メロメロバレンタイン



　２月１４日。
　真冬の風は冷たいが、街は愛を銘打った行事で浮かれている。そんなピンクの空気をまとったまま、はメロのもとへとやってきた。
「日本では、バレンタインデーに女の子から男の子へチョコをあげるの」
「そりゃいい習慣だ」
　チョコレートなら今も食べているが、もらえるものを拒む理由はどこにもない。
　は楽しげに、手にしたペーパーバッグからリボンのかかった箱を二つ取り出した。
「はい、メロ。マットにも」
「やった、サンキュちゃん」
　チョコレートを受け取ってマットははしゃぎ、の頬にチュッとした。
　メロは肘をかけた片手に箱を持ったまま、面白くなさそうに顔を歪める。
「やだー、マットのは義理なんだからねっ」
　きっちり両手で押しのけ、はメロの隣に腰を下ろした。
「義理ィ？」
「そーよ。バレンタインのチョコには、義理と本命、二種類あるの」
「で、俺のは義理？」
「うん。メロのが本命！」
　ちょっとだけ寄り添うふうにすると、マットは「ちぇっ、やってらんねぇ」と毒づき、ベストに袖を通した。
「俺出かけるからな。街でチョコもらいまくってやる」
「普通、ただ歩いているだけじゃもらえないけどね」
「邪魔者は消えてやるって言ってんだよ！」
　と、それからメロにニヤリ笑いかけ、ふらっと出ていってしまった。
　二人きり部屋に残されて、メロは何となく居心地悪かったが、隣を見るとのいたずらな表情に毒気を抜かれた心地になる。
「・・・マットの方がでかかったな」
　早速包装を取りながら呟く。チョコレートの箱の大きさについてである。
「でも、こっちの方がずっと高いんだよ。デメルよ、デメル」
「何だそれ」
　チョコレートは大好物だが、ブランドには疎い。
　なるほど高級感の漂う箱を開くと、スティックタイプのチョコレートが綺麗に並んでいるのだった。
「うまそう」
「でしょ」
　目を輝かせるメロを、可愛いと思ってしまう。
「たまには板チョコ以外もいいものよ」
　メロより先に手を出し、一本取り出す。いきなり端っこを口にくわえたかと思うと、はそのままメロに差し出した。
「・・・バカか」
　吐き捨ててみても、拒み切れるものではない。
　結局メロは顔を近づけ、もう片方にかじりついた。
　誘われたのは、甘い匂いにか、それともふっくらつやつやの唇の方か・・・。
　信じがたい速さでチョコをかじり、たどり着いたゴール、柔らかさとより一層濃い香りとをじっくり味わった。
「・・・」
　お互い食べ合う。激しいキスで溶かされるのは、チョコレートだけではなく。
「まだ、チョコ、残ってるよ」
「後で食う」
　傷あとがくっつくくらい頬を寄せてきて、いきなり両腕に閉じ込める。
　まろやかな体のラインに手を伸ばした。
「を先に食っとかないとな」
「やだぁ。チョコあげたから、コレはナシっ」
　形だけの拒否は無視して、さぐり始めた。
「お前だってスキなくせに」
　深く口づけ、服を大胆に乱してゆくのは、落とし込むためのストレートな罠。
「チョコもいいけど、やっぱだな」
「チョコの方が好きなんでしょ」
「・・・・」
「何よその間は」
　目線が上向いているのも気に食わない。真剣に考えないで欲しい。
「いいから、来いよ」
「もう・・・」
　結局、ベッドへと引き込まれた。
「メロったら」
　チョコの濃厚な匂いにくるまれて、バレンタインの甘い甘い時間のはざま、二人溺れてゆく。







　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ＥＮＤ

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　　　　　　　・あとがき・

バレンタインデー当日に考え付いたネタです。バレンタイン後にアップとなってしまいましたが。
最初はＬでバレンタイン話を考えていたんですが、チョコといえばやっぱりメロ。ということで、初のメロドリームです。
大好きなマットも、特別出演。メロとマットは対等な感じでね。
メロはちょっと照れていて可愛い感じになりました。ルックスはああなのに、なぜかハードな感じにならなかった・・・。こんなメロも個人的には好きですが。
ちゃんは活発なタイプね。マットとも仲良しです。

バレンタインチョコでポッキーゲーム。口移しなどのネタ、今までも何度も書いていますが、大好き！
デスノートは私にとって本当に久しぶりの新ジャンルなので、私の中で書き古したかな？といったネタも、どんどん焼き直して入れちゃえます。楽しいなあ。

タイトルは・・・ひねりも何もなくてすみません（笑）。


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Ｈ１８．２．１６