びしょぬれの
双児宮を飛び出す。外はとっくに土砂降りで、それでもカノンはそのまま走った。金牛宮に届かぬうち、雨のシェード越しに人の姿を認め、スピードを落とす。
彼女は動かない。背を向けたまま、天を仰ぐように、たたずんでいた。
五段ほど上から、カノンは名を呼ぶ。
「」
ぴくん、と肩を震わし、それからはこちらを振り仰いだ。唇が小さく動いたのを見て取れる。カノン、と言ってくれたのかも知れない。
カノンは少し安心して、もう数段、下りた。表情ないの顔は青白く、今しもこの激しい雨の中に溶け込みそうなほど弱々しく見えた。
「カゼひくぞ」
「構やしないわ。カノンこそ」
人のことばかりかまけているが、同じく傘もささないカノンだってもう髪から雫を滴らせている。
びしょぬれなのは、体だけではなく、心も。
の涙を、カノンは見ていた。雨に流そうとしても、決して紛れることのない−。
黙って、抱き寄せる。
腕の中で、こわばる身体を感じていた。無理もない、今までこんなふうに触れることはおろか、気持ちのかけらも口にしたことはない。いつも冗談ばかりで・・・いつもは笑っていたのに・・・。
雨が、友達という名の堰を押し流した。
とどめようとする腕ごと、半ば強引に抱きすくめ、キスをした。軽く触れ合うだけで一度離し、反応も確かめずにもう一度、今度はもっと深く。
突然唇を奪われ、驚きよりもは呆然としていた。
強い雨音に耳を聾し、気が遠くなりかけた。
あまりに激しいキスに、思わずカノンの服を握り締める。・・・それも、びしょぬれの。
口腔を乱されれば、肌に当たる雨水にすら感じるほど官能を高められる。
ますます濡れゆくのも構わず、長いキスをした。
「シャワー・・・」
「後で浴びさせてやるよ」
びしょぬれの服を脱ぎ捨て、びしょぬれの体を合わせた。
雨の匂いが、お互いから立ちのぼる。
髪や体から落ちる雫が、ベッドを濡らしてゆく。
冷たい体が熱を帯び、二人また濡れゆくまで、そう時間はかからない。
雨の中にいるのも、ベッドの中にいるのも、同じくらいに。
「・・・俺がそばにいてやるから」
頬にキスすると、まだ涙の味がした。
それでもは、夢の中のように、微笑んだ。
「ありがとカノン・・・好き・・・」
つられて笑う。びしょぬれの髪をかき上げて。
「俺も好きだ、お前のこと」
「襲っちゃってからじゃ、順番が違うよ」
いつもの口調に、カノンもいつものふざけがかった態度で抱きついた。
「まあいいだろ。熱いシャワーでも浴びるか、一緒に」
「なんか、イヤラシイ」
「何を今さら」
「・・・ふふ」
首に腕を回し、の方から唇を寄せる。
素肌を密着させて、そっと優しい、キスを交わした。
・あとがき・
キスアンケートで、カノン一位なんですよね! すごいぞカノン。
カノンにいただいたコメントの中から、以下を採用させていただきました。
・どしゃぶりの雨の中で、濡れるのもかまわず激しいキスをしてほしい!
・突然唇を奪われるなんて、素敵ですね♪
・どしゃぶりの雨の中...激しいキス、に萌えたので同意の一票をvv
・いっそ襲っちゃってクダサイ。カノンなら許す。(オイ)
・最初は軽めに触れるだけ。唇離して二回目は深く。相手が服握り締めても口内蹂躙。
出だしどういう状況なのか明示してないんですが、あまり説明シーンを長くしたくなかったので、何でちゃん土砂降りの中で泣いていたのか、それはご想像にお任せします。
何て不親切なドリームだ!(笑)
個人的には、もう全部すっとばして書きたいシーンだけ書くってのもアリだと思っているんですが・・・。
ちょっと詩的にしたので、何となくわかりにくい文章になったかな。タイトルはCHARAの歌からまたもらいました。歌の内容とは全然関係ないけど。
カノン好きなので、楽しく書けましたよ。
コメントくださった方々、ありがとうございました!
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