聖夜に恋の贈り物
12月24日の深夜、とくれば、世界的に有名なあのおじいさんの活動時間である。
何しろ世界中の子供たちの家を訪問しなきゃいけないんだから、大変だ。きっと手一杯で、この人のところまでは来てくれないだろうな・・・。そう思ったは、こっそりニアの寝室に忍び込んだ。
(ふっふっふっよく寝てる・・・)
ベッドの中丸くなっているニアの、白いパジャマに包まれた背中を見てニヤけてしまう。
手にした袋から、プレゼントを取り出そうとゴソゴソやっていたら、
「・・・何してるんですか」
半分眠そうな声に、びくんとする。ベッドの上もぞもぞと、白いかたまりが動いた。
「・・・」
指で髪をいじりながら、闇を透かして見つめている。その大きな目に、胸が締め付けられた。
「お・・・起こしちゃった・・・?」
「こんな夜中に・・・」
「だって今日はクリスマスイヴじゃない」
部屋の真ん中に堂々と飾られたツリーを、目で示す。
ニア自ら飾り付けをしたのであろうそれには、一般的なオーナメントの他にたくさんのオモチャたちがぶら下げられていて、何もこれ以上プレゼントなんて必要ないじゃないかと思わせるような豪華さだ。
「私がニアのサンタさんになってあげようと思って。ホラ」
リボンをかけた小さな箱を取り出すが、ニアはにこりともせずに髪をくるくるいじり続けている。
「・・・サンタクロースというより、夜這いにしか私には思えないのですが」
「よっよばいって何言ってんの!?」
つい声が上ずってしまった。
そりゃニアのことは好きだけど・・・でも一言もそう告げたことなどないし、彼が自分のことをどう思っているのかも分からない現状で、そんな単語はどぎつすぎる。
一人真っ赤になって硬直しているの前で、下を向き、ニアは淡々と言う。
「だってそうでしょう。男の寝室に、夜、忍んでくるなんて・・・」
「わっ私はただ、プレゼントを置きに・・・」
「私は大人ですよ」
きっぱり宣言されても、日々の言動を見ているに対し説得力はない。
でも、笑い飛ばすことはおろか、は相変わらず動けなかった。
動けないを、ニアは丸まった格好のまま、いっしんに見上げていた。
「・・・欲しいものなら、あります」
明かりのひとつもない暗がりの中、ニアの瞳の奥で何かが光った・・・ような気がした。
「あなたがそれをくれるなら、私は喜んで、もらいますよ」
「そ、それって・・・」
「言わなきゃ分かりませんか」
卒倒しそうだ、もう。
彼を直視なんてしていられないのに、目を離すこともできず、は闇と熱の中で、くらくらするのを必死で耐えていた。
「・・・ここに、来てください」
あくまで自分では動かず、目の前を・・・ベッドの空いた部分を指差す。
引き寄せられるように、は足を進めた。まるで意思など介在しないかのごとくに。
実際、気付いたときにはニアのすぐ前にぺたんと座っているような状態で、は少なからず驚いた。
「・・・ください」
ニアの姿が、さっきよりくっきりしている。
やけに冴え冴えとした髪と、肌の色。そしてやはりその眼に、は見とれた。
「早く・・・、ください」
重ねて求められれば、気持ちのままに、更に近寄って。
唇に唇で、軽く、触れた。
ニアの体温は思ったよりも高かった。瞬間的に電流が走ったように痺れてしまい、すぐに離してしまう。
「・・・もっと・・・」
袖を引いてねだってくる、子供じみた所作が、の母性本能を刺激した。
決して外見のような可愛い人じゃないって、分かっているのに。
クリスマスイヴの今夜、甘く包み込んであげたい。そんな思いのまま、今度はもう少し長く口づける。触れるだけのキスではあったけれど、全身震えるくらい感じていた。
「ニア・・・」
相変わらず髪ばかりいじって、彼の方からは指一本触れようともしない。
「あなたがくれる以上のものを求めたりはしません・・・今夜は」
少し疼いてじれったいに対し、そんなことを言って、にいっと笑う。今やすっかり目も慣れて、微細な表情まで見て取れるのだった。・・・自分の望む方向に誘導し、うまくいったという、そのしたり顔。
「の気持ちも分かりましたし、クリスマスプレゼントとしては悪くない・・・いえ最高です」
「・・・何となく悔しいんだけど」
そんなつもりもなかったのに、告白してしまった・・・いや、させられてしまったようで。
「いいじゃないですか。私だってのことは憎からず思っているんですから」
しれっとしてるけど、どの程度の「憎からず」なものか。
ちょっと口を尖らしているの頭に、ぽんと手を載せて。
ニアはまるで慰めるような優しさで言葉を添える。
「もっと分かり合いたいと思っているんです。だから、これからはそばにいてください」
ちょっぴり分かりにくいけれど、紛れもないOKサインに、嬉しいというよりびっくりしてしまう。
これはつまり、付き合ってくれるということ・・・ニアが、色恋沙汰にはまるで興味がないって顔して、に対する態度も常にクールだったニアが、・・・本当に・・・?
抱き締めてもキスしてくれもしなかったけれど、はにかんだ笑顔は何よりの裏付けで、を今更ながらドキドキさせるのだった。
(イヴに想いが通じるなんて・・・、素敵)
最高のクリスマスだ、の人生の中でも。
二人、微笑みで約束を交わせば、来年への広がりが見えてくる。
カーテンに遮られ閉ざされた窓の向こう、星たちに彩られた夜空を、今もサンタさんは忙しく駆け巡っているのだろう。
ソリからこぼれる光の粉が、きらきらとした恋の魔法となって降り注ぎ、二人を幸せに包み込む。
「メリー・クリスマス!」
ちなみに、元々がニアに贈る予定だった超難解3Dパズルは、彼の手によりものの数十秒で解かれてしまった。
END
あとがき
クリスマス話をもう一つ。
ツリーを飾っていた姿が印象的だったニアの、短い話にしようと思いました。
なんだかニアは、恋人設定よりも、身近な女の子と初めて気持ちが通じ合う話が多いですね。今回もそうです。
ちゃんとしては、こっそりプレゼントを置いていくつもりだったのに、あっさり見つかって告白するように仕向けられて(?)しまいました。二人の仲が進展したんだから良かったね。思わぬクリスマスプレゼント。
最初はいつもの勢いで、そのまま押し倒され云々…って風に書いてたんだけど、安易すぎるなと思い、「これから互いを知りたい」というように変えました。これで良かったと、自分では満足です。
来年のクリスマスは、ニアとちゃん、ラブラブですねっ!
24日ギリギリにアップとなりました。間に合って良かった。
タイトル、今回も最後につけましたが、「クリスマス」というのと「恋」を入れたくて考えてみました。「恋するサンタ」なんかも候補だったんですけど。
毎度のことながら、ワザもヒネリもないですね(笑)。
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