世界の中心でLをさけぶ



「・・・さん」
 はらり、薄紅が交差する。
さん」
 それは豪奢な桜のとばり。
「・・・どこ?」
 花びら敷き詰めたじゅうたんの上、足元ふわふわ、頼りない。
「どこなの、L」
 震える声に、泣きそうな自覚。
 ザッと音を立て、春の嵐がにわかに目隠しを取り去った。
 いつもの服装、いつもの姿勢、いつもの表情で、
 Lは、そこに、いた。
 そこにいる、のに。
 花の淡色と、Lの髪や瞳の黒。くっきりコントラストは、春にまどろむ目も覚めるほど。
 それなのに。
 今しも、花霞に溶け入りそうな・・・この不確かさは、どうしたことか。
「L・・・L」
 舞い狂う桜をかき分けるように、腕を伸ばす。
 行かないで、行かないで。
 唇が動くだけで、声にはならず。
 花びらをかすめた指先は、大きな手にすくい取られた。
、私はどこにも行きません」
 すっぽりと、包まれて。
 ようやく安心して、目を閉じる。
「貴女のそばに、ずっといます」
 不思議なエコーは、桜色の空間特有の現象だったろうか。
 うっすらと目を開ければ、空までもが満開の桜。
 はらはらと、やわらかなプリズム。

 ここが、世界の中心だよ。
 狭くて広い、私の世界。
 手ごたえを求めて強くしがみつく。
 この人の世界とは、別だろうかと考えると、切なくて。

 叫んでいた。
 魂が震えるほど。
 声には出せず、でも何より強く。


 −世界の中心で、Lをさけぶ−





                                                             END



       ・あとがき・

2月まだ半ばだというのに、ここのところ急に気温が上がって。春を思わせる暖かさに、桜の話を書かずにはいられなくなりました。
桜、大好きなんです。桜の短編なんて、もう数え切れないくらいたくさん書いています。
桜って日本的なので、今まで桜の話を書くときには、カタカナ語を排除していたんだけど、今回は入れてみました。小さなところだけど、自分としては新鮮な感じ。

私が最初デスノートを読んでLを好きになったとき、きっとそのうち復活して出てくるだろうな、と思っていました。
でも、第二部もかなり進んで、今になると「もう出てこないんじゃないか」という思いの方が強いのです。
そんな私の気持ちから、生まれた短編です。
短いですけどね。

「あなたの一番萌えるLをかいてください」との注があったお題ですので、大好きな桜を背景にLを書いてみました。
淡い桜に濃い髪などの色、その対比、というのは、それこそ昔から何度も繰り返して書いている、好きなシチュエーションです。


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