愛のかけら


「すっごくキレイ」
 息を大きく吸って、桜並木を歩く。二歩ほど後れて、Lがついて来ている。
さん」
 名を呼ばれ足を止めれば、それは大きな桜樹の下。
 花びらに隠れるように、Lはこちらをうかがっていた。
「私の誘いを拒まないのは、なぜですか」
 Lの言葉に、はドキリとした。
 確かには、Lに救われた。Lの推理がなかったら、あの事件の次の犠牲者はだったかも知れないのだ。
 だけれど、それ以来、時々鳴る携帯を着信拒否にしないのは、命の恩人だから仕方なく、なんかじゃなくて。
「・・・竜崎さんと一緒にいるのが、楽しいから、かな」
 笑顔は自然にこぼれた。
 桜よりもあでやかに咲いたを見て、Lは小さく、息をつく。
「・・・それなら・・・」
 の眼前に、棒つきの丸いキャンディが差し出される。
 まるで手品のような手際にきょとんとしていると、桜の空間に相応の静けさで、Lは囁いた。
「私を愛してくれますか」

 時が止まる、錯覚。

 風が花と彼の黒髪とを揺らす。
 酔い心地で手を伸ばし、飴を受け取った。
 YESの返事にかえて。
 ピンクと白のマーブル模様をちょっとだけ舐めてみると、イチゴミルクの甘い味がした。
 いつの間にかLが、いつもりぐんと背を屈めて近付いてきていて、同じようにイチゴミルクを舐めた。
 至近距離で目が合うと、キャンディを握った手に手を添えられる。
 ひらり。
 花びらがひとひら、キャンディに落ちて。
 気をとられた隙に、唇を奪われた。
 甘い甘い、キスだった。

 桜吹雪が視界を奪い、二人を隔離してしまう。
 春の暖かなしとねに横たわれば、の柔肌にも、淡い花たちがあまた舞い散る。
「生涯唯一の、恋です」
 桜と同じ色に染まったを腕に抱き、Lは普段の彼にはない熱っぽさで、だけどひそやかに、告げた。
「嬉しい・・・けど・・・」
 恋の楽しさも、失う哀しみも、は知っている。
 暗い色したLの瞳に、自分だけがいるのを見て取って、その一途さに痺れ、同時に少しおそれた。
「・・・だけです」
 言葉と肉体によって契り交わす。

 約束は、桜花に封じられ。
 愛のかけらたちが、果てなく降り注ぐ。
 鏡のように、ちらちら、二人の上に。

                                                                END




       あとがき


急に降ってきた話。忘れないうちにと書きました。
本当は別の話を書きかけていたんだけどね、猛烈に書きたくなったから仕方ない。

桜の咲く少し前、この時期に、一番、春や桜の話を書きたくなります。
今まで一体何本書いたかな。
大好きなんだよね。

実は続きますが、独立した話として読んでもらっても一向に構いませんよ。





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