パーティ済んだその後で
イヴに皆でクリスマスパーティをしようと言い出したのは誰だったか、いつの間にか自分の天秤宮が会場にされていて、ツリーや料理、酒などがどんどん運び込まれた。
予想をはるかに越える大騒ぎのうち、軽く日付を越えてしまい、はや２５日。サンタさんも寄り付きはしなかったらしい。
床にあぐらをかいて老酒を舐めながら、童虎は自宮を見回し苦笑していた。
転がった酒瓶、食べ残し、クラッカーやスプレーなどで散らかり放題散らかった中に、男たちがイビキをかいてザコ寝している。
ひどい惨状だ。
こんな中、起きているのは自分の他にあと一人だけ。
「あーあもう、風邪ひくよ」
放っておいても構わぬ奴らなのに、わざわざ毛布をかけて回ってやり、その次にゴチャゴチャのテーブルまわりに手をつけ始める。
優しい彼女のかいがいしい姿を見ているのも好ましかったけれど、童虎は声をかけ作業を中断させた。
「、そんなことは今やらなくてもよい」
「でも」
「こやつらが起きたら、片付けさせればいいことじゃ」
まだ気にしているふうの恋人を、手招きする。
今二人きりということにようやくも気付き、にわかに笑顔になった。床のものたちを避けて跳ねて、彼のもとに辿り着く。
床に座り込むと同時に両手を伸ばし、童虎にぎゅっと抱きついた。
お酒や料理や、パーティにまつわるあれこれをまとった童虎の匂いはいつもと違っていて、自分自身の気持ちが高揚しているせいもあり、もっと強く抱きつきたい気持ちになる。
「すまんのぉ。せっかくのクリスマスイヴなのに、こんなことになって」
「別に童虎のせいじゃないでしょ。ここは十二宮の真ん中なんだし」
処女宮も同じく真ん中だけれど、まさかあの宮の主がこんなことを許可するわけはない（ちゃんとパーティには参加していたけど）。
・・・それだけではなく。
童虎自身も、皆とワイワイ賑やかに過ごすのを望んでいたのだ、きっと・・・。
２００年以上の孤独を思いやると、気が遠くなりそうだけれど。はなりに、理解しているつもりだった。
こんなクリスマスイヴを迎えられたことは、彼にとってどれほど幸せなことだろう、と。
「私も、すごく楽しかったから」
心からそう伝え、にっこり笑う。
「・・・そうか」
人よりもずっと長く生きて、色んなものを背負ってきた自分の、心の深いところは、彼女に知りようもないけれど。
は何も気負わず、飾らず、思ったまま振舞うことで安らぎと喜びとを与えてくれていた。
自然とそうできるだからこそ、愛しい。ずっといて欲しい・・・。
「」
片手は肩に、もう片方の手は頬に。
キスの合図だと分かって、は嬉しいけれどちょっとためらってしまう。
誰か起きていたら、どうしよう。
でも童虎の腕の中で、求められている、と自覚すると、これ以上じっとしてもいられない。
構わず目を閉じ、口づけを受けた。
強烈に酒臭くて、濃厚に蕩けるような、刺激的なキスだった。
「−メリークリスマス」
少し遅れた、二人きりでのクリスマス。
どちらからともなく、しっかりと抱き合った。
・あとがき・
クリスマスには十二宮でパーティをやっていそうなイメージがあって、そんなクリスマス話を今まで何本か書いているのですが、これもそんな中での一場面です。
もしかしてこの間書いたシュラの「電話越しの君」ヒロインもこのパーティに参加していたのかもしれません。
本編でも天秤座は十二宮の真ん中に位置するので、聖闘士の要だ、というように言われていましたね。天秤座はこういうパーティなど人が集まるのが好きそうなので、会場としてピッタリかなと。
しかし皆、イヴに一緒に過ごす恋人、いないんですか？（笑）
黄金聖闘士たちの雑魚寝って、ちょっといいかも・・・（笑）。タイトルは娘の「おかあさんといっしょ」のＣＤに入っていた「お祭り済んだ原っぱに」（だったかな？ 不確かですが）から。
賑やかさの後の寂しさ、といった感じですが、ここではようやく恋人と二人きり、ですね。
Ｈ１７．１２．２４
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