「竜崎」
呼んでみても、キーを叩くリズムにいささかの乱れもない。予想通りとはいえ・・・いや、予想通りだからこそ、ちょっと
はいら立った。
テーブルからチョコボンボンをひとつ取り、パソコンに向かっている丸い背中に近付く。
「竜崎ーっ」
横から匂いをチラつかせると、甘いものに目がない竜崎、さすがに速度がゆるくなる。
「それ以上邪魔をすると、蹴りますよ」
と言いつつも、チョコはしっかり受け取り口に放り込んだ。
この人なら、本当に蹴る。きっと痛い。
は仕方なくソファに戻り、おとなしく待つことにした。
一段落つけてようやくデスクから離れる。静かだと思ったら、やっぱり彼女は寝ていた。ミニスカートからすらり伸びる脚を投げ出し、あられもない格好でソファに横たわっている。
(襲ってください、と? はいそうしましょう)
その前に、まだ残っているお菓子をつまみ上げる。一口食べるとおいしくて、手が止まらなくなった。
の足側が空いていたので、そこに体育座りをして、食べ続ける。食べ続けながら恋人を見た。無防備な寝姿、脚、胸、唇・・・。
甘いものを食べながら眺めてるのは、実際に触れるよりもエロティックな気がしていた。
ふうっと意識が浮上し、目を開ける。
自分で身を起こすと、足元でうずくまるように膝を抱え口をもぐもぐさせているLの姿が目に入った。
テーブル上の箱は空、ラストの一個だったのだろう。
「仕事、終わったの?」
「小休止・・・にしようと思ったんですが、そうもいかないみたいです」
チョコレートを味わいながら、ずうっとこちらを見ている。黒い髪と黒い瞳が、青白い顔色に奇妙に映えていた。
は、ちょっと彼の方に寄ってみた。
「
さん、自分で起きちゃったんですね。私が起こしてあげようと思っていたのに」
口の中で溶け切ってしまったのを惜しむかのように、右親指をくわえていたが、それも口から外した。
「・・・こんなふうにして」
いきなり顔を近付け、口づける。少し長めに。
バランスを崩しそうなので肩肘はソファの背にかけたが、もう片方の手はいつものように膝に置いたままだった。
「・・・」
まだすっかり覚醒しきれないうちのキスに、心臓が跳ね上がる。直後それは、悩ましい疼きに変わった。
「もう、いきなり何するの」
文句のようでいて、はやその声はとろけてる。
分かっていてLは、すまし顔だ。
「
さんが許可をくれたから」
「そんな許可出したっけ」
「出してくれました」
もう一度、唇を重ねた。今度は軽く。
それだけでもう、許可のことなんてどうでも良くなった。
「ふふ・・・大好き、リュウくん」
額と額がくっつきそうなほど近くで、
はうっとり笑っている。
「リュウくんって」
呼び方に不満があるのは見て取れたけれど、
は彼の痩せた体にしがみつき甘え続ける。
「いいじゃない、リュウくんでも何でも。だってどうせ竜崎って本名じゃないし」
確かにそうだ。
に求められ、三度目のキスを仕掛ける。今度はもう少し深くまで探ってやると、離れたとき熱い吐息が漏れた。
「リュウ・・・」
ぴたりくっついて、見上げる。
「リュウのキスは、甘いから大好き。・・・いつも、甘いから・・・」
そして体の芯までを、ふにゃふにゃ柔らかくしてしまう。
Lは黒い大きな瞳で
をとらえ、口の端を少し上げた。「恋人に対する微笑み」としてはちょっと不器用だけれど、そんなところも
の気には入っている。
「私にとっても、あなたのキスが一番甘いです」
「一番・・・ってことは他のキスも知ってるってこと!?」
本気でムッとしている。
「
さん、早とちりです」
また、唇を触れ合わせて。
「どんな食べ物よりも、甘い・・・」
囁きは、唇越し、じかに伝わった。
今日交わしたうちで一番長くて濃厚なキスが、
から色んなもの−怒りだとか嫉妬だとか羞恥心だとか−を奪い去ってゆく。
残された愛情と欲情だけで、
はとろんと、恋人を見つめる。
「竜崎は、キスがほんとに上手」
「今日はずい分、ほめてくれるんですね」
「欲しいから、かな。あなたを」
密着しているから、息づかいに近い声でもちゃんと聞こえる。
Lはまたあの笑い方をした。
「積極的な
さんも、私、キライじゃないです」
「キライじゃないじゃなくて、好きって言いなよ」
「好きです。ベッドルームへ行きましょう」
その申し出はもちろん嬉しかったので、首ったまにぶら下がり、頬寄せ甘えの仕草をする。
「このまま連れてってよ」
「重いからイヤですよ」
容赦なく腕をほどき、自分だけ先に立ち上がった。歩き出しても絶対ぴんと伸びはしない背中に、アカンベしてみせる。
「失礼ね! だいたいアンタ、いっつも甘いモノばっかり食べてるくせに全然太らないのってズルい!」
「そーゆーの、逆恨みって言うんです」
ぺたぺたと歩いていき、とうとう猫背がベッドルームの中に消えた。
「おいしいです、
さんの」
音を立てて啜ってからこんなことを言ってくるから、恥ずかしくて・・・でもそれ以上に感じて、
は声を上げた。
「さっきよりもっと甘いかもですよ」
「や・・・それはさすがにウソ・・・っ」
「−ホントです」
顔を上げて、ぺろりとひとさし指を舐めている。指をくわえるのはいつもの彼の癖だけれど、ベッドの上ではやけにセクシーな仕草に見えた。
「ホラ」
這うようにしながら顔を近づけてきて、何度目かも分からないキス。
舌を絡めて、甘さを分け合った。
「ふ・・・ぁ・・・」
「甘いでしょ?」
「ん・・・」
きっと世界で一番甘いモノ。
・あとがき・
デスノート三日くらいかけて立ち読みしてしまいました。
あんなに人が死んでしまうマンガは怖くて私としてはダメなんですが、Lの魅力には虜になってしまいました。
しかし、これ書き始めてから第7巻を読んだら、L死んじゃった・・・!! ショック。
記憶が戻ったライトくんは怖い。記憶なくしていて、Lともちょっといい友達といった感じのときが一番良かったなぁ・・・。Lのシーンでは、ミサちゃんとの「好きになりますよ?」「お友達で」「友達が増えました」のやり取りと、ライトがキラだったら良かったのにと思っていた自分に気付くシーンが特に好きです。
しかし、ミサちゃんにだけ見えた彼の本名って何だったんだろう。気になる。Lっていえばかぼちゃワインのテーマ曲が浮かんできていけません。全然イメージ合わないのに、「エル、エル、エルはラブのエル・・・」ってずっと回ってる。どうしたらいいですか?(知りません)
立ち読みしながらもうドリーム書くことを考えていました。
デスノートのドリームをネットで検索してみたら、やっぱりLドリーム多かったですね。ドリームにしたくなるキャラなのかな。そして、私が求める雰囲気のドリームが本当に多かった。
こんなにあるなら私が書かなくてもいい気がしましたが、やっぱり自分でも一度はやってみたかったので、短編を早速書いてみました。また書けたらいいなと思っています。
H17.11.16
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