洗いざらしの



「竜崎ー、来たよー」
 Lとソファはセットのようなもの。
 今日も推理力全開ポーズで仕事に精を出している。
 はそんな相手の都合など委細構わず、いきなり背後から抱きついた。
「・・・あ、髪濡れてる。シャワー浴びたばっかりだね竜崎、ラッキー」
 すりすり頬ずりしつつ、胸いっぱいに息を吸い込む。
「・・・いい匂い〜」
「何が、ラッキーなんですか」
 会話が出遅れたのは、作業に区切りをつけたかったから。
 Lはキーボードから離した両手を上に上げ、恋人の髪に触れた。
「だって私、竜崎のこの匂いが好き・・・」
 髪もTシャツも洗いざらし、香料のけばけばしさはなく、ふんわり清潔な石鹸の匂いが立ち上る。
 いつもならお菓子の匂いが必ず勝っているところだが(もちろん、それも好きだけど)、歯も磨いたのだろう、今日は甘ったるさはなかった。
 少年のように無垢な香りを堪能していると、
、ここに来てください」
 優しく声をかけられ、目を開ける。
 は幸せそうな顔のまま、ソファのぐるりを回り、Lの隣に腰掛けた。
「もっと、嗅がせて」
 両腕を伸べて首にからませ、まだ生乾きの髪に鼻を埋める。
「竜崎・・・いい匂い・・・大好き」
 まじりけのないLそのものの粒子が、体中を満たすのを快く感じていた。
「私も」
 割り込むように、Lも鼻をすりつけてくる。
の匂いが好きです」
 シャンプーや化粧品、香水・・・それに、先ほど街中でまとってきた、雑多な匂い。を彩るそれらが、体の奥をじく、と刺激する。
・・・」
 少し荒くなった息遣い、吐息の熱さが耳に触れ、は体を震わした。
 彼の求めに気付かぬほど鈍感ではないし、また黙殺するほど残酷な心持ちもない。
 何よりも、同じほどのスピードで欲しているのだから。
「その前に、私もシャワー浴びたいんだけど」
「必要ありません、このままで」
「そんな・・・」
 やんわり振りほどこうとしても、両腕でしっかりロックされていて動けない。
「やだよー、私、汗かいたから」
 汗くさいというほどではないが、洗いたてのLと触れ合うには抵抗がある。
 それなのに、Lは、鼻をくっつけてしつこいほど嗅いでいる。
のこの匂いがいいんです・・・これがきっとフェロモンというものなんでしょう・・・」
 男としては、抗えるはずもない。
「イヤだぁ・・・竜崎だって、せっかく浴びたばかりなのに・・・」
「いいんです混ざり合いたい・・・」
 熱くなったら止められない。
 は抵抗を諦め、Lの体に手を触れた。洗いざらしのシャツは柔らかく手に馴染み、そのたった一枚隔てた彼の体をありあり感じさせてくれる。
「ぎゅってしてよ・・・」
 苦しいほど密着した部分から熱が生じ、揮発して新しい匂いを残す。
 包まれて二人は、溺れた。
 その場で貪るように、抱き合った。


「・・・もう一度、シャワーを浴びることにしましょう」
「一緒に浴びようか」
 冗談のつもりだったとしても、逃がさない。
 愛の証を受け止め乱れ果てた姿の、を抱き上げた。
「ちょっ・・・おろしてよー」
「一緒に浴びるんですよね」
 足をバタつかせるを抱いたまま、シャワールームに消えてゆく。

 ・・・そして洗いざらしの二人になれば、また何かが始まりそう・・・。







                                                             END



       ・あとがき・

Lってすごく清潔そうだな・・・と常々思っていました。
いつも同じような服装で髪もボサボサで、おまけにいつ寝てるかも分からない忙しさで。
でも、不潔な感じが全然しないの。
シャワーまめに浴びてそう。
そして無添加の石鹸など好んで使いそうなので、さっぱりとした匂いがするのよ。
「洗いざらし」って言葉がピッタリ!
・・・妄想人間でスミマセン。

映画のパンフレットで見たLの、Tシャツの洗いざらし感がとても良かったので、こういうドリームが浮かんだわけですが、今回は基本的にマンガのLイメージで書き進めました。

しかし、ちゃんとイチャイチャしてばっかりで、ちゃんと仕事してるの? L。


 





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