ジャンケンポンのヒロイン
「「ジャンケンポン!」」
私はグー。彼は・・・、パー。
「またの負けだね」
分かり切ったことをいちいち口にすることで、あたしをますます貶めようとする。
意地悪なこの男、白鷺杜夢。かなりのイケメン。あたしの彼氏。
「じゃ今度は・・・、そのブラウス」
言われて仕方なくボタンを外しにかかる。
杜夢は、テーブルに片肘ついて、じっと見てる・・・。やだなんかドキドキしちゃう。
ジャンケンで負けた方が、一枚ずつ脱いでゆく。そう、これは、由緒正しき野球拳。
負けなしギャンブラー様の鼻っぱしらをヘシ折ってやりたくて、あたしから勝負を申し出た。
何たってジャンケンなら運だけだし、あたしも子供のころから結構強かったんだから。
杜夢を脱がせてやろうと、意気込んでいたのに。
ふたを開けてみれば、脱がされているのは、あたしの方。
すまし顔した杜夢に、クセを見抜かれているのか、それとも「次はボク、パーを出すから」なんていきなり言い出して、こっちから考える間もなく「ジャンケンポン」って始めちゃう、あれも作戦に違いない。
「早く脱いで、」
うう・・・。
この人、ギャンブラーじゃなくて詐欺師でしょ。学生時代はあの有名な、「バカと貧乏人は近寄れもしない」獅子堂学園に在籍していたこともあるというけれど。
やっとボタンを外し終わって、ブラウスを脱ぎ捨てる。中に着ていた長袖Tシャツを見て、杜夢はクスッと笑った。
「一体何枚着込んでいるんだい」
ここにたどり着くまでに、ジャケットと薄手のカーディガンとベストとプルオーバーを脱いだ。更にこの下にも、半袖とタンクトップとキャミソールを重ね着している。
「厚着しちゃダメとは言ってないでしょ」
ボトムスだって、ストッキング何枚重ねただろう。あとレギンスとスキニージーンズとカーゴパンツと。とにかくまだまだ大丈夫。
「確かに。万全を期して勝負に臨む・・・いい心がけだと思うよ」
勝負師っぽいことを。でも表情は完全に嘲ってる。
「暑くないか? まだ残暑厳しいよね」
タンクトップ一枚の杜夢は、とっても涼しげ。
「よっ余計なお世話よ」
「汗かいてるよ」
「痩せようと思ってるとこなの。いいから次っ」
こんなやり取りしていると、余計に熱が上がってくる。
「じゃあ、早いとこ脱がせて楽にしてあげるよ」
うっ・・・何よその目。
「エッチ!」
「別に。ボクが勝つって言ってるだけ」
どこまでも余裕なのが、イラつく。
「「ジャンケン、ポン」」
あたしグー。杜夢は・・・チョキ。
「やった勝ったあ!!」
ようやく二勝目! って大喜びしすぎるのもむなしい。
「何を脱ごうか」
勝った方が脱ぐものを指定するのがルール。ちなみに最初は、杜夢が羽織っていたシャツを脱いでもらったんだけど。
「うーん」
そのタンクトップにすれば、もう上半身はハダカかぁ・・・。
いやその前に。
「それっ、メガネ」
あたしの指示に、杜夢は「メガネでいいの?」と言いながら、フレームなしの軽そうなメガネを外した。
彼は折りたたんだメガネを、いつもえりもとに引っ掛ける。あたしはそれが好きだった。
「ふっふっ。これであたしが脱いでも、見えないでしょ」
恥ずかしさも減るってものよ。
すると杜夢は、テーブルに肘をついた手で自分のあごを支え、ニヤッと笑った。
「・・・見えないと、思う?」
・・・えっ。
「まさかそれはダテメガネ!?」
「さあね」
メガネがない分、強い瞳にダイレクトに射抜かれる。
胸がキュンキュンして、また何かを杜夢に奪われた気がした。
そんなだから、負け続きで。あんなに重ね着していたのに、気が付けば上はキャミソール、下はショートスパッツという真夏の部屋着みたいな格好にさせられていた。
あたしが勝ったのは、何とあれから一度きりで、杜夢を上半身裸にすることしか出来ていなかった。
一応、あたしと彼はラブラブの彼氏彼女なので、そーゆー関係ではあるんだけど。
明るい部屋の中でこんな薄着になっちゃって、触れもせずジャンケンしてるって・・・変なシチュエーション。
かっこいい杜夢のかっこいい体に目が釘付けになっていると、杜夢はスリスリとあたしのすぐ隣に移動してきた。有無を言わさずぎゅっと抱きしめられて、一気にカーッとしてきちゃう。
「、今度はボクが脱がせてあげるよ」
耳元に落とされる声に、ゾクリ。
「まっまだ負けてない・・・」
「いいから」
杜夢のぎゅーに、あたしは弱い。
思わずなすがままで、キャミソールを脱がされた。
「さすがにもう着てないんだね」
あたしの下着姿を見てそんなふうに言うものだから、あたしはバカ、と軽く押し返してやる。
「野球拳やってるうちに発情したんでしょ」
非難のフリで見上げたら、
「逆だよ。がそーゆー目で見るから」
あっさり返された。
それからキスされてしまっては、あたしはもう何も、言えない。
こうやってまたハマってしまうんだ・・・。
「やっぱり杜夢に勝てない・・・何やっても」
ベッドに二人で転がりながらもムクれると、杜夢はあたしの髪を撫でながら、キスをもう一つくれて、言った。
「逆だって。ボクの方がに参ってる」
「・・・また、うまいことを・・・」
例えばあたしを抱くために、そうじゃなくても気分良くさせるために。口からでまかせでもお世辞でもおべっかでも、すらすら言える奴なんだ。
だって杜夢は、世界最強の詐欺師なんだもの。
だけど。
「本当だよ」
強く真っ直ぐな瞳で、そう言うから。
例え嘘でも、だまされてあげる。
「・・・大好き」
肌と肌が触れ合うのが心地いい。
「・・・」
あたしたち、もう離れないってくらい強く強く強く抱きしめ合って。
小さな部屋の中、大好きを結んだ。
END
・あとがき・
ギャンブルフィッシュ、サイコーに面白い。
毎週チャンピオンを立ち読みしていますが、こんなに「次号が楽しみ!」と思わせるマンガはデスノート以来です。
ドハデな演出、キャラの濃さ、今度の勝負はどうなるんだろう、どうやって危機を乗り越えるんだろう。杜夢のお父さんは!?ともう毎号クライマックス!
そういうことで、この間、杜夢と野球拳をやる夢を見ました(笑)。
これはドリームを書けというお告げに相違ない!と張り切ったものの、野球拳をドリームに出来るのかと悩みました。
杜夢は大人バージョンにして、甘々の恋人同士ということにしたら、こんな短編に。
大人の杜夢・・・さぞかしカッコいいだろうな・・・。職業はギャンブラー?かなり稼いでいそうです。
いくら杜夢でもジャンケンでそんなに連勝可能かな?とも思いますが、私の中学時代の英語の先生、クラス全員とジャンケンして結構勝っていたことを思い出した。先に「グー出すよ」とか宣言して、即「ジャンケンポン」って。どーゆー心理が働くのか、先生が勝つんですよ。
杜夢なら、なんか色々テクを組み合わせて、連勝できちゃうかもね。
タイトルは昔のうしろゆびさされ組、アルバム収録曲より。
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