は天上界の姫であり、乱世たち超人兄弟とは古くからの縁で親しくしていた。
「リキッド、かけ算パズルやろうよ!」
「何だよそらァ、嫌がらせかァ?」
顔をしかめながらも、には甘いヤンキーは、その謎のパズルに付き合ってやっている。
「、それ終わったら、一緒に降霊の儀式をやってみないか」
次兄の忍も、にだけはこうして自分から誘うということが出来る。・・・誘いの内容はともかくとして。
「だァー」
まだ赤ん坊の末弟までもにすり寄ってゆくのを、乱世は一人離れた場所でテーブルに肘をつき眺めていた。
のどかでほのぼのとした、いつもの風景。
は自分たち四兄弟の可愛い妹であり優しい姉であり、アイドルなのだった。
(・・・)
胸がちりちり痛い。
いつからだったろう。
のことを、妹のようには見られなくなったのは。
色濃い男としての想いが、彼女の独占を渇望し始めたのは・・・。
BABY MAYBE
「あーあ、寝ちまった」
最後には天帝と床に転がりじゃれていたが、そのまま眠ってしまったのを、リキッドは苦笑して見下ろしていた。
「全くガキだな」
動かさずに、そっと毛布だけをかけてやる。
忍は末の弟も眠そうだからと、抱き上げて部屋を出て行った。
「オレもちょっと出てくる。乱世アニキ、のことヨロシク〜」
「・・・ああ」
リキッドは、長兄の眼に差し込んだ暗い色には全く気付かなかった。
「行ってきまーっす」
大らかに笑っている兄しか知らない三男は、そのまま遊びに出かけてしまった。
部屋に一人・・・いや、二人きり残されて、乱世は寸刻物思いにふける。
やがて遠い位置から眺めているのに飽いて、おもむろに立ち上がった。
窓から差し入る昼下がりの陽光が、を毛布ごとすっぽりとくるんでいる。
しどけない寝姿に、あどけない寝顔。
なぜにこれほど無防備に。
「・・・おい」
声をかけた。囁きよりも強く。
「起きろ・・・」
警鐘のつもりだった。
起きてくれ。
何かが変わる前に、壊れる前に。
頼むから、起きて−。
「ん・・・ん」
息苦しい。
うたた寝をして風邪でもひいたかな。
そんなことを考えながら、ようやく目覚めた。
ぱちりと開いた目の前に、長男の顔があったから、はふんわり微笑んだ。
「重いよォ、乱世・・・」
ところが乱世は、そこをどいてはくれない。それどころか、にこりともしない。
いつもと違う。
そうが気付くまでには、たっぷり時間が必要だった。
乱世は、ただ、待っていた。
我慢強く、ものも言わず、瞳だけで示唆しながら。
「・・・乱世・・・どうしたの」
の頬から笑みが立ち消え、代わりに哀れみと悲しみが刻まれてゆく・・・徐々に深く。
手を伸ばし、兄と慕っている乱世の頬に、手を添えた。
「・・・何だか辛そう・・・苦しそうだよ・・・」
「・・・・・」
そうだ辛い。苦しいんだ。
微笑んでもあげられないくらいに。
「・・・っ」
小さな手、向こうから触れてきてくれたその手に、すがりついた。
そのままのしかかり、花びらのように瑞々しい唇を、奪った。
「何で、黙ってるんだ・・・!?」
蹂躙して離しても、静かにしているが不可解だった。
嫌がって暴れて逃げてくれれば、止められるかも知れないのに。
正気に戻れたかも知れないのに−!
「・・・乱世が苦しくなくなるんなら、いいよ・・・」
覗きこむ瞳には、おびえの色もない。
哀れみすら慈しみの懐深さに変わっていることに、乱世は気付いた。
包み込むような限りない優しさで、はもう一度、笑んでくれた。
「だって乱世のことが好きだもの」
「・・・」
同情とも、妹としての立場とも違うのだと、彼女自身の瞳が告げている。
信じられぬ気持ちで、乱世は口を開いた。
「オレのことが、好き?」
はにっこりして、こっくり頷く。
ピンクの頬は恋に染まっているのだと、目にも明らかだったのに。
乱世は、問いを重ねてしまうのだった。
「忍よりも?」
「うん」
「リキッドよりも?」
「うん」
「天帝よりも?」
「・・・赤ちゃんじゃないの」
乱世があんまり真面目だから、笑ってしまう。
「オレを、選んでくれんのか・・・?」
笑ったままで、大きく「うん!」と答えた。そうして、首ったまに抱きついた。
今までと変わらぬ無邪気さのようでいて、の気持ちは変化していた。もう、兄妹のような関係には戻れない。
乱世のことが、好きだった。本当はもうずい分前から。
乱世もそう思ってくれたらいいのにと、願っていた。
兄弟たちのことは皆慕っていたけれど、恋の相手は乱世しかいない。キスの相手なら、乱世でなければ。
「・・・ホントかよォ・・・へへ・・・」
ようやく見慣れた表情になって、乱世はの髪をくしゃっと撫でた。
緊張の糸が切れてしまえば、ニヤニヤが止められない。
「悪かったなー。なんかオレ、思いつめちまって」
「・・・いいよ」
手を離さず、ぎゅっと引く。
「乱世になら、何されたって・・・」
「ばッ・・・おまえッ・・・」
狙っているのか、この上目遣い。
「そんなこと言ったら・・・、止められねえぞ」
殺人的な誘惑に、抗える男なんていやしない。
「止めなくていいってば・・・」
重なる目線と触れる手。吸い付くように、もう一度、キスを。
「・・・秘密な・・・」
そこから乱して乱されて。
「乱世・・・」
本当はとっくに求め合っていた二人、そのまま陽だまりのリビングで、睦び結んだ。
こんな秘密は、他の人とは共有できない。
乱世じゃなけりゃ・・・。
「乱世・・・ェ・・・」
大きな体の下で、苦しがりながら喜んでいる。
ひとつになれたことが嬉しくて、は何度も何度も彼の名を呼んでいた。
全部、乱世でいっぱいになる。
こんな幸せな瞬間、他にない。
「お前・・・ホント可愛いな」
食べてやりたいくらい。
狼みたいなこと言って、食いついてきたと思ったら、ちゅっちゅとあちこちにキスされて。
だるい体を動かせないは、されるがままに。
「」
抱き合う心地良さを、いつまでも味わえば、互いの恋が実ったことが、素敵な思い出として胸に点る。
決して消えない炎のように。
それから数日後・・・。
「乱世っ」
窓際であぐらをかいて新聞を読んでいる乱世の背中に、がばっと抱きついてみる。
大きな背中、がっしりした両肩はびくともしないけれど。
バサッ。
乱世は新聞紙を床に置いてしまい、片手を後ろに回すようにしての頭をぐりぐり撫でた。
ほっぺとほっぺがくっついて、片目をつぶる。
「エヘヘ・・・」
スリスリして、大好きな乱世をいっぱい感じていた。
「あーあ・・・やっぱり乱世アニキに行ったか・・・」
「・・・忍、もう生きていく気力なくなったよ・・・」
「あぶー」
もはや秘密でも何でもない。
のことを狙っていた弟たちは、長兄とラブラブしているシーンを覗き見て、それぞれため息をつくのだった。
「・・・」
見られていることに気付いていないのか、接近にたまらなくなった乱世は、の体をがばっと抱きこんだ。
「ひゃ〜」
バランスを崩した小さな体を、膝の上に引き込む。
「うわもう見てらんね・・・」
ドアを閉めたリキッドの後ろで、何かが光ったと思ったら、ブシューと不吉な音がした。
「ギャー忍にーちゃん、自殺すんなってーー!!」
すでに廊下は血の海、三男は急いで雑巾を取りに走らなければならなかった。
「邪魔者は退散、っと」
「何? 乱世」
「何でもねェよ」
実の弟たちを邪魔者呼ばわりしておいて、長男は可愛い彼女を思う存分抱き締めた。
乱世は体が大きいから、こうされると、いつもつぶされそうな気分になってしまう。
息が苦しくてあえぐ、その唇を、次にはふさがれた。
「ん・・・っ」
もがきながらも、最後にはおとなしくなって、ゆるやかな愛撫を受けている。
ぽうっと目を開けると、乱世はいつものような明るい楽しそうな笑顔をこちらに向けていた。
それが嬉しくて、も微笑む。
苦しそうな、悲しそうな顔を見せることは二度とない。
二人一緒にいることが、一番の幸せなのだから。
「、今夜は泊まってくか?」
低い声は吐息混じりで、セクシーな誘いに聞こえる。の体の奥をぞくりとさせるような。
「乱世の部屋に、泊めてくれるの?」
「いや、客間にだけど」
ぐッと顔を近付けて、やんちゃに笑ってみせる。
「夜中、忍び込んでいくから」
「・・・やだァ」
いつもの冗談のように乱世は言うのに、想像して感じちゃうなんて、はしたない。
「じゃ、決まりな」
ぽん、と頭に手を置いてきて、笑ってる。
乱世はきっと見抜いている。
「それまでおあずけね」
「どっちにとってのおあずけかなー」
「バカっ」
言い合いながらも、同じほどの期待で。
夜を待たず、最高に濃い口づけを交わした。
END
・あとがき・
このごろアーミンドリームばっかり書いていますが、エロがあまりないな・・・と思って。
大好きな乱世で、ちょっと大人ドリームを・・・と狙ったのですが、これまた大してエロになりませんでした。
HEROの世界観がああだからねェ・・・。
でも、乱世の甘々ドリームが書けて幸せです。
いつも大らかなイメージのある乱世の、せっぱつまった、らしくないところを書きたかった。
タイトルはICEの歌からです。
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