あなたと
Lを失って、はや6年。
あれほど愛した人を、忘れるわけではないけれど。
鮮やかに燃え上がっていた恋心も、穏やかな思い出となりつつある今、は新しい道を選んでいた。
Lを継いだニアと共に歩む道を・・・、優しく、ちょっぴり切ない心を抱いたままで。
「お疲れ様。今日はもう休もう」
「そういうわけには・・・」
「いいから」
パジャマみたいな白い服の、袖をくいと引いて抱き寄せる。ニアの細い髪を、ふんわり撫でた。
「Lっていっても人間なんだから、何より体を大事にしなきゃ」
そう、健康第一。ろくに眠りもせず、偏食ばかりで捜査に明け暮れていた人を、は知っている。
「・・・・」
母のような姉のような腕の中、ニアは安心して、目を閉じた。
が何を思っているのか・・・もっと言えば、自分の中に誰の面影を見ているのか、ニアは知っている。
言動のみならず、眼差しや言葉と言葉の空白からも、いつも感じ取っているのだから。
知っていながら、甘える仕草をし、ときに自ら求め・・・そんなふうに、とても深く、を愛していた。
「・・・一緒に寝てくれますか」
「もちろん」
優しい声を聞いて、の匂い・・・お風呂上りでも女を隠し切れない匂いに酔いながら、柔らかな身体に体をすりつける。
「添い寝じゃ、ないですよ?」
半ばふざけた口調に、くすくす笑いで返した。
月も沈んで夜は尚深く、ニアとを愛のしとねへといざなっていた。
コツン・・・
何かが窓に当たったような。それはごく小さな音だったのに、の耳にさやかに届いた。
「どうしたんですか」
恋人の異変に気付き、その腕の中ニアも顔を上げる。の目線を辿り、厚いカーテンによって遮られた窓の方を振り仰いだ。
「・・・何か、聞こえない?」
「風の音でしょう」
早くベッドに行きたくて、軽く手を引いてみるが、は動こうともせず、じっと耳を澄ましている。
コッ・・・
「ほら、ねえ、窓の外に何かいるんじゃないの」
「ここ何階だと思ってるんですか」
ニアの隠そうともしない苛立ちは、にも伝わっていたが、目を離せなかった。
胸の内がさざめく。何故か予感する。
あの窓の外に・・・ひょっとして・・・。
引き寄せられる、ふらりと。
一歩踏み出そうとしたとき、強く引き止められた。体全体でしがみついてきたニアは、大きな目でを見上げた。
「、もう、見えもしないものを見るのはやめてください。・・・いいじゃないですか・・・もう・・・」
「・・・・ニア」
切実な瞳が胸に突き刺さる。だけれど、それによっても、窓の外の幻影を消し去るまでには至らない。
あそこにいるのは、もしかしたら。
どうしても気になる。・・・でも・・・。
すがるような目のニアの、腕を振り切ってまで、行くべきなのか・・・。
☆ さん、どうしますか?
気のせい。ニアのそばにいる。
どうしても気になる。ちょっとだけ見に行く。
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