・・・。
意識が、揺れて。
グラスが、手から離れる。
カシャン・・・割れる音も、随分遠い・・・。
「りゅうざき・・・さん・・・」
視点がぐるんと回って・・・。
床に倒れこんだの体を、Lの両腕が支えた。
「・・・」
声をかけても反応はない。ぐったりと目を閉じているを、Lは表情なく見下ろしていた。
「ワタリ、やってくれ」
声は冷然と響いた。
遠くなったり近くなったりしながら、徐々に覚醒に近づいてゆく。
ぐるぐるして、気持ちが悪い・・・という自覚で、意識のピントが合った。
「・・・・・」
くらくらがおさまるのを待ってから、目を開ける。
霞がかったようにボンヤリする頭を押さえ、左右を見回した。
さっきとは別の・・・ずっと狭い・・・でもここも、ホテルの一室・・・?
ゆっくりと、起き上がる。ベッドの上に寝かされていたようだ。
右足首に違和感を覚え、目をやると、見慣れないもの・・・金属製の、輪っか・・・?
「・・・・?」
更に見ると、輪っかには鎖がくっついているではないか。
手で持ち上げると、ちゃら・・・と鳴った。これはまるで、囚人のような・・・。
ベッドの下まで続いている鎖の先を辿りながら、の頭の中は疑問符でいっぱいだった。
ゆっくり起き上がって、足首の枷に気付く。
そんなの様子は、逐一、Lの正面に据え付けられたモニターに映し出されていた。
「目覚めたか・・・」
ノートパソコンから目を上げ、モニターの中にいる愛しい人をしばし眺めると、Lは鷹揚に立ち上がった。
鎖を引っ張ってみたり、ベッドから下りて動いてみたり。
その末分かったのは、ここはどうやらホテルのシングルルームであるらしいこと、右足首に繋がった鎖は、の力では外せそうにもないこと、ある程度の長さはあり、バスルームには行けるが、廊下に続くドアにはとても手が届かないこと・・・などだった。
(どうして・・・竜崎さん・・・)
不安の影が、色濃く降りてくる。
「竜崎さん・・・竜崎さん!!」
泣きそうになりながら恋人の名を呼ぶと、やがて応えるようにドアが開いた。
「竜崎・・・さん」
「どうしました、気に入りませんか」
足枷を目で示す。
右手に瓶・・・さっきのシャンパンだ・・・と、左手にグラスを握っていた。
「何・・・何なの・・・」
「何って・・・あなたの卒業祝いですよ」
グラスに無造作に注ぎ入れ、自分であおる。そうしてからの腕を引くと、乱暴に口づけた。
「ん・・・」
口内に流れ込んでくる冷たい液体を、反射的に飲み下してしまう。
唇を離されると、手で口もとをぬぐった。
「・・・大丈夫です今度は何も入れていません」
「さっきのシャンパンに、何か・・・」
それで急に意識を失ったのか・・・。
何も入っていないとはいえ、アルコールに慣れない体、くらっとしてベッドわきに座り込んでしまう。
「どうして、こんなことするの・・・」
「分かりませんか」
両手を床について、顔を上げられないの正面に、Lは両膝を立てしゃがみこんだ。
「私はね耐えられないんですよ。高校ですら心配で仕方なかった・・・まして大学なんて・・・私の知らないところで多くの人間に出会い、世界を知っていくなんて・・・・」
「・・・・何を、言ってるの・・・・」
声が震えた。
血の気の引いてゆくのが、自分で分かる。
「あなたが進路をどうしようと、そばにいてもらうつもりでした。だから私の正体を明かしもした・・・」
大学に行く、と決めたときの「頑張ってください」と励ましてくれた・・・勉強を教えてくれた・・・あれは全部、演技だった・・・?
「入学は取り消しておきましたし、あなたの家にも話はつけてあります。警察沙汰にはなりませんから、安心してください」
いや、安心できる話ではない。
しゃあしゃあと言うLの声を聞いているうち、の思考もようやく再開した。
「ひどい・・・勝手にそんなの・・・あんまりだ・・・」
それでも顔は上げられない。この人がどんな表情でこっちを見ているのか・・・知るのが怖くて。
「あなたを、愛しているんですよ・・・これほどまでに」
柔らかな頬に手を添える。
「私が愛したあなたの・・・いわば宿命ですこれは」
指先で顎を軽く持ち上げ、目を合わせた。
言動の異常さに似つかわしくない無表情に、かえってはゾッとする。まるでいつもと変わりない・・・これが狂った瞳をしているというなら、まだ理解もたやすいだろうに。
「りゅうざ・・・」
名を呼ぶ声が、相手の唇にせき止められる。
侵入してくる舌・・・以前一度だけされた、「大人のキス」・・・。
恐怖と驚きにこわばる身体を、きつく抱きしめられた。
されるがまま口腔への凌辱を許し、慣れないそれに、再び意識が遠くなりがかる。
涙が、頬を濡らした。
「何故、泣くんです」
ようやく唇を解放し、いつの間にか脱がしていた制服のブレザーをぱさりと床に落とす。
胸元のリボンに手をかけながら、頬に舌を這わした。涙をなぞるように。
「あなたの望みだったはずでしょう・・・私にこうして抱かれることは」
器用な手つきで、リボンと一番上のボタンを外してゆく。
「でも私・・・っ、こんなつもりじゃ・・・」
か細い声で始まった抵抗が、はっきりとした形を持った。
は両腕を突っ張って、Lの体を遠ざけようとした。
「こんなのじゃ嫌・・・こんなことされて、好きでいられるわけないじゃない・・・!」
「−!」
ビリ・・・ッ!
布を引き裂く鋭い音が、狭い室内に絶望的に響く。
はあらわになった胸元を両手でかばい、ベッドの側面に肩をつけるようによりかかった。
破いたブラウスの切れ端を手にしたまま、Lはその羞恥と怯えに小さくなっている姿を、じっと見ていた。どうしようもなく刺激される征服欲は、隠せもしない。
「・・・今度私を遠ざけようとしたら、手も縛りますよ」
胸を隠す手を、片方掴み上げた。白いブラウスの破れ目から、シンプルな下着がのぞいている。
「竜崎さん・・・どうして・・・」
いつも優しくしてくれた・・・あれも全部、嘘だったの・・・?
「自分の立場をまだ分かってないようですね」
もう片方の手も掴み上げる。
「いいですよ、これからゆっくり分からせてあげます」
震えているに、もう一度キスをした。
ベッドに押し付けるようにして、破れたブラウスの隙間から、白い柔肌に口づけてゆく。
「私なしでは生きていけない体にしてあげます」
「・・・りゅうざき・・・さん・・・」
「まだ、泣くんですね・・・」
新たな涙も吸ってあげる。
「こんなに怯えて・・・可哀想に」
なぶるように、頬を首筋をぺろり舐めてやる。
「処女を失うのは怖いですか、」
「・・・・」
違う。
あなたが、怖い。
しかし口には出せない。そんなことを言ったら、何をされるか・・・。
「・・・少し脅かしすぎたようです・・・」
そっと離れて、Lは自分の服をいきなり脱いだ。ビクッとして、ますます身を引こうとするの頭から、その白い無地Tシャツをかぶせてやる。
促されるまま袖を通すと、ぶかぶかのそれは温かくて、Lのにおいがした。
「私はあなたを愛していますから・・・」
抱き上げてベッドに移す。
「あなたが自分から抱いて欲しいと言うまで、私は我慢しましょう。・・・これまで通り」
そう言うLは、いつもの淡々としているけれど優しい竜崎さんだった。
上から毛布をかけられて、は、子供のころ風邪をひいたときのことを思い出していた。
「じゃあ・・・ここから出して・・・」
「何度も同じことを言わせないでください」
床に両膝立てて座る。親指をくわえ、を上目遣いに見た。
は、そのLの肩の辺りを、見るともなしに見ていた。骨っぽくて、細い・・・細すぎる。
「私に抱かれればいい、。それが、私に全てを捧げるときです」
「・・・でも・・・」
「決心がつくまで、ここにいてください。バスルームは自由に使えますし、食事もきちんとあげますから」
「待ってよ竜崎さん・・・どっちにしても、私に自由はないってこと・・・?」
Lのそばを離れず働くか、ここに閉じ込められるか。あまり差のない二択に思える。
「・・・さあ」
Lは音もなく立ち上がり、を見下ろした。
無表情で怖くて、やっぱりガリガリの体をしている。
「あなたが拒み続けていれば、私ももしかしたら諦めるかもしれません。そのときには自由にしてあげますし、大学にも行けるよう手配してあげましょう」
(もしかしたら・・・かもしれない、って)
ひとつも断定がないのが気になる。
不安そうに見つめる先で、Lは少し笑った・・・ような気がした。
ぺたぺたと、ドアに向かって歩きながら、
「言い忘れましたが、この部屋にはカメラとマイクをつけていますから。言動には気をつけてください」
ついでのように言い置いて、出て行ってしまった。
(・・・・・・)
ベッドに横たわったまま、部屋中に目を走らせる。
カメラはすぐに見つかった。天井の隅に、あからさまに設置してあるのだ。
背を向けるように壁の方を向き、丸くなる。
とんでもないことになってしまった・・・と思うのに、Lの匂いに包まれているのが、なぜか嬉しくて、そんな自分が不思議だった。
(・・・たいくつ・・・)
Lにとらえられてから正味一日も経っていないというのに、はもうヒマで仕方なくなっていた。
何しろこの部屋ときたら、テレビはおろか本もゲームも、要するに退屈しのぎになりそうなものは何一つないのだ。窓も開かないため外も見られないし、紙もえんぴつの一本もない。
考えるだけ考えたから、もう考えることも一休みしていた。堂々巡りで埒が明かないのだ。
眠るのも限度があるし、ごはんにかける時間だってたかが知れている。
の膨大なエネルギーは、くすぶり続けるままだった。
「竜崎さん」
たまらず、カメラに向かって名を呼ぶ。
「聞こえてるんでしょ竜崎さん。暇なの。本か何かちょうだい」
返事は、ない。
は鎖を鳴らしながら、ベッドに倒れこんだ。
その様子を、Lはモニター越しにちゃんと見ていた。無論、の訴えもちゃんと聞こえている。
だが本なんて与えるわけにはいかない。
退屈でなければならない。
(・・・私のことを考えるしか、なくなる・・・)
頭の中胸の中、いっぱいになればいい。
の全てが自分に染まって・・・一生の呪縛となる。
そう導くための監禁だ。
力で奪うのは、たやすい。だが恐怖で押さえつけるのは本意ではなかった。
(望めば、すぐにでも・・・)
こんな生活、長くは続かないことも、その結果すらも。Lには見えている。
親指をくわえたまま、画面を眺めていた。
次の日、昼食をとってしばらくしたころ、Lがトレイを手にやってきた。
「今日は特別に私がおやつをあげます」
「あ、ケーキ」
テーブルに置かれたショートケーキに目を輝かせる。
やっぱりはで、そんな様子はLをひそかに喜ばせた。
フォークでケーキを切り、の口もとに持ってゆく。
「どうぞ」
「自分で食べるよ・・・」
「私があげるのだと言ったでしょう」
「・・・」
逆らえず、口を開ける。
ぱくっ、と食べると、甘くてふわふわで、夢のような味がした。
娯楽の極端に少ない生活の中、思いがけない幸せを精一杯享受するように、よくよく味わって飲み込む。
「・・・・・」
二口目を入れてやったとき、口の端に生クリームがついてしまった。ためらわず、Lは舌で舐め取る。そのまま離れずに、今度はキスをした。
ついばむ軽いキスから、徐々に濃度を増してゆき、まだ慣れないを少しずつとろかしてゆく。
「・・・ぁ・・・」
極上の甘さで、吐息にも蜜が混じる。
いつの間にか、Lの体にしっかりとしがみついていた。
「愛していますよ、」
左耳に囁き入れる。じかに、息と一緒に。
「早く私のものになってください」
どこか切なげで、寂しそうな声に、は一瞬、自分が悪いような錯覚に陥って、ぶんぶん首を振る。
理不尽に縛り付けているのは、彼の方ではないか。
だまされてはいけない。
ケーキを全部食べさせてくれると、Lはあっさりと立ち上がった。
「どうしました、」
じっとこちらを見ている彼女に、そ知らぬふりで声がけする。
「言いたいことがあるならハッキリ言ってください」
「・・・・・・」
言えない・・・。
さっきのキスが、唇の上で疼いているなんて。
もっとして欲しいなんて・・・。
「では」
トレイを手に、さっさと出てゆく。
もちろんこれも計算ずくの行動だ。
再び一人にされて、まだ熱の残る唇に指で触れる。敏感になっているせいか、ゾクッとした。
緩慢な動作で立ち上がると、鎖をじゃらじゃら言わせながらバスルームに向かった。
シャワーを肌に当て、大きく息を吐く。
何とはなしに秘所に手を伸ばす・・・濡れていた。
(やだ私・・・いやらしい・・・)
そう思うも、手は止められない。
バスルームの壁にもたれ立ったまま、弄り始める。
さっきのキスを、思い出していた。
それから、昨日のこと。Lの上半身・・・ブラウスを破られ、胸元に口づけられたことも・・・。「手も縛りますよ」などと言われたことまでが。
思い返すだけで、興奮してくる。
(・・・っ竜崎・・・さんっ・・・竜崎さん!)
それから2、3日、もはやぐったりと何をする気も起きないのもとへ、なかなかLは姿を見せなかった。
(竜崎さん、今日も来てくれないのかな・・・仕事忙しいんだろうけど・・・それにしても、5分や10分、顔を見せてくれたって・・・)
自由を奪った男を待ち望んでいるという皮肉な事実に、自身気付いていない。
今や、意識も思考も、ただ一点にのみ集中していた。
それこそが、Lのもくろみとも知らずに。
『』
ハッと顔を上げる。
カメラの横についた小さなスピーカーからの声だと気付き、それでも喜色を隠せない。
「竜崎さん」
『しばらくそちらには行けませんが・・・その代わり、今日はあなたの自慰を見てあげましょう』
「・・・じい?」
意味をつかめず小首をかしげるに、相変わらずの感情を汲めない声が浴びせられる。
『自分でしてみせてください、そこで。バスルームでしていたように』
「・・・!?」
カアッと、全身が熱くなった。
『み・・・見てた・・・の・・・』
顔を上げられないの、耳まで赤くなっている様子がいとおしい。
Lは薄皮まんじゅうを頬張りながら、モニターを眺めていた。
本当は、見ていたわけじゃない。バスルームにまでカメラを付けてはいないのだから。
ただカマをかけただけなのに。
反応を面白がったLは、このまま続けることにした。
「一度見られたんだから、いいでしょう。・・・して見せてください」
「・・・・・」
恥ずかしい。消えちゃいたいくらいに恥ずかしい。
なのには拒否できなかった。
従うことが、骨の髄まで染み付いてしまったかのように。
『ベッドに座って・・・脚を開くんです。それじゃ見えませんよ、もっと大きく』
命令通りに・・・勝手に体が動く。
はLの服をそのまま借りて、ワンピースのようにして着ていた。下着も、ブラしか着けていない。
だから、ベッドで脚を広げただけで、そこがあらわになってしまう・・・。
の、まだ誰にも触れられたことのない体を、Lはカメラ越しに見つめていた。
全てが自分のものになる−それも、ごく近いうちに−と、分かってはいても、ゾクゾクする眺めだ。
「弄って見せてください。・・・そんなものじゃないでしょう、バスルームでしていたように・・・」
『いっやぁん竜崎さん・・・」
いつの間に覚えたか、艶っぽい声を出して、ためらいがちにだが指を使い始める。
「濡れてきましたか・・・? 教えてください」
『・・・うん・・・。濡れて、きちゃった・・・』
「音が・・・聞こえますよ」
くちゃくちゃ、いやらしくかき回す音を、マイクが拾ってLに届ける。
Lはそれを聞きながら、ほとんど無意識のうち、自分の下身に手を伸ばしていた。
「は、どんなことを考えて、一人でするんですか・・・?」
『・・・・』
「言ってください」
ひどく卑猥な画を見つめながら、Lもゆっくり、手を動かす。当然それは、硬度を持っていた。
『言ってください・・・』
促されては、口を開く。
荒い息に紛らすように、小さな声で答えた。
「竜崎さんの・・・こと・・・、考えて、してた・・・」
そして今も。
あのカメラの向こうにある、彼の目を感じながら、高まってゆく。
『・・・嬉しいですね・・・』
Lの声にも、息が混じっていることに、辛うじて気付いていた。
『私もいつも、のことばかり思って、してます・・・』
いつも・・・だって・・・。
(竜崎さんも、こーゆーこと、するの・・・?)
想像したこともなかったが、想像してみたらまた感じてしまう。
「は・・・あッ・・」
経験のないは、感度もまだまだのようで、なかなか達しようとしない。
目を閉じ一心に弄り続けるその姿に、Lの方が先に行きついてしまった。
(・・・・!)
出してしまうと放心状態で、また画面を眺める。
・・・早く、自分のこの手で口で、に快楽を与えてやりたい。
心も体も、全てを支配するために。
(・・・・)
あんな姿を見せてしまって・・・。
その瞬間は夢中だったというか、勝手に体が動いて、気がついたらあんなことをしていたというか・・・。
今になって恥ずかしい。もう穴を探して入り込みたいほど恥ずかしい。
もうお嫁に行けない、というフレーズが、頭の中をぐるぐる回って、ついには自嘲ぎみに笑った。
(竜崎さんの言うとおりに、するしかないのかな・・・)
抵抗も疲れた。だんだん、どうでも良くなってきた。
分かっている。受け入れたとき、自分の考えや行動は制限され制御されてしまう。
もう、望むような生活には戻れない。
・・・それでも・・・。
「竜崎さん」
カメラに向かい、声をかけた。
なぜだかひどく、甘美な気持ちだった。
(・・・まあこんなものか、・・・)
Lは食べかけのクレープもそのままに、立ち上がった。
すぐにやってきたLの抱擁を、全身で受ける。
「本当に、いいんですね」
「・・・最初から選択肢なんてなかったじゃない」
多分、この人に見初められた瞬間から。
「・・・あなたのものに、なる・・・」
「そう言ってくれるのを、待ってました」
優しく優しく髪を撫で、そっと、足枷を外してやる。
そのまま抱き上げ部屋を出た。
「いやだ竜崎さん、誰かに見られたら・・・」
「騒ぎさえしなければ大丈夫です」
エレベーターに乗り込み、到着したのは最初のスイートルーム。
誰の目にも触れなかったことを安堵しているを、ベッドへ降ろした。
「いっ今、するの・・・?」
「当然でしょう」
触れてキスをし服を取り去る。
腕の中、はハッキリと知った。
何かを・・・例えば自由や幅広い人間関係・・・そういったものと引き換えに、Lの愛を得るのだと。
それが、今の自分の望みでもあるのだと。
色んなものを奪われて、その代わりに、心も体もLの愛でいっぱいにされる。それを喜びとしている自分がいる。
「竜崎・・・さん」
初めて触れられるのに、たっぷりと潤って、受け入れる。
痛みすら誓いのためと刻み、爪を立てるほど強くしがみついた。
「ずっと・・・一緒です、」
「・・・うん・・・」
半ば上の空でも、言葉のひとつひとつが、全身に染み入るようになっていた。
いつの間にか、そういう体にさせられていた。
そうして・・・。
世界の全てが、Lになる。
END
・あとがき・
「ボーダーライン」の続き、「スーツ」の別バージョンドリームです。
「スーツ」で、「もし彼女が受け入れてくれなかったら・・・」と想像したLの行動を書いてみました。
裏にするかギリギリでしたが、ムリヤリではあってもやはり根底に愛はあるかな? ということで、そのままオモテに放置してみます。
監禁モノとしてはヌルいですけどね。何しろちゃん、Lに惚れて今まで付き合ってきたという経緯がありますから。
話の流れをネタメモに書き落としているときにぽんと出てきた言葉を「いいな」と思い、そのままタイトルに持ってきました。
「世界の中心でLをさけぶ」というのもありましたけど(笑)。
ちゃんの世界はこれからLだけになるということで。そういうふうにしつけられてしまいましたので・・・(笑)。
そのうちまた別バージョンでも捕らえられたお姫様を書きたいですね。そういうの大好きなんですよ!
でもホントに監禁しちゃうと犯罪ですからね。良い子はマネしないように!
こういうのって、妄想で楽しむのがいいんですよね。
この小説が気に入ってもらえたなら、是非拍手や投票をお願いします! 何より励みになります。
↓
web拍手を送る ひとこと感想いただけたら嬉しいです。(「世界の全てが」と入れてくださいね)
お好きなドリーム小説ランキング コメントなどいただけたら励みになります!
戻る
「DEATH NOTEドリーム小説」へ
H18.9.17
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||