嫌いだよ。
「ロンの、分からず屋ーッ!!」
手近なクッションを投げつけるが、余裕でよけられた。
「お前こそそんなくだらんことをいつまでも言ってるな!」
ロンの表情も口調も冷静にはほど遠く、その態度がますますを激昂させる。
「くだらないこととは何よー! ロンなんて嫌いだよ!」
「嫌いで結構、出ていけ!」
「言われなくても!」
売り言葉に買い言葉で吐き捨て、部屋を飛び出る。外で待っている自分のB'tに、大またで近付いた。
「、行くよ!」
は雷童との会話に花を咲かせていた最中だったが、彼女もドナーの命には忠実なB'tである。やれやれ、といったように雷童と目を合わせつつ、すぐにが乗りやすいように身を屈めた。
『またロンさまとケンカ?』
「いいから帰るの! 雷童、あんたのドナーの石頭には呆れたわ。もう来ないから!」
『了解した』
そんなことを言っていても、すぐ明日にはやって来ることを雷童は知っていた。ふわりと飛び立つを少し名残惜しく見送る。
『まったく、いつもケンカばかりだな』
それでも恋人同士だというのだから、人間とは不思議なものだ。
を模したがぐんぐん小さくなってゆくのを見上げ、雷童も出発の準備を整える。
「雷童、各ポイントの見回りに行くぞ!!」
果たして、怒鳴るような勢いで、ロンがやってきた。
とケンカをすると、ウサ晴らしとばかりに空に出掛けたがるのも、いつものことだ。
『参りますよ、ロンさま』
わざと勢いをつけて、ギュンと飛び立つ。が去ったのとは反対の方向に加速をつけた。
「まったくまったく・・・ロンなんて大嫌い!」
『ハイハイ。いつもの犬も食わない・・・ってヤツでしょ? よく飽きないわね、』
はのB'tではあるが、ドナーを呼び捨てにし、気さくな態度で話し掛ける。B’tと本当の親友みたいに付き合いたい。これは自身が望んだことだった。
『ケンカなんかしないで、せっかくの時間なんだから、楽しく過ごせばいいじゃない。私だって雷童と盛り上がってたのに』
二人の時間があっという間に終わってしまったことは、にとって本当に残念なことだった。つい、恨みがましくなってしまう。
「は相変わらず雷童と仲良しだね」
からかうつもりでもなく、しみじみと言って、のボディを軽く撫でてやる。
二人・・・もとい二機は、人間で言えば恋人同士なのだろう。B't同士でどんな付き合いをしているのかはにも謎だけれど、ケンカなどすることがないのは確かだった。
『私にはの血が流れているから、ロンさまの血が流れている雷童を好きになるのは、自然なことなのかもね』
B'tはただのロボットではない。人間の血を受け、それによって命を得る。
「・・・そっか」
何だか、神秘的だとは思った。
自分の血が、ロンの血に惹かれている・・・。
血というものは貴く純粋なものだから、それゆえに、ごまかしのない気持ちのようにも思えた。
「・・・ちょっと、意地張りすぎたかな・・・。ケンカの原因、何だったっけ」
いつも、思い出せないほどつまらない原因で言い争いになってしまうのだ。
『明日また行くでしょ?』
「うん」
大きく西に傾いた太陽に目を細め、冷えてきた風を全身に受ける。
いつもよりずっと、素直な気持ちになれる気がした。
『来たな』
のB'tが近付いてくるのにいち早く気付き、雷童は首をもたげる。
『雷童!』
は恋人の隣に着地する。すとんと飛び降りたに、雷童はわざと意地悪げに声をかけた。
『もう来ないとか言っていたな』
「うっうるさいな。がどーしても雷童に会いたいっていうから来たの!」
二機揃って含み笑いをしているのが気に食わず、はふくれ面をしてドアに手をかける。
『今日はゆっくりさせてよね、』
「知らないよ!」
その勢いのまま、中に入っていった。
『お互い、短気で意地っ張りなドナーには苦労するわね』
『同感だ』
それでも、そういうドナーだからこそ愛しくて。
バディたちはくすくすと笑っていた。
「嫌いなのではなかったのか」
「嫌いだよ」
「オレも嫌いだ」
「じゃ触らないでよ」
「イヤがってないぞ」
やや強引に、腕の中に閉じ込める。暴れるのもフリだけだと分かっている。も小柄とはいえ、将校にまでなった女性だ、本気で抵抗されればいくらロンでもてこずることだろう。
強く抱きしめ、何も言わずに唇を重ねた。
『好きなくせに嫌いだよ、なんて言っちゃうのね』
『ロンさまとに限って言えば、“嫌い”は正反対の意味を持つようだ』
『人間は複雑ね』
雷童とは、もっと寄り添い合う。
「何するのよー」
ぐいとベッドに押さえつけられ、は身をよじった。
「黙れ。お前のようなはねっかえりは、こうでもしないとおとなしくならんだろう」
「そういう、力で征服するみたいな考えって、野蛮!」
「ふん・・・いつまでそんな口を利いてられるか、見ものだな」
笑いもしないから、ホントにケンカを売られているような気になってくる。
だからこそ、触れてくる指や唇に、感じてしまう。
「・・・あ・・・」
思わず漏れた小さな声に、ニヤリ笑みで応える。とてつもなく悔しかったけれど、この状況でに勝ち目はなかった。
「もう・・・」
白旗をあげて、素直に快感を受け入れるしか・・・。
「可愛いぞ、」
からかうような言葉なのに、耳元で囁くものだから、ぴくっと反応してしまう。
衣服を乱されても、もはや抵抗できない。ただせめて手を伸ばし、ロンの長めの前髪をかきやった。恐れるものなど何もない、真っ直ぐな瞳に貫かれれば、それだけで体の芯が熱くなる。
「ロン・・・」
荒い息の下で囁いて、彼の胸に指を置く。稲妻型に刻まれた傷を、そっとなぞった。
「は・・・あっ・・・」
自分の中に彼を受け入れたとき、ははっきりと知った。頭ではなく、体で理解した。
血が、この体を熱く駆け巡る血が、ロンを求めている。欲している。
そして・・・愛している。
いくら憎まれ口を叩いても。いくらそっけない態度を取っても。
お互いを引き付け合う血には、背けない。
「・・・」
名を呼んでくれる、ロンの声が耳に優しい。
体の中で、お互いの血がシンクロするのを、強く強く感じていた。
「ロンなんて、嫌いだよ」
「オレも嫌いだ」
二人抱き合いながらも、まだそんなことを言っている。意地のように、もしくは暗号のように。
それでも、すぐ近くで見つめあう瞳は優しいから、不安なんて持たずにいられる。
「・・・嫌いだよ」
なんて、うそ。大好き。
ぎゅっと抱きついた。
・あとがき・
B'tXドリーム、初お目見えです!!
お相手をロンにすることは即決だったんだけど、ストーリィは三パターンくらい考えました。
まぁ、初めてなので腕ならしの意味もこめて、シンプルで短い話にまとめてみた。ロンが大好きなんですよ。B'tX中、最愛キャラ。
カッコいいよね! 少し短気で、熱血で、強くて。アラミスのこと好きだったのかなあ。
ちなみに雷童も好きなんです。B'tって設定、スバラシイと思います。ただのロボットじゃないもの。感情もあって個性もある。作品中では、B'tもよく涙を流していたなぁ。ドナーへの忠誠心がすごくいいのよね。
B'tXならではのドリームにしたかったので、ヒロインのちゃんにもB'tを持たせました。をモチーフにした、本当に気の置けない女友達のような関係なんだよね。そんなバディと空を駆け回れるなんて最高!マドンナがエックスのことを気にしていたエピソードが原作にもあったから、普通に雷童とを恋人同士にしちゃった。B't同士の恋愛ってのも、気になるところだよね。ホントにどんな付き合いをしているんだか・・・(笑)。
B'tXという作品は、「血」というのがひとつのキーワードでもあったので、それも織り込んでみました。二次創作としてネタを考えれば考えるほど、B'tXという作品のすごさを感じます。並みのアイディアじゃないと思う。
今、ちょうどコミックスを全部読み終えたところです。かづな的B'tXブーム、到来の予感。
ということで、また書きたいですね。北斗や鳳ももちろん書きたいけど、メタルフェイスなんかも結構いけるんじゃないかなーと思っているのよ。
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