なし崩し的にジンの国に居つくことになった紅蓮は、早速城中のまかない女に目をつけた。
「オイ」
 ちょっと声をかけただけなのに、女たちはくもの子を散らすように逃げて行ってしまったが、まぁ構わない。
 目当ての女だけは、そこに残っていたのだから。
「紅蓮さま、あの、何か・・・?」
 逃げ遅れたわけでも、怖くないわけでもない。ただ、主の客であるこの男の用事なら聞かねばならぬと思い、とどまった。いわば使用人のプロ意識といったところだろうか。
「オメー、名前は?」
「は・・・私ですか、と申しますが」
・・・」
 紅蓮は、よし決めた、とひとりで呟く。
「お前、俺つきになれ」


 恋かしら


 その夜、早速に酌をさせ、大して酔いもしないがいい気分になった紅蓮は、女の小さな体を強引に抱き寄せた。
「何を・・・」
「騒ぐんじゃねー」
 畳の上に組み伏せて、服に手をかける。
 そのとき欲しいモノを手に入れるだけだ。
 抵抗を試みる腕を押さえつけ、顔を覗き込んだ。
 最初から気になっていた、この女の、暗い眼。まるで、負の感情が闇となって覆い尽くしているかのような・・・。
 こんな状況にあっても尚光を宿さぬ瞳に、紅蓮は興味を惹かれた。
「八魔将軍の紅蓮様に抱かれんだ、名誉だと思っとけ」
「・・・その八魔将軍さまが・・・」
 感情のないような声で、つぶやく。
「何を焦っているの・・・、何かを、探しているの?」
「・・・!」
 瞳の奥を読んでいたつもりが、逆に読まれていたのだと知り、紅蓮は逆上した。
 あらわにしたの乳房を、荒々しく揉みしだく。
「知ったよーなこと言うんじゃねェよ。黙ってろ、イイ思いさせてやるからよ」
 下半身に手を潜り込ませ、指を割り入れる。
 人間ふぜい、と見下している紅蓮だったが、女の持つ色香はある意味認めていた。
 気のおもむくまま女の身体に慰みを求めていたから、その扱い方も、どうすれば具合良くなるかも、熟知していた。
 程なくの全身から力が抜け、かき回している部分も潤い始める。
「はァ・・・っ」
「結構、気分出してんじゃねーか」
 早くも溢れて、指を濡らしている。これ以上時間をかける必要はない。面倒が嫌いな紅蓮は早速脚を割り込み、繋がろうとした。
「いやッ、無理・・・」
「無理じゃねェ、力抜け」
 狭いが滑りの良くなっているの中へ、強引に自身をねじ込んでやる。
「うっ・・・」
「オラ、入ったぜぇ」
「うっ、く・・・苦し・・・」
「小せぇなァ、壊れっかな」
 楽しげに言い放ち、壊れても構わないとばかりに激しい動作を加える。
 の体が、人形のようにガクン、ガクンと揺れた。
「い・・・やァ・・・っ」
「ヘッ・・・悪くねェ・・・」
 のぶれる視界がとらえたのは、魔王の乱れる黒髪と、口元にのぞく牙と、ひとつだけの瞳・・・魔の光・・・
(殺される・・・)
 そう思ったのが、最後だった。

「ケッ、これしきで気ィ失いやがって」
 ぺちぺち頬を叩くと、は重そうにまぶたを開けた。うつろな瞳は、やはり深い闇をたたえたままだ。
「・・・男なんて、皆、勝手で低俗な生き物よ・・・」
 人間ごときに低俗などと言われて黙っていられる紅蓮ではなかったが、がこちらを見てはいないことに気付いた。眼前ではなくもっと遠く・・・過去、か・・・。
「弄ぶだけ弄んで、捨てた・・・」
 愛している、と言ってくれていたのに。
 彼は、地元の有力者の娘と結婚した。
 簡単に袖にされた痛みは、刃のようにの心深く突き刺さったままだった。
「テメーもよがってたクセに、文句ばっかたれんじゃねー」
「・・・・」
「オラ股開け」
 片脚をかつぎ上げるようにして、再び、体を繋ぐ。
 湿ったままの体内が、進入を簡単に許すだけではなく、痺れるような快感を感じてしまうさまを、の中の冷静な部分が客観的に見つめていた。
 乱暴されて感じるほどに貪欲な体は、淫らで、醜い。
「誰に仕込まれたか知らねーが、いい具合じゃねェか。気に入ったぜ」
 魔将軍に気に入られるとは、名誉なのだろうか。あんまり嬉しくない。・・・気持ちいいけど・・・。
「あ・・・っ」
 思考は続かない。全部飲み込まれて、はじけ飛ぶ。

 朝が来るまで、何度も何度も犯された。


 それからは紅蓮の身の回りを世話することになり、夜の相手もたびたびさせられた。
 がさつで気まぐれな魔将軍には振り回されっぱなしだったけれど、の瞳には、いつの間にか以前のような輝きが点るようになっていた。
 捨てていったあの男を許すことは出来ないけれど、彼からもらったたくさんの幸せ、楽しかった日々と愛し合っていた充足感・・・そんなものまでも否定することはないのかも知れない。
 そう、思えるようになっていた。

「こうしていると、あなたに殺されるかも、って怖くなる・・・」
 自分の下で小さく震える、脆弱な人間の女の一言は、紅蓮の気分を更に良くさせた。
「そりゃそうだろ。俺様の前で死の恐怖におびえない人間はいねぇ」
 褒美だとばかりに、の奥をいっそう強く突いた。
「うっ・・・あ、あ・・・」
 魔のものに、屠られる。
 背筋の凍るような恐怖は、ぞくぞくさせる歓楽に直結している。
 髪を乱し嬌声を上げて、気をやるまで、そう時間はかからなかった。

 相手が魔将軍じゃなくても、男の前で裸になるというのは、本当に無防備で怖いこと。
 紅蓮が上機嫌だったので口にはしなかったが、が思っていたのは本当はそういうことだった。
 体の交渉は、命がけだとも言える。誰とであっても、いつでも。
 それでも、今や心までも開いて紅蓮に身を委ねているのは・・・。
「・・・好きになっちゃったかしら」
 思わず口に出てしまった呟きは、隣に寝転がっていた紅蓮に拾われた。
 こちらに背を向けていたから、寝ているのかと思ったのに、彼はいきなり体を反転させた。
「ハァー? やめとけやめとけ。そりゃ俺様にホレんのは分かるけどよー。人間ごときが、後で泣くことになるぜぇ」
 でも顔は嬉しそう。この人、結構お調子者なんだから。
「何笑ってンだよ」
 バレた。
 紅蓮は再びの上にまたがった。
「・・・ま、おまえら虫ケラみてぇなモンだからな。せいぜい楽しんだ方がいんじゃねーの」
 そう言うと、キスをしてきた。
 は目をパチクリさせる。紅蓮が唇を求めてくるなんて、初めてのことだったから、ビックリしてしまったのだ。
 その反応が彼にとっては気まずかったのか、ムッとした顔をして、のしかかってきた。
 さっきより更に荒々しくめちゃくちゃにされて、それでもの体は喜んでいる。
(本当なのかな・・・?)
 自分の心ながら、よく分からない。
(・・・恋かしら)
 甘くてふわふわしたものとは違うけれど。
 流されるまま、もう少し、翻弄されてみようかな・・・この、魔将軍さまに。
 半ば投げやりに、思った。








                                                             END



       ・あとがき・


せっかくタンバリンを読んだので、もう一本。怖くて自分勝手で、でも結構お調子者で何かを求めている。そんな紅蓮との恋(?)です。
時々、乱暴な話を書きたくなるんだけど、乱暴された相手を好きになってしまうように書いてしまうのは、私のズルさ。そうしないと裏行きなので・・・。
でも、現実でそういうのは許せない。あくまで物語だからです。
妄想じゃ飽き足らず犯罪に走るなんてーのは、妄想族に対する冒涜だ!

本文でも書きましたが、本当に、裸って、無防備で危険。だから、本当に好きで信頼できる相手じゃないと、晒せない。晒しちゃいけない。
ある意味命がけです。




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