春リング
一面の春野原に吹き込む風はゆるく、黄色のたんぽぽ、白いシロツメクサをさわさわ揺らす。
夢景色の中心に、まだ少年だったアイオロスと、もっと幼かったがちょこんと並んでいた。
「ねぇ、あたし、およめさんみたい?」
ちょっぴりはずかしそうなは、花の冠と首かざりでおめかししている。どちらも、たんぽぽとシロツメクサで自作したものだ。
器用に編まれた可憐な草花は、可愛いによく似合う。
アイオロスは、にっこり微笑んだ。
「うん。とってもステキな花よめさんだ。・・・あっ、そうだ」
思いついて、かたわらからシロツメクサを一本引き抜く。
「手を出して」
てのひらを上向けて出された右手をやさしくとどめ、
「こっちの手」
反対の手を、軽くつかむ。薬指に、シロツメクサの細い茎を巻きつけた。
「花よめさんには、ゆびわがなきゃ」
不器用ながら端を止め、何とか出来上がった。の小さな手にぴったりの、素朴なリング。
「ありがとう、アイオロス」
は嬉しそうに、手を胸に添える仕草で笑っていた。
左薬指の意味も知らぬ少女に、約束を課すあざとさを自覚していながら、アイオロスも笑い返す。
草花の匂い立ちのぼり、大気はふんわりと、空は一点の曇りもなく。
春が、二人を包み込んでいた。
それからいく度もの同じ季節を経て。今、アイオロスの隣にはやはりがいる。
聖なる誓いを立てんとするの、額にはティアラが、胸元にはネックレスが。あのときは花で編まれていたそれらも、今は光り輝く装身具となり、美しく成長したをより一層引き立てているのだった。
そして、アイオロスの手により、白金の清らかなリングが左薬指に着けられようとしている。
(・・・)
ヴェール越しの伏せられた目、長いまつげを見つめた。
幼いころのささやかな触れ合いが、あの夢に溶けそうな風景が、どれほどの拘束力を持つというのだろう。
それでも、は待っていてくれた。巡りきては去ってゆく春を、ひとり見送りながら。
(これからは、二人だよ)
すらり細くしなやかな指に、ゆっくりと指輪を通す。
この瞬間、新しい約束が交わされるのだった。
ヴェールを上げると、今までで一番きれいに微笑んでいると、目が合った。
(絶対に絶対に、離さない−)
身を屈めて、口づける。
儀式にしては強すぎる抱擁と長すぎるキスは、黄金聖闘士をはじめとする参列者たちを、少々、ざわめかせた。
END
・あとがき・
春の野原とアイオロスを書きたくなりました、急に。
幼い二人→成長して結ばれる二人、というパターンも何度か書いていますけど、ワンパターンには抵抗がないもので。
雰囲気は昔書いた白羽と龍騎(風小次のオリキャラ)です。龍騎ってちょっとアイオロスに似ている。私の彼への追憶を込めて。
最近、別ジャンルばかり書いていて、星矢はとっても久しぶりのような気がしますが、やはり「このキャラで書きたい!」と浮かんでしまうと、もう書きたくてね。アイオロスで書きたいと思うと、代わりはきかないわけです。
特にアイオロスはドリームにおいての最愛キャラといってもいいくらい、好きで書きやすいキャラだから。
後半をちゃんと決めないで書き始めたら、結婚式になりました。
結婚式のシーンって何度書いても良いものです。とっても素敵な思い出でもあります。
今冬は寒くて長かったけれど、この北国にもようやく春が来たようです。やっと桜が咲きましたよー。今年は本当に春の訪れが遅かった。
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