The Road to Nowhere
「・・・・」
彼のカッコの真似じゃないけど、ソファの上膝を抱えて。
「・・・・・・」
真正面で仕事に没頭している、名探偵Lをじーっと眺めている。
無表情、時々お菓子はつまむけれど、こっちを見ることもない。
(これじゃ空気と変わらないじゃない)
たまに仕事の手を休めたと思えば、エッチなことをしてくるだけだし。
好きだと、愛していると。言ってはくれるけれど。
(私って・・・何なの)
ため息が、出てしまう。
は黙って立ち上がった。気分転換に、シャワーでも浴びよう。
目の前の席が空になったのを認識してはいた。だが今捜査は詰めの段階だ、ゆっくりとの相手をしてあげることはできない。
(すまない・・・この事件が終わったら、少しは時間も取れる・・・)
唐突に、音楽が響き渡った。の好きなアーティストの曲に目を上げると、テーブルに置きっぱなしの携帯が光っている。
(電源は切っておいてくれと、あれほど言っているのに)
せめてマナーモードにしてもらいたい。
・・・しかし・・・。
パソコン画面に一度は戻した視線を、再び携帯に向ける。
(誰からだ・・・)
長いリーチを伸ばし、手に取る。シャワールームの方にも目を走らせながら、二つ折りの機器をパチリと開いた。画面はメールの着信を知らせている。
(・・・!?)
受信トレイに表示された差出人の名に度を失い、もう一度中央のボタンを押す。
メールを開いて見ることに、罪悪感のかけらもなかった。
何しろがを狙っているのは、傍から見ても明らかなのだから。
Lの大きな瞳が、デジタルの文字を映し込む。
時間が取れたら是非会いたいと・・・そんな文を、追った。
(と・・・が・・・)
二人の顔が脳裏を去来する。密会・・・今までもあったのだろうか、自分の目を盗んで・・・?
胸ににわかに燃え広がる炎に、叫び出したくなる。震える手で辛うじてメールを未読に戻し、携帯も元の位置に置いておいた。
シャワーを浴びたところで、大してスッキリもしない。濡れた髪を拭きながら、はソファに戻った。
Lは相変わらずの格好で、仕事を続けている。
着信にはすぐ気付いた。そういえばマナーモードにもしていなかったけれど。
パチン。
何の気もなく携帯を手に取って、メールを読む。
そのの表情を、Lは盗み見ていた。
少し驚き、ほんのわずかだが笑みを浮かべたのも、見逃さずに。
「・・・出掛けるんですか」
身なりを整えるため立ち上がったら、声をかけられた。
今までになく硬い声質に、まさか、の想いが頭をよぎり、手の中の携帯とLを交互に見る。
Lはパソコンからようやく顔を上げた。
「・・・のところに行くんですか」
滲んだ感情に、少なからず驚いた。・・・だって彼は、いつも平板なだけだから・・・。
「携帯・・・勝手に見たの・・・!?」
それは電源を切っておかなかった自分も悪かったけれど・・・席を外しているところで黙って開くなんて。
「私の質問に答えてください」
あなたのものになる、と誓っておきながら。体も全て許しながら。
他の男と連絡を取るなんて。
許せない。
二つの激しい感情が、ぶつかり合おうとしている。
先に口を開いたのは、だった。
「メール覗き見するなんて、ひどい!」
(さん、続きの言葉を選択してください)
↓
「もういい、のところに行くから!」
「どうして、そんなことするの・・・!?」
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