自然会話
窓の鳴るのを聞きながら、暖炉に薪を追加する。ひどく風が強く、寒気も骨身にしみるようだが、これくらいの気象はアスガルドではほんの日常に過ぎなかった。
長い冬が続いている。それでもは辛いとは思わない。
故郷を愛しているし、この部屋でこうして過ごす夜なら寒ければ寒いほどいいと思えるから。
暖炉から、そっと目を転じる。かたわらに寄り添う恋人も、こちらを見てくれていた。
微笑み合い、もっと身を寄せる。赤い炎の照り返しをちらちら受けて、いつもノスタルジックな気持ちになる。
そう、寒ければ寒いほどいい。
彼の体温をより感じることが出来るから。
「、頼みがあるんだ」
「なぁに、ジークフリート」
甘えかけるように、彼はすり寄ってこう言った。
「耳掃除を、してくれないかな」
こんな声を聞けるのは、二人きりのときだけの特権だ。自分にだけ向けられる、瞳と笑み。
この人の全てが愛しくて。
膝の上に頭を預け、ジークフリートは絨毯の上で寝そべった。
は、耳掻きを右手に持って、ゆっくりと掃除をしてあげる。
たゆとう時間は掛け値なしの優しさで、まるで永遠そのもののような。
「日曜日、天気が良かったら遠乗りに行こうか」
「いいわね。それなら私、お弁当を作るわ」
静かに優しい言葉を交わす。ときにはまったくの沈黙が降って下りることもある。そんなとき二人はゆったりと、薪のはぜる音に耳を傾けるのだった。
会話の途切れすら心地よいものとなるのは、恋人同士だからこそ。
「はい、今度は反対の耳よ」
ジークフリートが身じろぎして体を反転させると、の体側に顔が向く。いつも彼はそういう順番で耳を預けてくる。多分、側に顔を向けるのを後の楽しみに取っておいているのだろう。
「の、いい匂いがする」
悪戯をして、両腕を腰に回してくる。されるがままにして、それでもくすぐったげに笑った。
北欧神話随一の勇者−ジークフリートの名を持った彼は、オーディーンの地上代行者であるヒルダ様の近衛隊長を務めている。自身はヒルダの身の回りの世話を仕事としており、そこで彼と知り合った(実はの一目ぼれだったのだ)。恋人同士となった今でも、日常でジークフリートと接する場面は少なくない。
だが、彼は二人きりのときと仕事中とでは全然態度が違う。最初はも戸惑ったものだが、仕事に私情を持ち込まないことの徹底ぶりは見事なほどだった。
日中の、凛とした顔も好き。緊張感に満ち、隙のない仕事振りには惚れ惚れする。同時に、こちらの身まで引き締まる思いだ。
それがあるからこそ、プライベートのほっとした部分を受け入れてあげられる。こちらも全てをさらけ出せる。
甘えたり甘えられたり、時々ワガママを言い合ったり。
膝の上の暖かさを感じていた。
子供の頃に戻ったようで、このまま眠ってしまいそうになる。
仕事は確かに緊張を強いられるけれど、やりがいがあってむしろ楽しい。若輩の身でありながら近衛隊長という責任ある立場に置かれていることは、誇りになりこそすれ、プレッシャーになどなり得ないのだ。
だがそれも、こういう時間があってこそだ。
自分というものを解放し、一緒にいて心地よい・・・そんな相手がいるから。
「ありがとう、」
そっと膝に手を置いて、言うと、
「こちらこそありがとう、ジークフリート」
自然な言葉が、帰ってくる。
窓の鳴るのを聞きながら、膝の上でぬくもりを分け合って。
北国の夜はとても長いから、焦らずゆるり、過ごしている。
「また、風が強くなってきたみたいだ」
「でも、春も遠くないわね」
「ああ。・・・そうだ、春になったら、一緒に暮らそうか」
「うん。・・・えっ?」
二人の間に交わされるのは、いつも、自然会話。
・あとがき・
久しぶりにアスガルドキャラを書きたくなって。やはりここは神闘士のヘッド、ジークフリートの出番でしょう!
ゆったり甘々。こういう雰囲気、好きなんです。
仕事を頑張っている人は、素敵です。だから職場恋愛、職場結婚ってのは多いらしい。かく言うかづなもそうでございます。
かづなの夫も、仕事中とプライベートでは全く雰囲気の違う人。そういうイメージでジークフリートを書いてみました。耳かきのエピソードも夫のものです。必ず、私の方に顔を向けるのを二番目に残しておいてるのよね。
なんかあとがきじゃなくてノロケになってきました(笑)。ジークフリートってやはりヒルダ様とラブラブならいいなぁvと個人的には思うのですが、ドリームはドリームで別ですから。
アイオリアが魔鈴さんと恋人ならいいなぁと思いつつも、アイオリアドリームを書けちゃうのと同じことです。
でも、ジークフリートドリームは普通に書けても、ハーゲンドリームってのはどうも抵抗ありますねぇ。あれだけフレア様フレア様って言ってるんだから、書きにくいよねぇ。私的ジークフリートイメージ・・・ワカメ頭?
正直に申しますと、それほど好きキャラというわけでもないのです。いやもちろん嫌いでもないですが。
当時、私の中ではイロモノキャラでした・・・。
そういえば、同人誌(私の言う同人誌はアンソロジーなんだけど)ではよくアルベリッヒとのカップリングがありましたね。好きだったんですよ、面堂かずきさんとか久米夏生さんとかのジーク×アル。面堂さんのちょっとハードなのも良かったし、久米さんのラブラブもイイ!
・・・って、カップリング話じゃないんだった。
彼は仕事をビシバシこなしそうです。デキる男だと思います。そしてプライドも高い。強い。アルベリッヒと仲悪い(笑)。
ちゃんに、アルベリッヒが横恋慕だったらまた面白そうだよね。かづなは北国の人なので(といってもアスガルドのような気候じゃないけど)、こんな雰囲気が何となーく、身近なのです。
寒い冬、長い夜、大好きな人と過ごすならいいよね。
H15.9.2
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||