ソファ
ふかふかのソファがある生活に、憧れていた。幼い頃から。
己の片割れという存在、そしてその違いすぎる運命というものを知った瞬間、憧れは激しい妬みと憎しみに変わった−。
「バドってソファが好きなのね」
いつもそこに座っているか、横になっている。
は笑いながら、隣に腰をかけた。余裕はあるのに、わざと体がくっつくくらいにぴったりと。
「ああ、まあな」
実際、この部屋はソファの他は殺風景なものだった。もちろん、作り付けの家具や生活に必要なものたちは揃っているけれど、それらは単に「誰かが用意してくれただけ」という感じで、まるでホテルの部屋みたい。
そんな中で、この巨大なソファだけは特別だった。
ふかふかのソファに、憧れていた。
憎しみも妬みも氷解したとき、新しく与えられた自分の部屋へすぐにそれを据え置いた。
「」
最初は肩に腕を回して。それから、頬にキスの真似事で、軽く触れてみたり。ただ隣にいるだけじゃ物足りなくなって、少しずつエスカレートしてゆく。二人きりのときは、いつもこんなふう。
そしてやっぱり、勢いが止められなくなるのは、男の方みたいで。
「やだあー」
抱きしめてくる強さは、既に戯れの域を越えている。身体に手を回されてきたので、は半分笑いながらも、反射的に体をずらそうとしていた。
だがすぐに左側のひじかけにぶつかってしまう。腕を伸ばしたバドが、右の逃げ道もふさいでしまった。
「逃げられないだろ?」
追い詰めて余裕の笑みを見せ近付いてくる。
「分かった、だからソファが好きなんでしょ。バドのえっち〜」
軽く叩いてやっても何の効果もない。ますます楽しそうに、迫ってきた。
「何とでも」
キスで違う意味でも追い詰めて、ずり落ちそうな身体を支えそのまま横たえる。
ソファは簡単なベッドにもなるから便利だ・・・なんて言ったらまた反抗してくるだろうけど。
「のことが好きだからだよ」
それは甘言でもあり、バドの心からの気持ちでもあり。
「・・・ふふ」
あっけなく参ってしまう自分の単純さを、素直に認めてはバドに手を伸ばす。
大好きな人と一緒の時間を、ソファの上でじゃれるように過ごしたいから。
「まったく男って」
二人きりとはいえ、白昼からしかもソファでこんな。
熱い時間を越えて自分を取り戻すと、いつもすうっとした現実感に襲われてしまう。だからは責めるような口調になり、服装も手早く整えた。
「嫌がりもしなかったクセに」
バドはまだ裸でソファに寝転がり、からかってくる。
「・・・喉が渇いたわ」
「あ、俺にも何か持ってきて」
こちらに背を向けていても、怒りと恥ずかしさ、そしてそれらを上回るほど満足しているの気持ちがよく分かる。
そんなところも可愛くて愛しい。自然と顔を緩めながら、部屋を出てゆく後ろ姿を見守っていた。
ドアが静かに閉じられると、そのまま一人ソファに全身を沈める。まだ十分に残っている二人のぬくもりに触れ、包まれるように目を閉じた。
は、自分や弟の過去について、詳しいことは何も知らない。
教える必要のないことだと思っているから、バドはと付き合うようになってからも、『長い間離れて暮らしていた』としか言わなかった。
今、座り心地の良いソファを思う存分使うことが出来て、隣にはがいる。
本当に幸せだと思えるから、それでいい。
ソファはバドにとって幸せの象徴のようなもので。
例え一人の時間でも、ここに座っていれば満たされた気持ちになれる。
ふと思い出しては歯がみしたくなるような出来事もたくさん抱いている。それは確かだけれど。またその感情を無理して押し殺そうともしないけれど。
繰り言でマイナスの感情に浸り染まるよりも、今の幸せを見逃さず感じている方がいい。
それがの教えてくれたこと。
言葉で諭すのではなく、明るい言動と優しい腕(かいな)、そして柔らかな身体で、教えてくれたこと。
「バド、もう寝てるの?」
「・・・いや」
緩んだまま起き上がり、を見上げる。
「何見てるのよ。いい加減服を着たら?」
差し出された飲み物をではなく、の細い手首を掴んだ。
「どうせまた脱ぐことになるし」
「バカっ風邪でもひいちゃえ!」
「ああそれもいいな。優しく看病してもらおう」
悪ガキみたいな笑いが止められないみたいなバドに、仕方なく引き込まれて。
「もうっ・・・」
でもすぐに伝染して、一緒に楽しく笑ってる。
ソファの上で、エンドレスの二人。
・あとがき・
ミーメの「音」、自分ではかなり重苦しい気持ちで書いたので、同じ神闘士キャラでも今度はもっと軽く甘く書こうと思い、こんな話を考えました。
といってもかづなの星矢ドリームでは王道というか、こんなのいっぱいありますね(笑)。いっぱいあっても繰り返したい。しつこい私。多分これからもしつこい。双子キャラっていっぱいるけど、バドの場合、双子なのに影のような存在だったってことでカノンと似た境遇のような気がします。でもカノンの方は明るく(?)ぶっちぎれてましたね。それじゃ俺は地上を支配してやるさー! って。
バドはそこまでいかなかったしそういうチャンスもなかったし。まぁこの辺がアスガルド。
でもなんか最後に兄弟愛に目覚めていたところを見れば、復活したとしたら案外穏やかに暮らしていくんじゃないかなと思いました。
あんな理不尽な思いをしたんだから、そんなに簡単にはいかないでしょうけど。それでも、ヒルダ様とかシドとか周りの人の優しい気持ちを受け取って、幸せになって欲しいなぁと。もちろん最大の存在はちゃん、ということで!ソファって、今まででも作品中ではよく使っています。名脇役ですね。
なんか便利なんですよね。ベッドまで連れていくのっていかにもだし、こう、何気なくなだれ込むようなときにリビングにあるソファでそのまま・・・って。
しかし二人で横になって楽々なソファってどんな大きさだ。
私も狭い部屋に一人暮らししていたから、結婚したときにソファのある生活というのに憧れて、友達が結婚祝いをくれるというのでソファをリクエストしました。
しかし今はほとんどモノ置き場と化しています。まともに座る機会はほとんどない。夫と並んで座るなんてもっとない。
そんなものよね。所詮かづなは日本人で小市民なんだから。DVDの解説にあったと思うけど、シドバドって、原作にはないようなキャラデザインなんだって。確かにあのおでこ丸出しなツンツン頭っていうのは。
車田先生の絵でシドとバドって・・・んーなんか見てみたいような(笑)。
最初はこの話、シドとバドのダブルキャラにしようかとも思っていました。でもサガとカノンのダブルキャラを書きたいのでかぶりそうだし、やっぱりバドは単独の幸せを書きたいという気持ちもあったので、ダブルキャラはやめました。
シド単独のドリームも、いつか書きたいですね。
H16.1.26
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