ケーキを早々と食べてしまうと、手持ち無沙汰なのかLは早速右手親指を口もとに持っていった。
(あたしといるってのに)
はまだ残っている自分のケーキを食べながら、恋人の様子を観察してみる。
ソファの上に両膝を立てた座り方をして、背を丸め、爪かみしている。真正面にいる
には目もくれない。左手で自分の足指をいじり、目を落としてそちらに集中していた。
彼が・・・Lとも竜崎とも流河とも呼ばれる
の恋人が、変人であるのは今に始まったことではない。
いつだって彼はこんなふうで、その独特の雰囲気ごと、
はLを愛していた。
細長い身体を折りたたんでソファにおさまっているという風情で、一心に足の指をいじっている、その格好にすら親しみを感じる。
ボサボサの黒髪。今は伏せられている瞳の、その深さと大きさを想う。
それから口もと−ちょっとめくれた唇に親指をくわえ、ひっきりなしに爪をかじっている−その口もとを見ているうち、
の胸の奥に小さな火がともった。みるみる色濃く燃え上がって、疼いてきてしまう。
「
さん、食べないんですか」
夢中でいたから、ケーキを放っておいていた。
しびれを切らしたようなLに言われ、
は笑みを作ってみせる。胸の炎はそのままにして。
「あなたを見ていたのよ」
彼は初めて目を上げた。膝越しにちらっと、足と口からは手を離さずに。
正面からLの真っ黒い瞳に射抜かれると、甘いかたまりを飲み込んだかのように、胸にズキンとくる。
「ようやくあたしの方を見たね。ずっと下ばっかり向いてるから・・・」
と言っているうちにも、またLは目を逸らしてしまった。
「見ていると、食べたくなってしまうからです」
「ふうん」
「我慢できなくなってしまうんですよ」
お皿に残った食べかけのケーキ、これのことを言っているのか、それとも・・・なんて、深読みをしたくなる。
はやや急いで、自分の分を平らげてしまった。
「もういいよ。食べちゃった」
Lはまた目を上げた。じっ、としながら、ずっと爪をかんでいる。
そうした仕草は、いやでも
の官能を刺激するのだった。
もっともL自身に自覚はないだろう。だってこれは単なる癖、少なくとも出会ったときにはすでに見られていた所作なのだから。
だけど。
親指がさしこまれているLの唇、がりりとかんでいる歯とちらり見えた舌、粘膜・・・唾液すらも。
「・・・竜崎の親指に、なりたい・・・」
半ば飛んでしまっている意識で口走る。
Lは特段驚きもせず、やっと口から手を外すと、のっそり立ち上がった。
猫背でそばまで来ると、黙って
の手を取り、親指を掴んで。そっと自分の口に持っていく。
キスのように軽く触れ、指の腹をぺろり舐めた。
「竜崎・・・」
ただこれだけでも、感じてしまう。
そんな
を、感情の宿らないような瞳で見下ろし、手を握ったまま今度は本当のキスをした。下唇をほんの軽く噛んでやる。
「・・・どうです? 親指の気持ちになれました?」
「りゅう・・・」
熱を帯びた目で、もう求めている。
すぐにでも応えてあげたいような、もう少し焦らしてこの顔ですがられたいような。
本当のところ、Lにも迷う余裕はなかった。
「見ていると、我慢できなくなってしまいます」
さっきの繰り返しだと、
にも気付いている。
嬉しくて、同時に甘い物や親指にまで嫉妬していた自分が恥ずかしいやら笑えるやらで。
つまりはこんなにも、Lを好きなのだと・・・。
「食べたくなってしまうんですよ」
言葉に似合わない力で腕を引かれ、強引にその場に引き倒される。Lの体の下で、
は少し戸惑っていた。
「乱暴ね」
ベッドはすぐ隣の部屋なのに。
「今すぐこの場で、したいんです」
甘い匂いが残っているうちに?
「いやなら、私が下になります」
こんな展開になってすら、ほとんど表情を変えもしない。Lは一度
から離れ、ソファの側面に寄りかかるようにした。相変らず、背中は丸まっている。
「どうぞ」
改めてどうぞと言われると変な感じだけれど、
はLにまたがるようにして体をからめ、自分からキスをした。ケーキをもう一度味わっているようで、今にもとろけそう。
「好き、大好き」
夢中でキスをする。Lの長袖Tシャツの裾に手をかけ、それを脱ぐように促しながら。
「私も、好きですよ。
さん」
痩せた半身を晒して、包み込むように抱きしめる。直に伝わるLの体温が、
には嬉しかった。
自分も少しずつ脱がされて裸になって、そのうちLとひとつになって。
お茶がまだ残っているテーブルの脇で、二人延々、睦び合う。
一応の満足を得て、床の上、固く抱きしめ合っている。
はLの右手をいたずらに弄んでいた。その親指を握ったり、ボロボロの爪をなぞってみたりする。
「やっぱり竜崎の親指がいいな・・・」
「まだ言っているんですか」
Lは呆れているふうだが、
は真剣そのものだ。
「だって、四六時中ずっと、仕事中でも、竜崎の唇に触れていられるんだもの」
間接的に責められている気がした。確かに、普通の仕事ではないLは忙しすぎて、普段あまり構ってあげられていない。
「親指じゃ、私は満足できませんよ。
さんが
さんだから、いいんです」
「・・・へへ」
くすぐったそうに笑っている。許してくれている。
愛しさに衝き動かされ、Lは恋人をきつく抱いた。
・あとがき・
Lのドリーム連発していますが。
書きたいうちに書きたいものを書く、がモットーですので、今ハマっているLドリーム、思う存分書こうかと。
こんなにキャラを好きになるのって久しぶりだわ。新鮮な感覚だわ。立ち読みして思いましたが、Lってとってもセクシーだと思います。もっと言えばエロいです。
7巻の表紙はステキすぎです。購入しようかと思ってしまったほど。
そして彼、生きていればいいな・・・。そのうちまたぽっと出てきそうな気がします。
H17.11.19
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