vs.ビリー



「うまいのォ」
 パクパク。
「こっちもうまい」
 モグモグ。
の作るメシは、全ー部、うまい!」
 コージの顔いっぱいに広がる笑顔、こっちも嬉しくなっちゃう。
 空のお皿が、どんどん積み上げられてゆく。ちゃんと味わってんの? とか、誰が作っても同じなんじゃないの? とか突っ込みたくはなるけれど、ここまで気持ちのいい食べっぷりを見れば、作った甲斐もあったというものだ。
「何じゃ、は食べんのかァ?」
 あらかた平らげた今頃になって、が箸を持ってもいないことに気付いたらしい。
「・・・見てるだけでお腹いっぱい」
 幸せな気持ちで、胸もいっぱい。
「ほーかァ」
「うん」
 テーブル越しでニコニコしている彼女に、コージもまた笑い返した。

 シンタローが総帥となってから、ガンマ団は殺し屋軍団じゃなくなった。とはいえ、コージ自身の日々は前とあんまり変わってなくて、相変わらず危険な仕事にもかり出されている。
 でも、という存在が出来てから、大げさかも知れないけれど、人生が変わってしまった。
 例えば休日が、こんなにほんわかと甘くて、楽しいものとなったように。
「・・・幸せじゃあ」
「本当に食いしん坊ね」
 幸せの理由は食べ物だけじゃないんだけど。あえてには何も言わず、食べ続ける。
 そのうち、真向かいに座っていたが立ち上がって、コージの隣に移動してきた。体重を預けるように寄り添うと、コージは一度箸を止めて、少し首を傾けるようにを見下ろす。
 丸ごとを受け止めてくれるような、大らかな眼差しが嬉しい。包み込まれ、はもっと近付いた。
 体なんてゴツくて大きくて、顔にもざっくり傷跡があるけれど、こんなに優しい目をしている。
 そこが好き。気持ちを自覚すると、いてもたってもいられないくらい、好き。
「あーうまかった! さあ、出かけるけん支度じゃあ」
「えっ」
 せっかくラブラブ気分に(一方的に)浸っていたのに。
 コージはもう立ち上がって、を待っている。
「うまいもん食いに行こう」
 ニッと笑いかけられ、はあぜんとする。
「まだ食べるのー?」
 どんな胃袋しているんだ。
まだ食うちょらんし」
「そうだけど・・・」
 彼と付き合うようになってから、必然的においしいものをたくさん食べる機会が増えてしまって・・・。ウエストを見下ろし、はため息をついた。
「ビリーやらなきゃ・・・」
 ブームに乗ってビリーズブートキャンプに入隊してみたはいいが、あまりの厳しさにサボりがちのだった。
「何じゃあ、あんな毛唐見て何がええんじゃ。わしだって体じゃ負けちょらんけんのォ!」
「いやいや別にあれ、観賞用のDVDと違うから・・・って何脱いでんのよー!?」
 いつの間にか上半身ハダカになって、ムキムキポーズを取っている。
「どうじゃー」
「いいからもうやめてってばー」
 これはコージ流の嫉妬なんだろうか。磊落なようでいて、嫉妬するんだ・・・。珍しいものを見た気分だったが、とりあえず止めておく。
 確かに、いい体なんだけど。
 傷だらけの、たくましい、何といっても大きな、体・・・。
「・・・・・」
 芯から湧き起こった衝動を、は止めようとしなかった。二人きりの部屋で、何を遠慮することがあるだろう?
 今、出かける前に。
「コージ・・・」
 まだ自慢のボディを見せびらかしているコージに、正面からぎゅむっと抱きついた。
 コージは少し驚いたようだったけれど、よろめきもせず、抱きとめてくれた。
 わざと強く押し付けるようにギューして、が苦しがるそぶりを見せると少しゆるめて、でも離しはしない。
 二人磁石みたいにくっついて、じゃれながら離れない。
「ビリーとかいう野郎よりええじゃろ」
 まだ張り合っている。は笑って頬ずりした。傷のある、広い胸板の感触も、大好き。
「コージの方がいいに決まってる」
 いつになく素直な気分で見上げたら、いきなりガバッとキスされた。火をつけちゃったかなとドキリ。
 案の定抱き上げられて、ベッドへダイブ、息つく間もなくのしかかられて唇ふさがれて・・・。巧みでも何もなくても、もうその気にさせられちゃってる、これこそがコージの手管なのか・・・なんて、ごちゃごちゃ考えられないほど昂ぶって、シンプルに浮かび上がるのは、やっぱり、
「・・・好き」
 その、一言だけ。
 コージの巨体の下で、あえぎながら。
 出かけるのはまだしばらく後になりそう−。






                                                             END



       ・あとがき・


久し振りのパプワくんです。
今、上の娘がさかんに「南国少年パプワくん」のビデオを見ているので、私も付き合って見ていたらちょっと書きたくなっちゃって。

コージって書きやすい。
時間的には南国少年パプワくんとPAPUWAの中間くらいのおはなしですね。

地の文も崩して軽くラブラブで書いてみました。
ちなみに私、ビリーズブートキャンプをやるどころか見たこともないんです・・・。職場の同僚やら周りの人では、結構頑張っている人多いみたいだけと、私はゲルマニウム温浴とかブルブルマシーン、岩盤浴にハマっている派なので(笑)。





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