ー、一緒に帰ろーよ!」
 まるで毎日一緒に帰っているかのような気軽さで声をかけられたけれど(しかも呼び捨て)、菊丸くんとはただのクラスメイトで、特別に仲が良いわけじゃない。
 人気者の菊丸くんは、誰に対してもこだわりなく話しかけるのだろう。しかし、でもクラスでも、地味な存在のは、あたふたしてしまう。
 胸がドキドキしているのは、いつも抱いている、大事で切ない想いのせい−。


 
告 白


「・・・でさ、そのときにさー・・・」
「えーホント!? おかしー」
 菊丸が矢継ぎ早に話す面白おかしい話に、抱腹絶倒で歩いているうち、いつの間にか最初の緊張も忘れていただった。
「あ、私、こっちだけど、菊丸くんは?」
 閑静な住宅街の十字路で、は立ち止まり右の方を指し示す。
「えーっちょっと待って、俺っ、話があるんだケド」
 迫るほどの勢いに、は二、三歩引いた。
「話って・・・?」
 そんなに顔を近付けられたら、またドキドキしてしまう・・・せっかく平常心になりかけていたのに。
 さりげなく目線を外すに、菊丸はかまわず、自分の思いをぶつけた。
「俺、のこと好きなんだ。ねー俺と付き合って?」
「−−−」
 体中の血が、一気に沸騰したみたいに、全身熱くなる。
 心臓の音ばかりが、ドクドク、ドクドク、大きく響いて−。

ってばっ」
 肩をゆさぶられて我に返る。菊丸の大きな瞳に焦点が合い、またドキッとした。
「・・・あのっ・・・」
 まさか。
 いつも人の輪の中心にいて、友達も多くて、更に更に、みんなの憧れテニス部レギュラーの菊丸くんが、容姿も成績もパッとしない自分なんかに・・・。
 いたずらかドッキリか、クラスの男子と賭けでもしているのか。
 でも例え嘘でも、言われて嬉しいのは確かだった。
 だっては、ずっと菊丸くんのことを・・・。
「ねー返事はー?」
「・・・でも・・・」
 どうしてこんなに、真っ直ぐ見てくるんだろう。
 大きくてきれいな眼、きらきらっと輝いている眼に、吸い込まれそうで恥ずかしくて、は直視できないのに。
「ハッキリ言ってよー」
「だって・・・私なんか、どうして・・・菊丸くんモテるのに。私よりカワイイ子、いっぱいいるのに・・・」
だってカワイイってば」
「まっまっまさか、そんな、ウソばっかり・・・」
 軽く簡単に、そんなこと言うんだから。一人で赤くなってしどろもどろで、バカみたい・・・。
 菊丸は構わず、同じ調子で続けた。
「この間、たまたまを覗いてさ。そしたら、すっごい楽しそうに部活やってんだもんな。なんかいいにゃーって」
 いいにゃーと思うと止められない菊丸、今日こそはと決めてを誘った。こう見えて、一世一代の告白だったのだ。
「俺と付き合ったらさ、他の誰よりのこと、楽しませてあげられるよ!」
「・・・・・」
 満面の笑顔に、気持ちがとろかされる。
 そうだ、菊丸くんは、冗談で人の心をもてあそぶようなことはしない。
 いたずらとか賭けとか、疑ってしまった自分を、は反省した。
「でも、私と付き合っても、菊丸くんは楽しいかなあ・・・」
「楽しい楽しい!! 超楽しいー!」
 即答と同時に、ワクワクキラキラで満たした視線を注いでくる。
 そうされては、断れない。
 ・・・断る理由も、にはない。
「じゃあ・・・」
「・・・いいの!?」
 こくんと、の首が縦に振られた瞬間。
「やーったあーー!!」
 目にもとまらぬ連続バク宙。
「ひゃっほー」
 今度は片手逆立ちをして、文字通り全身で喜びを表すと、の目の前にすとんと着地し、すぐに両手で両手をがっしと握った。
「じゃーヨロシク! 昼休み一緒にいよー。あと毎日一緒に帰ろ、休みの日は遊びに行こー、それからそれから・・・」
 シッポ振る犬みたいに、気まぐれに擦り寄ってくる猫みたいに。
 たくさんの提案で「一緒にいれば楽しいよ」アピール。
 大きな目を細め、白い歯見せてニッと笑いかけられれば、もいつの間にか笑顔になっているのだった。
 握っている手で熱を伝え合っているんだと気付き、また一段、心音が高くなる。
「菊丸くん・・・」
「英二って呼んで!」
 付き合うからには絶対、そう呼ばれたい。
 は素直に、
「英二・・・あのね」
 呼び直すと、手を繋いだまま軽くつま立ちをし、ナイショ話用のトーンで英二の耳元に打ち明けた。
「ホントは私も、英二のこと、好きだったの・・・」
 こっそりとだけど、ずっと見ていた。
 クラスの中でも、時々はテニスコートでも。
「・・・ヘヘッ」
 くすぐったそうに笑いながら、英二も知っていた。
 の視線に、気付いていた。
「嬉しっ。両想いってわけだ・・・。じゃーを家まで送っていくにゃー」
 片手だけ離して、歩き出す。
 本当はちょっぴり恥ずかしかったけれど、手を繋いでゆっくり歩くのも楽しいな・・・と、新しいときめきに、ピンクに染まった頬でにっこりとするだった。
「なんか、楽しー。とこうやって歩くの」
 その言葉と満面の笑みに、同じ気持ちを知った。

 きっと明日からは、今日までと全然違う毎日が始まる。
 それはもう、世界が一変してしまうくらいの−。




                                                             END



       ・あとがき・

好きなキャラはたくさんいるんだけど、ドリームとして書きやすそうなのが菊丸くんでした。
海堂くんや乾くんなんかが特に好きなんだけど、ちょっと特殊な感じだからね・・・テニプリドリーム初心者としては、とっつきにくいというか。
菊丸くんは、リョーマよりも主人公向きのキャラだと思う。
でも言葉遣いがイマイチつかめないまま書いてしまいました・・・こんなんでいいのかな?

大好きな松山くん主演の映画を見て思いついた話です。
真っ直ぐに「好き」って言われるのって、いいなあと思って。
菊丸くんなら、恐れず躊躇せず、好きと言ってくれそうな気がしたので。
ただ気まぐれなので、その後の苦労もあるかもねー。





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