ラッキー
目が覚めたら、やけに肌寒かった。
カーテンの向こうはもう明るい。そして自分は、ベッドの端にいて、かけ布団を半分しかかけていなかった。
寝返りを打つと、はるか向こうの端に背を向けて眠っている黒い短髪の人を発見する。しっかりと布団を身体に巻きつけているのが憎らしくて、こっちに引っ張りかけたが、気が変わった。
は布団にもぐり込むと、彼の背中にぴたり、くっついた。
(あったか〜い)
極楽気分で目を閉じる。聖闘士という職業の割には細身のシュラだが、意外に体温が高いことをは知っていた。
と、相手の体がもぞもぞと動く。
シュラはこちらを向いて、ぎゅっ、と両腕の中にを閉じ込めてくれた。まだ目は開かないけれど、半分覚醒といったところだろうか。
さっきよりもっとあったかくて、もっと幸せな気分になって。
ぬくぬくの中、は笑っていた。
「・・・足が冷たい」
ぼそっ、とシュラが言って、ふくらはぎの間にの足をはさんで温めてくれる。
「手も冷たいよ」
両手は自分からシュラの胸にくっつけた。
手先とか足先とか、末端が冷えるから、これからの時期は辛いところだ。
「でも、シュラがいてラッキー。一家に一人、シュラだね!」
「ラッキー、か」
湯たんぽ扱いしても、怒らない。ただ静かにシュラは笑った。
「うん。ラッキー」
目を開けたらシュラもこちらを見ていたので、すごい至近距離だな、と思いつつにっこりする。
「夕べお泊りできたのもラッキーだし、今日が休みでラッキーだし」
いつまでもこうして、ゴロゴロしていられるなんて、最高の幸せ。
「今朝が寒くて良かった。これもラッキー」
寒くてラッキーなんて、彼と付き合う以前には絶対に思えなかったことだけど。
ほっぺにほっぺがくっつくくらいに接近してみた。たくさんの幸運を肌で感じて、いても立ってもいられない気持ちになる。
「シュラと一緒にいられること自体が、とってもとってもラッキー!」
両手に持ちきれないほどの楽しさが、その言葉に弾けている。
のこういうところが、シュラには一番愛しかった。
どんな小さなことでも、当たり前だと見過ごさず、全てに感謝して全てを幸せの素にする。
だからはいつもきらきらしていたし、一緒にいるシュラにも元気を分けてくれていた。
自分一人では気付かなかったことをたくさん教えてくれていた。
「俺にとっても、お前と出会えたことが一番のラッキーだよ」
それは小さな小さな声だったけれど、ほとんど一体化するようにくっついているにはしっかり聞こえた。
返事の代わりに軽くキスをすると、そのまま押さえ込まれ、もっと深い口付けをされる。
同時にバストに手が伸びてきたので、は軽く抵抗して見せた。
「ヤダ〜、あっためてくれるだけでいいのっ!!」
「それじゃ生殺しだろ。こんなにくっついてて我慢できるか」
「あたしはそんなつもりじゃ・・・」
抗議の言葉なんてたやすく封じられてしまう。男ってすぐこうなんだから・・・半分諦めて、体から力を抜いた。
「今日は一日中こうしてよう」
「・・・体がもたない〜」
でも、寒いなんて思うヒマはなさそう−。
・あとがき・
久しぶりにシュラのドリームを書きたくなりました。
昔から大好きキャラで、昔からいろんな形でシュラのラブストーリィを書いていたんですが、ドリームではあまり書いてないな・・・と思って。
ネタとしてはアイオロスの「手」と同じです。冷えた体を温めてもらうパターン。
シュラが細身だと書いたけれど、これは私の勝手な思い込み。山羊座=痩せ体型、という図式が私の頭の中にはあるもので・・・。
でも男の人って総じて体温高いんですよね。
寒い朝に温めてもらえたらホント、嬉しいです。ちゃんのように、小さなことも逃さずに「ラッキー」と思えれば、毎日が幸せですね。
相手のことも幸せに出来るみたい。
H15.11.12
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