Don't speak!!
「おっじゃましまーす!!」
「シーッ! シーッ! 静かにしろ!」
慌ててチョコマカ走ってきたスケルトンのマルキーノに、はニーッと笑ってみせる。
「・・・なんだ、またおまえか」
「相変わらずねマルキーノ。一度は輪切りにされた人にまた懲りずに仕えるなんて、あんたの気が知れないわ」
恐れ知らずのにはマルキーノも呆れるやらいっそ感心するやら。はあっ、と肩を落とし、手にした鎌で奥の扉を指し示した。
「前の裁判が終わったばかりだ。ルネ様はまだいらっしゃるだろう」
「サンキュー!」
必要以上の大声は、もちろんわざとだ。はマルキーノの愛嬌あるつるつる頭をペンと叩いて、鼻歌交じりに奥へと進んだ。
「・・・ったく、あんなうるさい女がどうしてルネ様に寵愛されてるのか・・・」
小さな呟きですら静かな館には響く気がする。マルキーノはそれ以上言うまいと口を閉ざした。
「ルネ〜! 遊んでよ」
つい今しがた終わったばかりの裁判について、書類作成に忙しいルネは、子猫のようにすり寄ってくるを無視したいけれどしきれないジレンマに困惑していた。
「ここは私の仕事場なんだから、来てはいけないと言っているだろう。それに・・・」
「法廷では静粛に!」
ルネの決まり文句を先取りして、白い歯全開にして笑ってる。
まったく、地獄の裁判官と聞けば死者たちは震え上がるというのに。天英星バルロンのルネともあろう者が、調子を狂わされっぱなしだ。
「とにかく、もう少し待っていなさい」
退かすためにだが、抱きかかえるようにされて、はドキンとする。結果的に言葉が途切れることとなった瞬間を、見逃すルネではない。
「・・・なるほどな」
法廷台にの身体を押し付けるようにして、動きを奪い、顔を近付ける。
「を黙らせるには、こうするのが一番というわけか」
「何を・・・」
「喋るな」
わざと、もう少し迫ってみる。余裕たっぷりの表情で、じらしながらキスを与えた。軽く、だけど長く。
「ふ・・・う」
ようやく解放してやると、可愛い唇からたまらない吐息がこぼれ出る。とろんとした瞳には期待に満ちた女の色が滲んでいた。
おとなしくなったことに満足して、それでもこれで終わらせはしない。ルネは再び深く口づけながら、の着衣を解き始める。
「ヤダ、こんなとこでこんなこと・・・」
「喋るなと言ったはず。次の裁判まで時間は僅かだ」
無駄口をきいている暇はないとばかりに、いつもより強くの体を刺激する。力任せに官能を引き出すかのように。
「はあっ・・・」
甘い声でなきながら、はもはや立っていられなくなり、テーブルの裏にずり落ちてしまう。こうなってしまえば、もう思うままだ。
「座っていいとは言ってないだろう?」
意地悪く見下ろす。ルネの手にいつの間にかムチが握られていることに気付き、は顔をこわばらせた。
「・・・嫌、痛いのはイヤ・・・」
今にも消え入りそうな声に、ルネは満足そうに目を細め、そばに膝をつく。
の望まぬことは決してしない。ただ、脅かしてみただけだ。
いつもうるさいくらい天衣無縫に走り回っているの、こんな怯えた表情や弱々しい訴えは、征服欲を十分に満足させてくれるものだから。
「静かに・・・声を出さないで」
しなやかなムチの先をの上半身に巻きつけ、自由を奪う。ほとんど何も着けていないくらいに乱れた服ごと。緩めに縛ったのは、痛がらせたり苦しめたりしたくないからだ。
恥ずかしいのか瞳を伏せて、それでも言いつけは守り唇を噛んでいる。そのしおらしさが愛しくてたまらない。
「こんなときのは可愛いよ」
「んっ・・・」
左耳のすぐそばで、吐息と同じトーンで囁いてくるから、ゾクゾクしてしまう。
「ルネ・・・」
同じようにごく抑えて、名を呼んだ。もう何だか泣きそうだった。
顎を持ち上げられ、いやでも目が合う。顔はピンク色に染まり、目は潤んで、全身がはしたなく求めているのに。
果たしてルネは、全て分かっているといった風情で、身体を寄せてくるのだった。
指を滑らせ体の曲線をなぞり、最も感じる部分に辿り着くと、まずは軽く触れる。
「く・・・ふっ・・・」
どんなに我慢しても、声が漏れてしまう。拘束されているという状況それ自体に、倒錯した歓びを覚えている・・・そんな自分の異常さに、目眩すら感じた。
しんとした裁判所に、吐息と押し殺した喘ぎ声と、そして濡れた音だけが響き続ける。
やがてムチで縛られたまま抱きかかえられ、そのままルネを迎え入れた。
「ああ・・・」
体の中で直接彼を感じれば、理性もどこかに行ってしまって。ほとばしりかけた声は、それでも、止められた。何かを・・・ムチの余ったところだと気付いた・・・噛まされて。
「んん・・・ん」
手足を動かすこともままならない。声すらも強制的にせき止められて。
そんな状況の中、いつもに増した快感が襲いかかってくる。
「んー・・・っ!」
「神聖な場所なんでしょここ? そんなとこで、いつも人を裁いている裁判官がこんなことして・・・これこそ大罪じゃないの」
服装を整えてしまえば、もすっかり元通りだ。その変わりように、ルネは苦笑を禁じえない。
「心外だな、こんなにお前を楽しませてやったのに」
ムチの柄をの頬に軽く当てがい、そのまま抱き寄せる。
「これが罪になるなら、罰を受けても構わない」
優しく、キスをした。
「・・・そんなこと、本当は思ってないんでしょ」
自分が裁かれることなんて、きっと考えもしないんだ。
ルネは軽く笑った。こんなはねっかえりがおとなしくなるのは、自分の腕の中でだけ。その発見が、単純に嬉しかった。
『ルネ様、次の死者が参りました』
扉の向こうから、マルキーノの遠慮がちな声がかかる。
「のおかげで、仕事が滞りそうだ。今日は残業だな」
その口調はどこか楽しそうで、つられるようにも笑った。
「じゃあ、また今夜、来てあげるよ。差し入れ持って」
「私の気に入るような差し入れだろうな?」
「・・・きっとね」
含み笑いでつま先立ちして、最後のおねだりをしてみる。
『ルネ様〜』
「聞こえています。静かになさい」
マルキーノに厳しい声を飛ばしてから、甘い甘いキスをした。
・あとがき・
100題の中でこのお題を見た瞬間、「これはルネだね。ルネしかないね」と思ってた。だってそのまんまじゃないですか。
ストーリィはしばらく前から、ほんのぼんやりとした輪郭だけがありました。
最初にマルキーノとちょっと話をして、法廷の中で「喋るな」と言われながらラブラブ。これしか決まってなかった。マルキーノってちょっといいキャラだよね。あんなふうにルネに殺されてしまったのは残念でならない。だからここではもちろん、生き返ってもらってます。
ルネはムチを使うから・・・サド!? なんて単純な図式が浮かんだ瞬間、かづなの頭の中にはかな〜りエッチな話が展開されていたのですが、「乙女の(?)ドリームでそれはどうよ!?」と我に返りました。
結局、法廷であんなことしちゃうってのは決めたけど、その細かいところは決まらないまま書き始めてしまった。
細部まで組み立ててから書くこともあるけど、思い浮かばないときは、もうキャラに委ねてしまうんです。今回はルネもちゃんもうまく動いて、ちゃんとまとめてくれたから大成功。でも思ったよりエッチになった(笑)。
天真爛漫なちゃんが可愛いです。サドなルネに迫られて、なすがままになってしまうというそのギャップがまたイイっ!キャラに任せようと思って失敗することもあるんですよ。失敗、というのは、書き上げることが出来ないということだから、皆さんの目には触れないんですけど。
せっかくだからムチを使いたかったのよね。ミーノスが途中で部屋に入ってきちゃうってネタもあったけど、それは結局使わなかったな。
そしてそして、かづなは緊縛プレイが好きなのです。ふふふふ。ルネはこんな言葉遣いにしてみたけどどうかな。
H16.1.14
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