外は未だ雨の降り止まぬ、陰湿な天気。
 本来仕事をするべき時間に、仕事をするべき執務室で。
「・・・やめてください、隊長・・・」
「ごめんなぁ、やめられへんわ」
 は、自分の上司に、襲われていた。


 パワハラ


 は、今年ようやく護廷十三隊に入ることが出来、三番隊に配属された。
 憧れののもとではなくても、焦がれてやまなかった護廷十三隊の一員となれたのは大きな喜びに変わりはない。張り切って務めを始めてはや数か月。ようやく慣れてきたと思い始めた今日この頃だった。
 さて今日は、珍しいことではあったが、隊長に渡して欲しいと書類を頼まれ、執務室を訪れた。声をかけノックをしても返事がないので戸を開けてみると、三番隊隊長の市丸ギンは、執務机の前に布団を敷いて昼寝していた。
 サボり癖があるとは聞いていたが、ここまでとは・・・。
 布団のそばに屈みこみ、呆れ戸惑うは、突然ギンに腕を引かれ、力ずくで布団に引き入れられた。眠っていると思ってすっかり油断していた・・・何しろ、起きていても眠っていても同じような目をしているものだから・・・。
「おっ重いです隊長、どいてくださいますか」
「いややぁ」
 子供みたいな口調で答える市丸隊長の顔が、すごく近い。こんな至近距離はもちろん初めてで、ついじっと見ながら隊長ってお肌が綺麗だなと思っていると、ぎゅっと、抱きすくめられた。
「苦しいっ・・・」
 何を・・・まさか、でも今は平日の昼間、そしてここは執務室だ。いくら何でも、そんな間違いが起こるはずはない。
 悪い冗談、そうに違いない・・・。
 隊長の手が伸びてきて、死覇装越しに胸を揉まれたとき、戯れの域を超えているとようやく気が付いた。それと同時に、唇をキスで塞がれる。
 気の遠くなるほど長くて深い口づけに、心身の力という力を全て抜き取られるようだった。
「・・・ウチの隊に入ってきたときから、ええなあって思うて・・・狙っとったんや」
 耳元に吹き込まれる甘言、とても信じられるものではない。
 席次すら与えられてはいない一兵卒に過ぎぬものを・・・しかも今まで一対一で顔を合わせる機会すらなかったのだ、自分のことなど覚えられているはずはない。
 とうとう、帯にかけられた手を、は精一杯とどめた。
「もうこれ以上は・・・」
 市丸隊長は、見る限り優しそうだったし、無論その強さを尊敬してもいた。だが一筋であるため、そういう対象として思ってみたことはなかった。
「大人しゅうしとき。死覇装をズタズタにされたくはないやろ」
 決して、すごまれたわけではないのに。の背筋に、ゾクリとしたものが走る。そういえば同期で仲良しのルキアは、市丸隊長のことを実はちょっぴり苦手なのだと、こぼしていたっけ・・・。
「市丸隊長・・・っ、こういうの、パワハラって言うんですよ・・・」
 隊長という立場を利用していいように扱うなんて・・・。にも尊厳というものがあるのに。
 蚊の鳴くような抗議も、笑って受け流し、ギンは帯をしゅるりと解いた。
「そやな、地位でも権力でも何でも利用したるわ・・・キミを手に入れられるんやったら」
 また、すました顔して調子のいいことばっかり・・・。
 の心を読んだかのように、ギンは声に少しだけ、寂しさを添えた。
「それにも、隊長やって理由だけで、ボクの言うこと信じてくれへん。おあいこや」
「・・・・・」
 名前を知ってくれていた・・・? 反射的に顔を上げるが、同時に隊長が死覇装の合わせを開き、胸に顔を埋めてきたので、またすぐ頭を枕の上に落としてしまう。
「いやあっ・・・」
 湿度の高さが、執務室にこもった空気を濃くしている。隊長の体温や肌の感触と相容れない、紙とインクの『仕事のにおい』が鼻につき、激しい背徳感となってをさいなむのだった。
 そのとき。
『隊長、入ります』
 生真面目な声がして、唐突に戸が開いた。
「・・・・・!?」
 三番隊副隊長吉良イヅルは、隊長と下っ端の女が布団の上でもつれ合っているという目の前の光景を受け入れられず、ただ石のように固まり沈黙した。
「吉良副隊長・・・! 助けてください!!」
「あぁイヅル、ええとこに来たなあ、しばらくこの部屋に誰も近付かんようにしといてや」
 必死に助けを求める女と、のんびり楽しげに言い渡す隊長。対照的な二人を交互に見やるが、結局イヅルは、上司の言うことを聞くほかに選択肢はないのだった。
「後でイヅルにも味見させたる。三人で楽しむってのもええやろ」
「いえ僕は・・・。し、失礼します」
 冗談なのか本気なのか図りかねるギンの提案に、顔を赤らめつつ、律儀に頭を下げて退室する・・・行ってしまう。
「待ってください副隊長、待って・・・!」
 の必死の声は、ぴしゃり閉められた扉によって遮断された。
「ああ・・・」
 もはや絶望的だ・・・。
「なぁ、何でそない嫌がるん? 彼氏でもおるの? 誰や知らんけど、そっちはやめて、ボクにしとき」
「ボクのこと嫌いやから?」という考えなど、はなからないらしい。どこから来るのだろう、この自信は。
 彼氏、と聞いて、ついの顔を思い浮かべてしまう。しかしもちろん、一方的に慕っているだけだ。の彼氏なんて、考えるだけでも恐れ多い。
「ええやろ」
 返事も待たず、の身にまとっているもの全てを手際良く脱がしてゆく。白くつややかな肌は眩しいほどで、ギンの口から感嘆のため息が漏れた。
「きれいやね、の体」
「見ないでください・・・」
 明るい室内で全てを晒している恥ずかしさに、耐え切れず顔を背ける。
 ギンは構わず、乳首に吸い付いた。舌で転がし、舐め回す。同時に下部に手を伸ばし、秘められた場所に指を割り込ませた。最初は探るようにそっと、徐々に激しく。
「・・・ぁっ・・・」
 思ってもみない巧みさに、覚えず声が漏れる。これでは隊長をますます調子づかせることになってしまう。は唇を噛んだ。
「遠慮せんでもええから・・・ボクにのエッチな声、聞かせてな」
 言葉に、ズキンとする。
「や・・・ああ・・・」
 くちゅくちゅ、かき回す音に昂ぶり、あえぐ声を止められなくなって・・・。
「感じやすいんやね、もうこない濡れて・・・」
 溢れる蜜を指にすくい、ギンはぺろりと舐めた。の両脚を掴むと膝を立てさせ、大きく広げる。
「いやあっ・・・」
「いややないよ。欲しがっとる・・・」
 尚も弄び、指を差し入れる。一本では足りなさそうだと、もう一本。熱と湿り気を持った締め付けが心地良く、二本の指を出し入れしてみる。
、初めてやないんやね。誰にどんなふうにされてたん?」
 返事など期待していない。ただいい声を聞かせてくれれば。
「あああんっ・・・」
 ようやく思うさま反応してくれるようになったところで、ギンはの耳元に囁いた。
「・・・もっと色々試したいとこやけど、一応執務時間内やし・・・もう挿れさせてもらうわ」
 今更、執務時間内だなんて。いやそれよりも・・・。
「や、やっぱり、しちゃうん・・・ですか?」
 ギンは笑みを深くした。
「しないでどないすんのん? ボク自身でのナカを確かめへんと・・・こないなっとるんやし」
 するすると死覇装を脱ぎ捨ててゆく。さすがに直視できないに、性急に覆い被さった。
「ひ・・・っ」
 前戯の時間こそ短かったが、は十分潤っており、何の抵抗もなく隊長と繋がってしまった。
 ギンは深く息をつく。
「嬉しいなぁ・・・ボクを受け入れてくれるんや」
 体はそうだけど、気持ちは・・・。と言いたかったが言えない。いきなり突かれては、嬌声以外の言葉は出せない。
「や・・・っあっあ・・・たいちょ・・・っ」
 あまりの激しさに、シーツを握りしめた。苦しさと紙一重の快感に痺れ、いつか夢中になる。
「あ・・・ええ具合やね・・・」
 を味わいながら、行き着くまで勢いは緩めずに。
「もうもたんわぁ・・・このまま出してええ?」
「えっやっ、ダメですっ!!」
 いきなり我に返ったの慌てように、ギンは仕方なく自身を引き抜いた。
 熱い液が迸り、の腹部を汚す。
「・・・っ・・・」
「ボクの子供欲しうないんやね」
 すねるように言われても、もうには返す気力もない。
 うつろに天井を眺めて、グッタリしていた。

「今夜にでもボクのとこおいで。な」
「む、無理です、私・・・」
 気力を振り絞って身支度を終えたを、相変わらず布団の中からギンは眺めている。もはや仕事をする気は皆無らしい。
「いきなりやったし、すぐ終わらして悪かった思うとるんや。そやから、お詫びに一晩中気持ちようしたるわ」
「いえあの、隊長・・・」
 どう言えば伝わるのだろうか。確かに思わず溺れてしまったけれど、こんな関係、ズルズル続けるわけにはいかない。
「・・・ああ、順番が逆やったね。昼寝しよう思うとったとこに、が一人で来たもんやから、つい手ェ出してもうて・・・、大事なこと、まだ言うてへんかった」
 の逡巡をどう解したのか、ギンは一人で喋ると、体を起こし、布団の上に座った。
「好きや、
「・・・・・」
 ストレートな、不意打ちだった。心がズキンとするほどの。
「・・・でも、私は、市丸隊長のことが好きか分かりません・・・」
 戸惑いながらも正直に返すと、ええよそれでも、と余裕の表情。
「もう付き合うしかないやろ、ボクら」
 だからその自信はどこから?
 浮かない顔でため息などつきながら、心の中で『、さようなら・・・』と呟いているだった。



                                                             END



       ・あとがき・

初のBLEACHドリームは市丸ギンでお送りします。
最近、新ジャンル開拓がマイブーム。

しばらく前に漫喫でBLEACH一巻からずーっと通して読んだときに、唯一浮かんだのがギンのHなドリームでした。
そんなずっと前のプロットを掘り起こしたのは、このところカミヨミの瑠璃男ドリームにハマっていたからで。瑠璃男も京都弁なんだけど、京都弁っていいな、と思ったときに、ギンのこと思い出しました。ちなみに、ギンの声優さんと同じ人がCDドラマで瑠璃男を演じてらしたのよ。・・・そういえばどっちもキツネ顔だ(笑)。
考えてみれば、私、関西弁キャラをドリームで書いたことがなかった。車田マンガにはどういうわけか関西弁キャラが全然出てこないし、パプワのアラシヤマの京都弁はニセモノっぽいもの。
だから新鮮だったんだと思う。

BLEACHは新刊が出れば立ち読みするし、時々ジャンプも立ち読みするんだけど、何しろ一回しか読まないもので、ドリームを考えれば考えるほど分からない部分だらけで困りました。
読み込んで、キャラも設定も全て頭に入っているマンガでしか書いたことがなかったから、よく分からないで書くっていうのはこんなに大変なんだなって思い知らされました。例え短いものであっても、登場人物が少なくても、背後にあるものをちゃんと分かっていないと話っていうのは作れないんだなあって。新発見。
ネット上の情報だけで何とか補完できないものかと試みたものの、やはりムリで、結局本屋さんで関係ありそうな部分だけをパラパラと立ち読みしました。
でも何か間違っている部分があるのかも知れない・・・。

ギンは悪人だとインプットされたもので、当初は全く愛のない裏ドリームのつもりだったんだけど、参考のためによそ様でいくつかギンドリームを読ませていただいたら、意外に甘いものが多くて。読みながら書いているうち、これもちょっと甘めになっちゃった。なので裏行きにはなりませんでした。
ただただ「ソレ」だけのドリームではありますが・・・。今度は愛と気持ちのあるドリームにしたいですね。
ギンが言っていた、イヅルとの三人プレイも書きたい(笑)。
BLEACHの中ではシロちゃんと恋次が好きなので、その辺も書きたいかも。






この小説が気に入ってもらえたなら、是非拍手や投票をお願いします! 何より励みになります。
  ↓

web拍手を送る ひとこと感想いただけたら嬉しいです。(感想などメッセージくださる場合は、「パワハラ」と作品名も入れてくださいね)


お好きなドリーム小説ランキング コメントなどいただけたら励みになります!





「その他のドリーム小説」へ戻る


H19.9.9
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送