if


 彼女の手料理を一緒に食べ、一緒に床に就く。普段の夜の過ごし方。
 月が綺麗、と、がカーテンを開け、二人優しい光に包まれる。
 こんなおぼろな光の中でこそ、不知火の持つ彩が引き立つのだと、は知っていた。
 橙の髪の表面を、光の珠が転がり零れる。きめ細やかな白い肌。それに似つかわしくない逞しい体格に、覚えずため息が出る。
「・・・何、見てんだ」
「ううん・・・」
 声が不機嫌でも、こっちを見据える眼光が鋭くても、はちっとも怯えることなく、かえって両手でぎゅっと抱きつくのだった。
「・・・
 しっかり抱きとめ、さらさらの髪を何度も撫でる。光に照らされ浮き出る艶を、綺麗だと感じた。
・・・もしも俺が、夜な夜な武器を振り回して、大勢を傷つけているとしたら・・・、どうする?」
 口から出たのは無意識に近い呟き。
 自らの声を遠いもののように、不知火は聞いていた。
「・・・不知火」
 腕の中で、の体はたおやかで、声も変わらず柔らかだった。
 怖い、とも、そんなこともしもでも言わないで、とも口にせず、は静かに面を上げた。
「それでも、貴方は貴方だから」
 月の下で、一点の曇りもなく。
「例え何があったって、私は貴方の味方だよ」
 無垢な美しさと芯の強さを二つながら内包した瞳は、もうこの世のものではないようで。
「・・・・・」
 不知火は無言で、今一度、もっと強くの身体を抱きしめた。
 贖い切れぬほどの罪を重ねても、それでも尚、味方でいてくれると。
「どこまでも一緒に」というよりも、「ずっと愛してる」などという言葉よりも、すっと重く心に入り込み、隅々まで染み渡るような、真実だった。
「俺は、お前以外を愛せない・・・」
 されるがままにキスを受けると、彼の唇が、わずか震えていた。
 可哀想な人−。
 切なく愛しく思い、今度はの方から抱きしめる。
 抱きしめたまま眠る−月の蒼い光に、くるまれて。



      END




 ・あとがき・

リクエストいただいていた不知火です。
「難しいキャラを、とても上手に描写してらしたので、もっと読みたくなりました。」このコメント、とっても嬉しく受け取っていました。
「君は何も知らないまま」の続編ですね。こちらも超短編。
「if」はチャゲアスの歌です。この中で歌われる、僕はずっと味方さ、というのをそのまま使わせてもらいました。
チャゲアス好きになったのもこの曲がきっかけで、当時何度も繰り返し聴いていました。思い出深いですね。
間違っていようと正しかろうと関係なく、ただその人の味方でいる。
すごく強い愛の表れなんじゃないかと思います。




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