ダブルL
恋人であるLの現在使っているホテルで、は資料整理などしながら、ゆったりとした気分で昼下がりを過ごしていた。
Lは、今日は東応大学の入学式に行っている。キラ捜査のため、わざわざ受験して入り込んだのだ、しかも首席で。
すごい人だ、Lは。そしてそんなすごい人の恋人であることが、いまだに信じられない心地のだった。
ガチャ。
ドアの開く音を聞いて、振り返る。
「おかえり、竜崎」
ゆっくりと入ってきた人物を見て、の表情は固まった。
Lじゃない。知らない、男。
「誰っ」
世界的な探偵の恋人として、危険に際してある程度の覚悟と対処はできているつもりだ。
身構えるを気にするふうでもなく、男は更に入り込んできた。
Lよりも背が高い。ゆるくウェーブのある黒髪の前髪は長くて、瞳に影を落としていた。
「いい部屋だな」
一通り見回し、に視線を固定する。
「Lは?」
「・・・・!」
L、と・・・!?
LはLとして人前に現れないし、この場所だってごく一部の関係者以外には極秘のはずなのに。
「あなたは・・・」
「そんなに構えることはない」
飄々と窓際にもたれ、煙草を取り出す。
「竜崎、っていうのか? 私は、奴の兄貴」
「お兄さん・・・?」
そう言われてみれば、似たところがあると言えなくもない。
とはいえまだ警戒を解くまでは至らないの前で、彼は煙草に火をつけゆっくり吸い始める。
「そう、兄貴さ」
繰り返す声に、なぜか笑いが含まれている。
「そして奴の同業者でもある」
だから入り込むのも可能だった、と?
しかしLから兄がいるなんて話は聞いたことがない。いや、彼は自分のことについてほとんど語ろうとしないので、不自然ではないといえばそうなのだが。
「・・・それで」
窓の外を眺めていた目を、再びに転ずる。
「君は? あいつの彼女?」
「・・・ええ」
「ふうん・・・」
口もとが笑っている。楽しげに。
兄L(なぜかの頭の中にこんな呼び名が浮かんでしまった)は煙草を灰皿に押し付けて消すと、に近付いた。
肩をつかみ、いきなりキスを仕掛ける。
「−−!?」
状況を把握したときには、すでに舌が入り込もうとしていて、はあがき、顔をそらした。
「−やめて何するの!?」
叫び、力一杯突き放そうとする。
兄Lは許さず、両腕を掴み上げると壁に押し付けるようにして動きを奪った。
恐怖でひるむに、もう一度容赦ないキスを与える。
「!」
噛まれて一度唇を離す。拘束は緩めず、背を屈めるようにしての顔を覗き込んだ。
「悪フザケはやめて、もうすぐ竜崎が帰ってくるわ!」
怖がってはいても、逃げたり屈したりはしない。精一杯見上げる瞳に、口もとの笑みで返した。
「いいね、気丈な子って好きだよ・・・でも」
不意に調子は変わって。
「気に食わない、あいつの恋人なんて」
吐き捨てるような言葉に、は混乱する。
「壊してやりたくなる」
長い前髪の下の双眸が、危ない光を宿している。凶暴なその色こそ、彼の言葉の裏付けだった。
壊したくなる? Lの恋人である自分を? それとも、その関係そのものを?
彼の兄というこの男が、なぜ。
「別に、暴行に及ぶつもりはないよ」
また声を柔らかくするが、ペットに対するような優しさには、嫌悪感しか抱けない。
兄Lは片手を離し、その手でのフェイスラインをなぞった。首筋にまで下ろす。反応を試すように、ゆっくりと。
片手は自由になったのに、動かすことが叶わない。力を吸い取られていくようで・・・。
「Lの知っている・・・Lを知っているこの体を、私にも見せてくれないか」
「何、言って・・・」
変だこの人、どうかしてる。
は認めたくなかった。自分自身もどうかしているという事実など。
ちらり、こちらを見下ろす瞳・・・からめ取られ動けなくなる。
確信したような笑みを浮かべ、兄Lはの首筋、今触れていた部分に顔を近付けた。
「君の口から聞きたい」
ぺろり、いたずらをするように舌で舐める。
「私に抱かれたい、と」
言葉が、小さな振動としてじかに肌へと染み渡る。抗えない魔力が、を侵食してゆくように。
「・・・さあ」
残った片手も自由にしてやると、とたんにふらつく身体を軽々支えた。そのまま抱き上げ、奥の部屋へと連れて行く。
大きなベッド・・・がLと何度か肌を触れ合わせた場所・・・そこに下ろし、覆い被さるようにして顔を見つめる。
「言えよ」
「・・・や・・・」
弱々しい声、半開きの唇もうるむ瞳も。何もかもが兄Lを煽る。
「私はLほど優しくはないよ」
服の上から胸をわしづかみにし、乱暴に揉みしだく。目線はの顔に固定したまま。
「それに、Lのように気が長くもない」
−あの人だって、そんなに気が長いわけじゃないのに−
は、ごちゃごちゃの思考に収拾をつけられぬまま、いつの間にか頷いていた。
とりあえずは、おとなしく言うことを聞いていた方がいい。この人、何をしでかすか分からないから。・・・恐怖に屈したフリは、実のところ、自分自身のために用意した言い訳に過ぎなかった。自身は気付いてもいなかったけれど。
「同じことは二度言わないよ」
突き放すように促され、は口を開く。
自分で言わなきゃ、許されない・・・。
「・・・抱いて、ください」
「ちゃんとこっちを見て」
両手で顔を挟まれ、不承不承目を合わす。
ゆるパーマの黒髪と黒い瞳、そこに浮かぶ冷たい笑みすらを、魅力的だと思ってしまった。
「抱かれたい?」
「・・・はい」
「いい子だ」
場所は彼の部屋、まだ外は明るく、そして相手は彼の兄。
自分は何をしようとしているんだろう。
背徳感に現実味はなく、ただ不実の露見を恐れた。
だって自分は悪くない。この人が、脅してきたから。
くらくらしてくる。強く目をつぶる。
早くこの忌まわしい時間が過ぎ去っていってくれればいい。
「まだ、何もしていないのに」
邪魔な服を開き、秘められた場所をあらわにすると、兄Lはそこに触れ、濡れた指を舐めなぶる調子で呟いた。
「そんなに欲しいのか?」
「・・・・」
屈辱に、奥歯を噛むようにして顔を逸らす。
「まずは味見だな」
膝の裏を押し上げるようにして、顔を埋め、舌を這わす。無意識に閉じようとする脚を、ますます大きく開かせた。
「恥ずかしがることはない。Lもしてくれるんだろ」
最初は探るように、ポイントを見つけしつこいくらいにそこをせめる。
「私の方がLよりうまいよ」
かきまわされて狂わされ、
「あ・・・」
いつもとは違う刺激に、思わず声がこぼれた。
「可愛い声だ、もっと聞かせて・・・Lの前でするように」
さっきからL、Lと、これは意図的なものだとも気付いている。
ベッドで淫行にふけりながら出されるその名・・・弟であり、恋人である、ここにはいない男の名・・・それを聞くたび、の心はズキリとした。
いやというほど思い知らされる罪悪感と、裏腹に増してゆく体の快感に、どうにかなりそうになる。
「や・・・っ、いや・・・」
「いいよ、正直になれ」
「そんな・・・あ」
強がる言葉も上の空、追い込まれて、落とされる。
もう戻れない場所へと。
「そういえば、名前も聞いてなかったな」
ぐったりとした身体から顔を上げ、今さらの問いを口にする。
「名前は?」
「・・・・・・」
「ちゃん、ね」
胸の膨らみを弄び、指で強めにつまむと、ビクンとはじかれたように反応する。
「この感じやすさ、好みだよ。君の中はどうかな」
兄Lがジーンズのベルトに手をかけたときだった。
「何を、しているんですか」
抑え込んだ声が、張り詰めた空気にひびを入れるように、冷然と届いた。
「竜崎・・・っ!!?」
ほとんど叫ぶようにして、真っ赤になりシーツを身体に引き寄せる。
取り乱すを一べつし、兄Lはおもむろにベッドを下りると、悠々と煙草を吸い始めた。
「お帰り、思ったより早かったな」
「なぜここに」
詰めた声の僅かな震えは、兄Lに伝わらぬものではなく。
は顔を上げられなかったが、Lの、兄Lに対する一種の弱味を感じ取っていた。幼いころに何かあったのかも知れない。
「入学祝いだよ」
そしていじめっ子(?)の兄は、余裕ある調子を続けている。
が恐る恐る上目を使うと、Lの握ったこぶしが見えた。いつもの不健康な肌色が、際立って白く見える。
「あなたは、また、私のものを・・・」
「壊したく、なるんだよ」
繰り返して、灰を落とす。
「」
埒が明かないので、Lは矛先を彼女に向けた。
ぺたぺたとベッドに近付き、シーツを剥ぎ取る。
動作や声からLの感情を推し量ることは困難で、それだけにその平静さをは恐ろしく感じた。怒鳴られ、詰め寄られた方がまだましだと思えるほどに。
一方、乱れた衣服を両手でかばい、顔も上げられずにちぢこまっているの、恐怖に打ち震える小さな姿は、Lの支配欲を刺激した。
「私を、裏切りましたね・・・?」
「そっそんなっ私・・・だってお兄さんが・・・」
「お兄さん、か。気に入ったよ」
壁際でくっくっ、笑っている自称兄の呟きは黙殺して、の腕を掴む。乱暴なほど強く。
「言い訳はいりません。拒もうとすればできたはずです」
兄Lのやり口は熟知している。・・・そう、拒めるようでいて選択肢はないことまで、よく分かっている・・・。
その上でLは責めを止められなかった。
「それなのにあなたはそうしなかった。誰にでも許すような女だったんですね」
「私の話も聞いてよ!」
自分ばかりなじられる理不尽さに、黙ってはいられない。目線がぶつかると、Lの無表情にぞくりとした。
「話を聞く必要もありませんよ。カメラの映像を見れば分かることです」
「−!?」
隠しカメラ!? この部屋に!?
いや、彼はLだ。留守中にそういったものを作動させていても、何ら不思議ではない。むしろ当然といえる。
記録されている・・・さっきまでのあの淫行が、あまねく彼の目に晒される・・・。
「いや・・・っ!」
耐え切れず逸らそうとしても、押さえつけられ叶わない。視界の隅に、紫煙をくゆらす兄Lの退屈そうな顔をとらえた。
「許して・・・許して竜崎」
次に口をついて出たのは、懇願の言葉。全て投げ出して許しを請う以外、残された道はないのだった。
「さあ、どうしましょうか」
感情のこもらない丁寧な言葉が、の心を冷ややかに撫でる。泣く暇も与えられず腕を引かれ、ベッドから引きずり下ろされた。
強く背中を押され、よろける。Lがこんな乱暴な扱いをするなんて・・・あぜんとし混乱するは、兄Lにしっかりと受け止められていた。
「何だ、私にくれるのか?」
のんびりと、兄Lは吸いさしの煙草を灰皿に置く。
「あげません。は私のものです」
モノ扱いされていることに文句をさしはさむ場合でもない。言葉のないの体を、Lは背後からまさぐり始めた。
「おしおきですよ」
乱れ果てた服の隙間から手を差し入れ、素肌に触れる。自分の知らない間にこんなにも熱っぽく潤っていることが気に入らず、踏みにじる気持ちでめちゃくちゃにいじりかき回した。
「あ・・・あ」
敏感な部分を知り尽くしているLにかかっては、異常な状況への躊躇も忘れ、早々にとろけさせられてしまう。艶っぽい声が上がるのに時間は必要なかった。
「他の男の目の前で、よくここまで乱れられますね」
巧みな手を休めず、わざと意地悪な調子で吹き込む。
「他の男他の男って言うな。兄弟じゃないか」
「尚更です」
体の奥から溢れ出てきた新たな蜜液が、音を立て指にからみつく。
そのまま強く刺激すると、の声が一段高くなった。
「・・・そうですか、兄に支えてもらって兄に見られているからこそ、いつもより感じているんですね・・・こんなに」
「やっ、あ・・・!」
びくんと体を震わす。
「がこんなに淫乱だったなんてね」
「嬉しいクセに」
兄Lの茶々に眉をひそめ、Lはジッパーを下ろした。時を移さず、の中に自分自身を埋め入れる。
不自然な体勢で強く突き上げると、苦しげにも聞こえる嬌声が、押し出されるようにの口から発せられた。
「う・・・あぁ・・・」
こうしている姿も、全部撮られている・・・。
不意に自覚するも、その事実すら感覚を高めるファクターにしかならず、Lの吐いた「淫乱」という言葉がぐるぐる点滅して、力がとめどなく抜けてゆき、しがみついたのは兄Lの腕で・・・。
「しっかり応えてやらないと、許してもらえないかもよ。ホラちゃんと立って」
「や・・・っ」
手を離すフリをしたとたん、崩れ落ちそうになる小さな体を、兄Lは正面から支え直してやった。
官能と後悔と羞恥と恐怖と、さまざま交錯する中で、目を潤ませ声を上げる。そんなを見つめるうち、兄Lもたまらなくなり、背を屈めキスをした。
「・・・は私のものだと言ったはずです」
弟の抗議に答えたのは、柔らかな口腔内を存分に味わった後のこと。
兄Lは顔を上げ、の頭越しにLの顔を見る。
「この状況で何もするなと? それでなくてもギリギリだよ」
それも罰のつもりだなんて、この人相手にとても言えない。Lは目を伏せ、行為に没頭した。
兄Lはそれをいいことに、再び唇を合わせ舌をからめる。に添えるのは片腕だけにし、右手は体のラインに沿わせ徐々に下ろしてゆくが、バストの部分でその手は止まった。
Lが手を後ろから回し、服を乱暴にまくり上げて両の胸を揉んでいるためだ。
熱を持ちピンクに色づいた柔肌が、激しく弄ばれるさまは、上から見るとますます淫靡でそそるものだった。
「生き地獄だな、ある意味」
兄Lはひとりごちて、指をの下半身に伸ばす。先刻じっくりと味わわせてもらった女の部分にあてがうと、
「ああッ!」
ひときわ大きな声が弾けた。
「や・・・ん、そこ、は・・・」
兄Lの腕に爪を立てる。
Lが与える律動に合わせ、もう一つの刺激が脳をとろかし体の芯を揺さぶる。
立ったまま二人の男に挟まれて、絶え間なく襲いくる快感に身悶えし声を上げ・・・その痴態は全て記録されている・・・それすら興奮を高める、自分の異常性。もう達しようとしている。何も考えられなくなる。
「やぁー・・・っ、もう・・・」
「ダメだ・・・その前に誓いなさい、貴女が誰のものであるか・・・もう二度と、裏切らないと」
Lの声だけは、脳に直接届いた。血管に入り込んだかのようにの全身に行き渡り、呪縛となる。
この先、決して逃げられない。一生ほどの約束を課せられるのだと。頭では考えられずとも、体の深いところに、刻みつけられる。
「誓う・・・わ」
そしては、求められるまま口にした。
「私は、竜崎・・・貴方のもの。絶対に裏切らない・・・だから・・・」
「確かに、聞きました」
ぐっ、と、突き上げる。
彼女の今の望みを遂げてやるために、激しく何度も。
「・・・あ−−っ!」
大きく身を逸らして、果ててしまうまで。
「私の方は、どうしてくれるんだ?」
気をやって力の抜けてしまったの体を支え、兄Lは長い前髪の下からいたずらっぽい目線を送る。
「ちゃんがダメなら、お前が処理してくれるのかな?」
「何言ってるんですか」
を奪い取るように抱きかかえ、ベッドに寝かせる。そっとシーツをかけてあげた。
「あなたモテるんでしょう? その辺でいくらでも調達できるんじゃないですか」
「手厳しいね、今日は。まぁいいや。また会おう、ちゃん」
投げキッスを残して、隣の部屋へ消えていった。
Lは背中を目で追っていたが、ドアの閉まる音と同時に腕を引かれての方へ向き直る。
「ここに、来て。竜崎」
「」
無心に求められ、胸に痛みを覚えながらベッドに上がる。の隣に身を横たえ、その手を両手で握りこんだ。
「すみません、ひどいことをしましたね。あなただけが悪いわけじゃないのに」
嫉妬と、自分の中の性癖とに、狂ってしまったことは否定できない。
「ううん、大丈夫。・・・こうしていて」
まだもやのかかったような頭では、何も考えることはできないけれど。
誓いが、心からのものだということだけは、はっきり言える。
Lに優しく包まれて、は目を閉じた。
・あとがき・
DEATH NOTE初のダブルキャラドリーム、LLでお送りします。
ダブルキャラドリームはかづなの造語ですので、一般に通じる言葉ではないです。お相手キャラが二人以上のドリームを「ダブルキャラドリーム」と言っております。
こういった複数キャラでのドリームって大好きなんですよ。
LにハマってLドリームを書き始めたとき、是非いつかダブルキャラでも書いてみたいなと思っていました。デスノートでダブルキャラなら、Lと月だろうなと当然のように思っていたのですが・・・。
LとLが降ってまいりました。
結構世間にはあるんですね、認められているわけですよ、顔出し前のL・・・初期Lという存在は。
初期Lと竜崎、ここでは兄LとLというふうに呼び分けていますが、顔出す前と出した後では別人のようですから。
兄と言っていますが、私の心の中では、初期Lを扱ってらっしゃるサイトさんで多かった設定にのっとって、義理の兄だと思っています。
兄LとLの関係は謎ですが、なぜちゃんがいきなり襲われたのかも謎ですが(笑)、つまりはご都合主義ドリームということで。単に二人とからませたかったの!
途中まで星矢で書いたダブルキャラ「initiative」にそっくりだったので、どうしよう変えようかとも思ったのですが、別ジャンルだしいいかとそのままいってしまいました。セルフパクリ。最初は兄Lの言葉遣いに「私」が似合わず、下書きの途中から「俺」にしていたのですが、やっぱりマンガに合わせて「私」をつらぬきました。マンガの中では、ずっと「私」だものね、モノローグですら。
兄Lの目ってどんな目なんだろう。
また兄L(L兄と書いてあるサイトさんもありましたが、どういう呼び方が一般的なんでしょうね?)を書きたいですね。なかなか打ちこみの時間を取れず、大晦日になってしまいました。H17の締めくくりドリームです。
来年はもっとLのドリームを増やそうと思っていますので、どうぞよろしくね。
H17.12.31
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