鍵をかけて
「鍵・・・、かけてください、アイアコス様・・・」
か細い懇願の声も聞かず、アイアコスはを後ろから抱きしめた。
ここは物置部屋、冥界で雑用係として勤めるは、手伝うように言われ、アイアコスについて来たに過ぎない。
だがそれは、に前々から目をつけていたアイアコスの罠だった。
言われた物品を取ろうと棚に手を伸ばしたところを襲われ、声も出せないほど驚いた。怯えるの耳に、アイアコスの囁き声が忍び込む。
「があんまり可愛いから悪いんだよ」
反抗なんて出来やしない。相手はとても偉い身分の人だ。
三巨頭の一人として冥界を統べるアイアコスの求めを拒むなど、思いもよらないことだった。
ならばせめて鍵を・・・。はドアに目を向けた。
「誰か来たら、困ります」
ほとんど人の来ない小部屋だが、もし万が一誰かがあのドアを開けたら・・・、この位置では丸見えだ。
「心配するな。見られたところで、口を封じるなど造作もないこと。この俺様に逆らえる奴はいないんだからな」
服の上から体の線をなぞり、下に滑らせてゆく。
「それよりも、見られるかも・・・ってスリルがいいだろ」
よくない! などと反論できようはずもなく。
棚と棚に挟まれた狭いスペースの中で、満足に身動きも取れない。は埃っぽい棚板に手をついた格好で、アイアコスの少し乱暴な愛撫をじっと受けていた。
「可愛い・・・。、おまえのことずっと狙ってた。こうしたくて・・・」
首筋にキスを受けて、ぴくっと体を震わす。アイアコスが覗き込むようにしてきたので、目が合った。
黒い髪と黒い瞳。この冥界の闇のように深い・・・。
「アイアコス様・・・」
憧れを注いではいた。アイアコスにも、他の二人にも、同じくらいに強く。
だからこんなふうに求められても、は哀しくも辛くもなかった。
単純な忠誠心だけではない。憧憬の延長から恋慕を導いて、それによって彼の身勝手な欲望を受け入れることは可能だと気付いたのだ。
例え上司の方には一かけらの情けもない、ただの遊びだとしても。
口づけを交わす。体の芯が熱くなる。
体中を這い回っていた手が、スカートの中にたどり着いた。もう片方の手は、胸の上に置かれる。
衣服越しの荒い刺激を受けて、その場にへたり込みそうになる。
「や・・・あっ」
しがみついて必死に耐える。その頬に耳に、無秩序にキスを散らされ、容赦ない責めに我を失いそうになった。
「これからが本番だってのに、もう骨抜きか? ちゃんと立ってな」
少し意地悪な言葉も、蜜の甘さで。
アイアコスの指が、とうとう下着の中に忍び込んでくる。
(ダ・・・ダメ・・・)
が思わず目をつぶったとき、
「・・・うっ!」
短いうめきを漏らし、アイアコスは突然動きを止めてしまった。
やめちゃイヤ、なんてはしたない叫びを心の中であげながらが振り仰ぐと、アイアコスは不自然なポーズで硬直し、苦しげにドアの方をにらんでいる。
も乱れた着衣を両手でかばうようにして、恐る恐る同じ方向を見た。
「・・・ミーノス様・・・」
いつからそこにいたのだろう、アイアコスと共に三巨頭に名を連ねるミーノスが、ドア近くに立っているのだった。
見られた・・・見られてしまった! 顔から火が出る。だから鍵をかけてって言ったのに!
「ミーノス、貴様」
「いい格好ですよアイアコス」
悠然と歩み寄り、同僚に不敵な笑みを向ける。
ミーノスの糸により動きを封じられてしまったのだ。劣情に溺れるうち油断した・・・。アイアコスは切歯する。
「抜け駆けなどするからです。は私のものだというのに」
と、すっかり真っ赤になってしまったのあごに手をかけ、微笑みかける。
「ちょっと待てっ、いつからが貴様のものなどに・・・」
「なってません〜!」
「これからなるのですよ。貴方はそこで見ていてください、アイアコス」
見せつける角度で口付けを与える。
アイアコスの悔しげなうめきを快く聞きながら、ミーノスは巧みな舌技でを追い詰めた。
先ほどまでで十分、期待と快感を与えられていただ。力を失い、ミーノスの胸に身体ごと預けてしまう。
ミーノスはますます気をよくし、すでに熱を帯びているの体を撫で始める。
「いやっミーノス様・・・」
「恥ずかしがることはありません、はきれいだから・・・。アイアコスにも見せてあげればいい」
よく見えるようにと、わざわざの体をアイアコスの方に向けて、背後から両手を回し、改めてさぐり始めた。
「・・・あ・・・」
は顔をそらす。いくら何でも、アイアコスの顔をまともに見るなんて出来なかった。
ミーノスの指使いは繊細で、感じる場所を確実に探し当てられる。襲いくる快感に耐え切れず、は体を反応させ、あられのない声を上げ始めた。もう、立ってはいられない。
ミーノスはしっかりとの体を支えながらも、ますます大胆に弄り続ける。
「あまり大きな声を出すと、外に聞こえますよ。アイアコスに見られて余計感じてるんでしょう? 可愛い顔に似合わずいやらしい娘ですね」
「そんな・・・ミーノス様」
「ほら、こんなになって」
胸の膨らみから頂を探り当て、服の上から少し強めにつまみ、刺激する。甘いあえぎを満足げに聞いた。
「ここは、どうでしょうね・・・?」
スカートの中に手が伸びる。
「や・・・」
もうとっくに恥ずかしいことになっている。・・・それを二人もの男の前で暴かれるなんて・・・。
ささやかな抵抗も、ミーノスの前ではなきに等しい。
「ああ、こんなに溢れて」
くすくす、笑い声にからむようにミーノスの指が這い、淫らな音が小部屋に響く。
「・・・あ・・・」
「ええいどけミーノス!」
「!?」
アイアコスはいきなりミーノスを突き飛ばすと、だけをしっかりと受け止めた。
「アイアコス、どうして・・・」
「アホ面してただ見てられるか。あれしきの技がそういつまでも通用すると思うのか」
痴態を見せつけられもはや我慢ならなくなっていたアイアコスは、に再び口付け、先ほどの続きに持ち込もうとする。
ミーノスも黙ってはいられない。立ち上がって、また後ろからの体に手を伸ばした。
二人の男に挟まれる形になり、更にそれぞれから愛撫を受け、の理性はとろけてなくなる寸前だった。
多少乱暴で情熱的なアイアコス、反対にどこまでも優しく、しかし的確に快感を与えてくれるミーノス。
今や憚らずにあえぎ、快楽に浴するの頭越しに、男たちは目を合わせた。共犯者の笑みを素早く交わす。
「俺が先にいただくからな。おまえは口でしてもらえ」
「何を言うのです。のこの可愛いお口に、そんなことをさせられるわけはないでしょう」
と言いながらも、ミーノスは何となくアイアコスに順番を譲る心積もりになっていた。
(私、アイアコス様とミーノス様に・・・)
二人に、犯されてしまうの・・・? ここで・・・?
鍵もかかっていない、誰が入ってくるか分からない物置部屋で。
何をされるか分からない恐怖と、同時に湧き上がってくる期待が混じり合って官能のうずきに変わり、の全身を塗り込めてゆく。
もう、どうでもいい。好きにしてもらってもいい。
火のついた身体を、満たしてもらえるのなら。
(でも・・・やっぱり気になる・・・)
鍵をかけて欲しい。
は顔を上げ、ドアの方を見た。
「・・・・」
ラダマンティスはドア口に立ち、微動だに出来なかった。
パンドラ様に言い渡された探し物があり、直々に物置へ出向いたのだが・・・。
目の前に広がる非日常的な光景から、目をそらせない。
同僚が、雑用係の女を二人がかりで手篭めにしようとしている。それだけなら、何も見なかったことにして立ち去っても良かった。
だが、女は・・・ラダマンティスだって気にかけ、ずっと目で追っていた愛しい存在の・・・。
アイアコスとミーノスは、愚かにも自らの欲望を満たすことばかりに夢中になって、自分が入ってきたことに気付かないようだった。とっさに小宇宙と気配を抑えたものの、はてこの状況でどうしたものかとラダマンティスは考えあぐねてしまう。
そのときだった。
ふと顔を上げたと、目が合ってしまった。
「俺たちさ、みんなのこと好きなんだ」
「この際、はっきりさせよう。、誰を選ぶんだ?」
「まあまあ、まずは飲み物でも」
ミーノスはカクテルのグラスを人数分サイドテーブルに置き、の足元にひざまづくように座った。
アイアコスとラダマンティスに挟まれるようにベッドの真ん中に座らされたは、どこを向いたらよいか分からなくて、固くなって目を泳がせていた。
何だろう、この状況は。ホストクラブってこんな感じかも知れないけれど。
あの物置部屋で三巨頭が顔を合わせてしまうなんて、奇跡ほどの確率だった。だが現実に、三人は会ってしまった。
を巡っていつも牽制し合っていた男たちが、を十分乱れさせた場面で、バッタリと。
三巨頭は妙な連帯感で話を進め、場所をミーノスの私室に移すことにした。ぞろぞろと歩き、それぞれの部下と廊下ですれ違った際に、
「私たちはこれから三巨頭会議を開く。重要な会議ゆえ定時を越えると思うから、随意に仕事を終えるようにと皆に伝えろ」
などと平然と言い渡す三人の後ろで、はおどおどと小さくなっていた。
冥闘士に、異変を悟られたら・・・と思うと、とてもまともにしていられない。服の下で淫らにほてっている体を、見透かされそうで・・・。
だが、実際には誰もそんなに注意を払う者はいなかった。いつものように、会議上の雑務をこなすために連れてゆくのだろうと思われていたに過ぎない。
ミーノスは今度は鍵をかけて、たちを部屋の奥に通した。そして、ベッドをソファ代わりに、一人の娘を取り囲んでいるという今の状況に至る。
「、ずっと好きだった」
「俺を選んでくれるよな?」
「幸せにして差し上げますよ」
手を握られ、見つめられて。同時に愛を打ち明けられるなんて、信じられない僥倖だ。きっと天にも昇る気持ちだったに違いない。・・・普通の状態だったなら。
今は肉欲が勝っていて、そんな言葉もどこか上の空・・・。
「おや、は続きをして欲しくて待ち切れないようですね」
小さく震える肉体を手のひらで感じて、ミーノスは笑いをこぼす。
「そうだ、一番満足させた奴を選べばいい。な、」
「そっそんな・・・」
一方的に決めて、早速ベッドに横たえると、アイアコスはの服に手をかけた。
「まずは邪魔なもの全部脱いじまえ」
「やーん」
形だけのイヤイヤも可愛いもので、ラダマンティスも手伝ってすぐに玉の肌をあらわにしてしまう。
ミーノスの口づけを受けると、冷たい液体が口の中に流れ込んできた。口当たりの良い甘いカクテルを素直に飲み下す。
「もう準備いいよな。俺もたまんねぇ」
自分もぱっぱっと裸になり、のしかかろうとするアイアコスをラダマンティスが止めた。
「まて、何の権利でお前が」
「俺が最初に手をつけたんだから俺が一番なんだよ!」
問答無用とばかりにの中へと体を進める。
「あ・・・あっ」
背をのけぞらし嬌声を上げるにそそられ、ミーノスとラダマンティスもそれぞれ手を出し、肌にじかに触れた。
「フッ・・・どうせアイアコスはすぐに終わりますよ。次は私が、ゆっくりと楽しませてあげます」
「俺は最後かよ。さっさと出せアイアコス」
「言ってろ・・・。いい・・・ぜ、・・・すげぇ」
「うぁ・・・あ、アイアコス様・・・ぁ」
体のあちこちを刺激され、感覚が何十倍にも増す。複数の男とベッドにいるという異常な状況も追い風となって、はどんどん上り詰めてゆく。
「もう、ダメぇ・・・」
「まだ・・・まだだ・・・お前ら勝手に手出しするな・・・」
「黙って見ていろとでも言うのか?」
そんなこと出来るか、と言わんばかりに、ラダマンティスは自分の服を緩めながら、の唇を犯した。ミーノスの手も止まらない。
自分を見ている、目。四方から伸びる手と、甘いのに強いカクテルと。
体全てで感じて、もう、達してしまう。
信じられないほど大きな声をあげ、は体を弾ませるように気をやった。
がっくりと力の抜けた体を、今度はミーノスが抱き起こす。
「まだ、休むのは早いですよ」
「・・・ミーノス様・・・」
とろんとした目で、もう求めている。自分がこんなにも貪欲だとは知らなかった。
目覚めさらせれたのかも知れない・・・。三人の男によって。
「さて、答えを聞かせてもらおうか」
律儀に問うラダマンティスを、困惑顔では見上げる。
「俺だろ? あんなによがってたんだから」
横から口を出すアイアコス。
「それを言うならずっとよがりっぱなしでしょう、は」
ミーノスの言葉に今更ながら顔を下に向けてしまう。
ひどく乱れたベッドに、一糸まとわぬ姿で、今もラダマンティスと通じているというのに。
「まったく、澄ました顔してこんなにスキだったなんて・・・俺嬉しい」
アイアコスは心底嬉しそうに、額にキスをする。
同時にラダマンティスに強く突き上げられて、は声を上げた。
「で、誰がいいんだ?」
どうしてもハッキリさせたいのか、ラダマンティスは重ねて聞いた。
「そんな・・・決められません・・・」
これは本心だ。もともと三人ともがの憧れの的だったのだし、実際こんなふうになっても、その気持ちに揺らぎはなかった。・・・好きという気持ちが強くなったというだけで。
一人に決めるなんて今の時点ではとても出来ない。
「いいじゃないですか」
胸を弄びながら、ミーノスはそぐわないほどのんびりと言うのだった。
「決められないというものを無理に決めろと言わずとも」
「そーだよな。だいたいおまえ、何でも結論を急ぎすぎなんだよ」
アイアコスも言って、いたずらにキスをした。
「しばらくちゃんはみんなのコイビトってことで」
「・・・お前ら適当過ぎだ」
と言いながらもラダマンティスはそれ以上の反論はしなかった。否、出来なかった。
「・・・・・・」
もう間をもてない。温かなの中に、自らを吐き出したくて。
「あ・・・ん、ラダマンティス様・・・」
甘えた声が、熱のこもった瞳が、加速度をつけてくれるから。
鍵をかけた部屋で、は代わる代わる男を受け入れた。
いつ果てるとも知れない愛欲にまみれて、ただ貪るように。
抱き寄せてくれる腕を愛しく感じた。
広い胸に、ときめきを感じた。
抱かれるほどに、愛は深まるようだった。
それから後も、はミーノスやラダマンティス、アイアコスの誘いに応じて身を委ねたが、四人で同じ時間を共有したのは、あの日以来一度もなかった。男たちからすれば、わざわざ恋敵と一緒のベッドで愛の行為にふける気はないらしい。
だけれどは、忘れられない。あの快感、次々に違う人に抱かれる興奮・・・。三人はそれぞれ、満足させてくれるけれど、あの日の絶頂に及ぶことは一度もないのだった。
(どうにか、またあのときみたいに、皆で出来ないかな・・・)
抱かれながらそんなことばかりに思いを巡らしている。
「誰のことを考えているんですか? ・・・」
「あなたと一緒のときにはあなたのことしか考えてません、ミーノス様」
「・・・嘘が下手ですね」
それでも微笑んで、キスをくれる。
ミーノスは鋭いけれど、それでも、何を考えているかまでは分からないだろう。
こうやって一対一で愛し合いながら、あのときのことを思い出しているなんて、知らないだろう・・・。
鍵をかけた部屋にいると、自分がどんどん悪い子になっていくような気がする。
だけど、いや、だからこそ、鍵をかけた部屋にいるのが好きだった。
だから、いざなわれ部屋に入ると、はきっと最初にこう言う。
「鍵をかけて・・・」
・あとがき・
かづなは複数プレイが好きです。
思わず大きなフォント+太字にしてしまうくらい好きだったりします。
他のサイトさんでも、時々見かける3Pドリームなぞを私も是非やりたいと狙っていました。
誰にしようか・・・黄金の兄さんから二人選ぼうかとか色々考えたのですが、たどり着いたのが冥界三巨頭。
最初はミーノスとアイアコスだけにしようかとも思ったんですが、ラダマンティスだけカヤの外だと可哀想だから、もうみんな一緒に楽しんでもらいました。かくして3Pならぬ4Pに。
人が多いと文章で書くのは難しくなるんですけどね。
しかもこれ、突発です。いきなり生まれていきなり書きたくなったネタ。
こういうのが一番嬉しい。ちゃんに三人を慕う気持ちがなければ、男性向けエロ小説になってしまいます。かづな的に「裏小説」、そういうのは。
裏にしたくなかったから、ちゃんにも楽しんでもらいました。そもそもホントの強姦だとドリームにならないしねぇ。
乱れたまんまラストになっちゃったけど、これはこれでハッピーエンドでは?そして一歩間違えれば、エロギャグになってしまいます。
アイアコスがミーノスに技をかけられて動けなくなったところとか、みんなでぞろぞろ部屋を移動するところなんかは、そのまんまシモネタギャグに出来そうだよー。でも私は、裏でもなくギャグでもなく、楽しいエロドリームを書いたつもりです。
ここまで読んでくださった方なら、少しでも楽しんでいただけたのでは? と思います。きっとこれは複数シリーズ第一弾(勝手にシリーズ化)。
H15.8.5
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