「ペコポン侵略のためには、まずペコポンの研究から・・・ってねェ。メス代表として、アンタを研究させてもらうぜェ」
「・・・なんで、私?」
 純粋な疑問を口にすると、ぐるぐるメガネの黄色いカエルは、喉の奥でクッククク・・・と笑った。
「アンタ俺好みだからさ」


 
CRAZY LOVE


 姉である秋の家へ、久し振りに遊びに行ってみたら、そこは地球侵略をもくろむ宇宙人の巣窟と化していた。・・・いや、実際は、カエルみたいな居候が数匹と女の子が一人、住み着いていた。
 最初はビックリしたけれど、姪の夏美たちが侵略者をうまくあしらっている様子に安心したこともあり、はすっかりケロロたちと仲良しになった。
 そんなわけで、以前より足しげく姉の家に通うようになった、今日もケーキを手土産に遊びに来ていたのだが。
 あまり顔を見せないメガネの黄色ガエル・・・クルルに言葉巧みに誘い込まれたクルルズ・ラボ内で、先ほどの言葉をかけられたのだった。
「研究・・・」
 呟きながらも、異星のハイテク機器たちが作り出す光景に、は珍しげにキョロキョロしている。
「今日のところはデータだけ取らせてもらおうか。そこに座りな」
 言われるままスツールに腰掛ける。
 自分でも不思議なくらいに危機感というものは湧かず、それどころか興味や好奇心が先に立って結構ワクワクしていた。侵略者・・・宇宙人と二人きりだというのに。
 二人きり・・・そう、二人きり。その事実に、今度はドキドキしてしまう。
「・・・!?」
 ガチャン、ガチャ。
 どこからともなくアームが伸びてきて、の手首と首に輪っかのようなものをはめる。胸の、心臓の位置にも、円い機械がくっつけられた。
「準備OK、っと」
 対象に背を向けるようにコンソールに向かい、キーを叩く。画面左にはの姿、右側には波型のグラフが何本か現れた。
「緊張してんな。心拍が上がってるぜェ」
 この器具で、脈や体温を測定されているのだとは悟る。画面のグラフがそれを表示しているのだろう。
 でもこの侵略者は知らない。心拍の上昇が、緊張に由来しているものではないということを。
「クッククク・・・」
 無造作にキーを操作すると、の顔がアップになる。いくつも備えたカメラで、アングルもズームも思うままだ。
 きめの整った肌、浮かぶ表情には恐れも戸惑いもなく、ただただ、きょとんとしているようだった。
「よう・・・何とか言ったらどうだい?」
 焦っているのは、こっちの方だ。
 自覚しながら、クルルは口にせずにはいられなかった。
「・・・すごい技術なのね。この機械とか・・・さすがは宇宙人」
「・・・ケッ・・・」
 的外れもいいところだ。
−嫌えよ、俺を−
 データを存分に取り終えるまで、とうとうクルルは一度もを顧みることがなかった。

「この次は、実験をさせてもらうぜェ」
「ええ、私でよければ」
「・・・クククッ、アンタ変わってるねェ・・・」
「お互い様でしょ。じゃあねクルル・・・曹長、だったっけ?」
 にこやかに手を振る鼻先で、扉をぴしゃりと閉めてやった。
「ク・・・変なペコポン人・・・」
 口端を吊り上げるいつもの皮肉な笑みが、独りきりになると同時に立ち消える。
 理由のハッキリしない苛立ちが、もやもやと心に広がっていた。

 その一週間後、今度は呼びもしないのに一人でノコノコとやってきたに対し、クルルは表には出さぬものの幾分困惑していた。
「実験、されたくて来たのか」
 忙しさとそっけなさを装い、背を向けたまま問うと、こっくり頷く気配がした。きっと、微笑を浮かべている。ちょっとはにかんだ表情が、見もしないのによく分かる。
「じゃ有難く使わせてもらうぜェ。そこのベッドで、服脱いでもらおうか」
 冷酷なほど無感情に放たれた言葉。それなのにの体の芯は、ぞくぞくと震えた。
 黄色くて丸い後頭部を見つめながら、気も遠くなるような高揚感に、浅く何度も息を吐いた。

「何でそう従順なんだ?」
 椅子ごと振り向くと、下着姿でベッドに腰掛けているは、自分で自分を抱くようにちぢこまっていた。
 だがやはり、表情に怯えは見えない。クルルは軽く舌打ちをした。
「ちっとは嫌がってもらわないと、俺としちゃつまらねぇな」
 拒否してくれればいい。二度と来たくないと言うまで傷つけたい。
 ・・・そうしないと、何をしてしまうか・・・否、自分がどうなってしまうか・・・。
「だって、私が良くてしてるんだもの」
 可愛らしい顔立ちに似合わぬ意志の強さを、瞳の中に見た。
 直視は出来ずに、クルルはすぐにそらす。
「まさかこの間俺が言ったこと、真に受けてんじゃねェだろうな」
『アンタ俺好みだからさ』
「・・・方便だぜェ」
 こぼれてしまったものは、偽りの中にまぜっかえして。
 本心なんて誰にも知らせない、知らせるわけにはいかないから。
「ううん、そんなこと関係ない・・・」
 寒いのか、語尾がわずか震えた。
「・・・ただ、クルルに会いたかっただけ・・・だって・・・」
「クーックックックッ・・・・」
 いつもの陰険な笑い声で遮る。それ以上聞きたくもない。
「ペコポンの女にありがちな、勘違いか妄想か? どっちにしろ俺はアンタをモルモットとしか見ちゃいねぇがな」
 すとん。椅子を降りて、の方に向かう。ぴこぴこと可愛らしい足音がついていく。
 身軽にベッドへ上がると、キャミソールの華奢な肩紐にくいと指をかけた。
「これも脱ぐんだよ・・・全部だ」
「・・・・・」
「何なら俺が脱がせてやろうか?」
 女が見せたわずかな躊躇に畳み掛ける。走って逃げ帰ってしまえと。
 しかし、クルルの中の相反する期待に沿うように、はするりとキャミソールを脱ぎ捨ててしまった。
「・・・クク・・・いい度胸だぜェ。それなら、ペコポン人が年がら年中溺れてる、肉欲ってやつを調べさせてもらうとするか」
 意外なほど強い力でベッドに押し倒され、分厚いメガネの黄色い顔が近付いてきても、はなすがまま。
 ただ体中が心臓になったかのように、ドキドキが響いていた。

 それから、小一時間も経って。
 全てが終わり、ベッドから離れると、クルルは早速キーボードに向かい、何事か打ち込み始めた。
「誰にも言うんじゃねえぜェ。このことは」
 こんなこと、誰に言えるものか。ため息をこぼしながら、は身支度を整える。
 最大まで引き出された快楽の後の、体のほてりが鎮まらない。
「・・・また、来るわ」
「正気かぁ? 酔狂だねェ・・・」
 こちらを一瞥もしない作戦通信参謀どのの嘲笑に、微笑みで返して、は出口に立った。
「・・・恋って、そーゆーものよ」
 小さな小さな呟きは、彼に届いたろうか。
「それじゃさようなら、クルル曹長」
 最後ははっきりといとまを告げて、ラボを出た。
 すっかり行ってしまったことを確認してから、クルルは椅子の背にどっともたれる。
「クク・・・今度は、ケロン人とペコポン人の間で、生殖行動が可能かどうか実験してみるかぁ・・・?」
 キーボードに置かれた指は、いたずらに打鍵するだけ。
 分厚いグルグルメガネの上に、いくつもの光る記号や文字がただ流れてゆく。
 ペコポン人の女に興味を持って、だからといって報われないことは重々分かっていたから。
 無関心でいられるよりは、思い切り嫌われた方がずっといい。・・・そう、思っていたのに。
 希望を、持たされてしまった。
 現に、この次を心待ちにしている。苦々しくはあるけれど。
 このラボの中で、を独り占めすることを思っただけで、体中が熱くなり思考がおかしくなるのだ。
 こんなことは、ケロン軍本部にいたころまでは、一度も経験したことがなかった。
 自分の感情なのに、持て余して制御できないなんて・・・。
「・・・これも恋・・・ってか。俺もオッサンのことを笑えねぇなぁ・・・ククククッ・・・・」
 陰にこもった独り言が、キーに置いた手元に落ちた。




                                                             END



       ・あとがき・

なぜかハマった、ケロロ軍曹。
子供と一緒にDVD見たりする程度だったんだすが、今急にハマっちゃいました。これまた今更感がありますけどね・・・。
ギロロとクルルが特に好き。
わけてもクルルはドリームのネタが浮かびやすく、早速書いてみました。
クルルたちはあれで成人とのことなので、こんなドリームも私の中では違和感ナシです。ちょっと妖しい感じね。
擬人化というのも、世間では多くあるようだけれど、私は当分はケロン人で満足です。

当サイトも、いよいよよろずの様相ですね・・・。




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